中期計画「2025 フェーズ2」を推進中
「Nikkiso 2025 フェーズ2」は技術力の向上と事業ポートフォリオの再構築を重点テーマに掲げる。低炭素・脱炭素時代の本格的な到来を見据えた先端技術の取り組みを強化する一方、市場優位性のある分野への経営資源の投入や、不採算事業、中核事業との親和性が低い事業の見極めによる選択と集中の実施などを基本方針とする。
日機装は2020年から6カ年の新中計「Nikkiso 2025」をスタートしたが、コロナ禍で事業環境が一変したのに伴い、後半3カ年を「Nikkiso 2025 フェーズ2」として組み替えた経緯がある。
「フェーズ2」初年度の2023年2月にはLNG(液化天然ガス)・産業ガス関連機器メーカーのドイツCRYOTEC Anlagenbauを買収した。欧州に液化プラント、水素ステーション、CO₂(二酸化炭素)回収ビジネスなどのハブ(中枢)拠点を獲得することを目的とした。
LEWA、Gevekeの両社を売却した狙いからすると、一見ちぐはぐにも見えるが、ポンプ事業では次世代エネルギーの水素・アンモニア事業を育成しつつ、足元の収益は重要が旺盛なLNG関連で成長を目指すスタンスだ。
水素に関しては2021年、米国カリフォルニア州で燃料電池車向け水素ステーションの開発・運営を手がける業界大手のファーストエレメントフューエルに約27億円を出資するなど、ビジネス拡大への布石を打っている。
日機装の2023年12月期業績(国際会計基準)は売上高8.8%増の1926億円、営業利益82.8%減の58億8500万円、最終利益33.5%減の90億7100万円。前の期にLEWA、Geveke関連で300億円を超える株式売却益を計上した反動で営業利益は8割超の減少となった。
今期、売上高は初の2000億円超えへ
売上高の構成は工業部門1090億円、メディカル部門838億円。工業部門はポンプ、発電プラント向け水質調整装置などのインダストリアル事業が8割、航空機部品を中心とする航空宇宙事業が2割を占める。メディカル部門は国内で約50%のシェアを持つ透析装置を看板製品とし、人工膵臓装置なども手がける。
海外売上高は65%にあたる1250億円で、アジア617億円、北米375億円、欧州151億円、その他地域106億円。世界19カ国・地域に製造販売拠点を展開する。
現行中計では最終年度の2025年12月期に売上高2100億円、営業利益140億円を掲げる。売上高については足元の2024年12月期予想が2130億円と1年前倒しで達成し、初の2000億円台に乗せる見通しだ。
その先の2028年までの長期ビジョンでは売上高2900億円、営業利益250億円を描いている。既存事業の強化と新規・成長分野への展開を同時並行で進めていくうえで、M&Aは引き続き重要な一手となりそうだ。
◎日機装の主な沿革とM&A
年 | 出来事 |
1953 | 特殊ポンプ工業として設立 |
1955 | 米国ミルトン・ロイから特殊ポンプ技術を導入し、国産化に乗り出す |
1959 | 日本機械計装に社名変更 |
1960 | 日本初の人工心臓駆動装置を開発 |
1961 | 東証2部上場(1971年東証1部、2022年東証プライムに移行) |
1968 | 日機装に社名変更 |
1969 | 血液透析装置を初めて国産化 |
<中略> |
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2009 | ドイツのポンプメーカー大手、LEWAグループを子会社化 |
2010 | ドイツのフレゼニウスメディカルケアから日本での透析関連製品販売事業を取得 |
〃 | 透析関連製品販売の韓国子会社・日機装メディカルコリアをドイツ社に譲渡 |
2011 | 粉体計測機器製造の日本ベル(後のマイクロトラック・ベル)を子会社化 |
2013 | オランダのポンプメーカー、Gevekeを子会社化 |
2014 | 米国BaxterのCRRT(急性血液浄化療法)事業を取得 |
2015 | スウェーデンのアトラス・コプコからLNG用極低温ポンプ事業を取得 |
2016 | 深紫外線LED製品開発の米国AquiSense Technologiesを子会社化 |
2017 | エネルギー産業向けポンプメーカーの米国Cryogenic Industriesを子会社化 |
2019 | マイクロトラック・ベルと米国子会社Microtracを譲渡 |
2022 | LEWA、Gevekeをスウェーデンのアトラス・コプコに譲渡 |
2023 | 液化ガス・産業ガス関連機器メーカーのドイツCRYOTEC Anlagenbauを子会社化 |
2024 | CRRT事業のドイツ・中国子会社をシンガポールTYHC Internationalに譲渡へ |
文:M&A Online