決め手は「お客さま」、そして「リーダーの決断力」
化粧品事業も最初の商品は売れなかったという。ところがその次に発売した商品はヒットした。そこで顧客の意見を分析したところ「化粧品に何が求められているか」といった一般的なアプローチではなく、「富士フイルムの化粧品に何が求められているか」を知るのが重要だと分かったという。それが判明したことで、化粧品事業は軌道に乗った。
もっとも、新規事業はすぐに利益が出るものではない。そこで化粧品事業部門は数字以外のKPI(重要業績評価指標)を定め、社内評価よりも社外評価の獲得を狙ったとも。
新規事業のリーダーに求められる資質として、写真フィルム事業からの転換を決断した古森重隆元会長兼CEO(最高経営責任者)の決断力を挙げた。「古森さんは動物的直感をお持ちで、情報量が少なくても決めてくれた。リーダーがいつまでも情報がないかとか、もっと調べろよなどと言っていたら、いつまでもスタートできない」(同)。日本の大企業が祖業を切り捨てての第二創業に成功しにくいのは、リーダーの決断力にも問題がありそうだ。
さらに富士フイルムのバイオ医薬品の開発・製造受託(CDMO)事業は、M&Aで手に入れた会社での技術融合(シナジー)が成果を出しており、新規事業のポートフォーリオに多様性が必要なことが分かる。
第2部のスタートアップ企業によるピッチでは、タンソーマンGXの福元惇二社長が「CO2排出量可視化システムの展開、補助金導入コンサルティング」、スカイファームの木村拓也社長兼CEOが「施設特化型モバイルオーダーシステム『NEW PORT』の開発・運用」、テックピットの山田晃平社長兼CEOが「IT職種のスキル可視化、リスキリングを支援するサービス『 Techpit for Enterprise』」について説明した。
次回の第20回 Conference of S venture Lab.は3月6日、大阪市でライトアップベンチャーズの中村忠嗣社長、大手総合スポーツ用品メーカーのミズノから出向起業したDIFF. の清水雄一社長による「関西のVCと語る、事業会社発スピンアウト・スタートアップのこれから」をテーマとするトークセッションと、スタートアップによるピッチを開く。
文:M&A Online