姪に相続させたい場合どうする?子どもがいない被相続人が姪に相続させる方法
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子どもがいない人にとって、老後の悩みは財産を誰に相続させるかです。

配偶者も亡くなり、兄弟とも疎遠になっている場合、なついている姪に相続させたいというケースもあるでしょう。

しかし、子どもに比べて姪に相続させるハードルは高いです。本記事では、姪に相続させる方法と問題点をケース別に解説します。

この記事でわかること
  • 姪に相続をさせる具体的な方法|遺言書を残す、養子縁組をする、生前贈与するなど
  • 姪に相続する場合の注意点|姪が相続をすると相続税が2割増になる
  • 相談できる専門家は弁護士・司法書士・税理士|無料相談ができる

目次

  1. 姪は相続人になれるのか?ハードルはかなり高い
  2. 姪に財産をあげたいと思う4つのケース
  3. 姪に相続させる具体的な方法3つ
  4. 姪に相続させる場合の注意点4つ
  5. 代襲相続した場合の姪の相続比率は?
  6. 姪に遺留分(法的に保障された最低限の取り分)はあるのか?
  7. 自分に子どもがいない場合は姪に相続はできる?3つのケースで考える
  8. 姪への相続について無料相談する方法4つ
  9. 生前に相続させたい相手と配分を決めておこう

姪は相続人になれるのか?ハードルはかなり高い

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兄弟姉妹の娘である姪を可愛がっている人は多いでしょう。

特に自分に子どもがいない環境であれば、持っている財産を姪にあげたいと考えるのは自然です。

その場合気になるのが、姪は法定相続人になれるかどうかです。

姪は通常では法定相続人になることはできません。相続人には法律で相続の優先順位が定められています。

【法定相続人の優先順位】

優先順位 血族の種類
第1順位 子ども・孫(直系卑属)
第2順位 父母・祖父母(直系尊属)
第3順位 兄弟姉妹・甥姪
※配偶者は常に相続人になる。

相続第1順位は子どもや孫、第2順位が父母、第3順位が兄弟です。したがって、そのままでは姪に相続の順番が回ってくることはまずありません。

しかし、子どもが亡くなっている場合は孫、父母が亡くなっている場合は祖父母、兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥と姪が代襲相続することができます。

したがって、姪が相続できるのは以下の条件が揃ったときとなります。

・被相続人に子どもや孫がいない
・被相続人の父母や祖父母が他界している
・被相続人の兄弟姉妹(姪の親)が他界している

被相続人に相続第1順位の子どもや孫がおらず、なおかつ第2順位、第3順位の相続人がすべて他界(または相続放棄)している場合のみ、姪が代襲相続できます。

このように姪に財産を相続させるにはハードルはかなり高いといえるでしょう。

姪に財産をあげたいと思う4つのケース

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各家庭によって相続の事情はさまざまですが、姪に財産をあげたいと思うケースとして、以下のような事情が考えられます。

1.兄弟姉妹と疎遠になっている

一定の年齢までは一緒に暮らしていた兄弟姉妹も、それぞれが独立して家庭を持つと、交流が少なくなりどうしても疎遠になりがちです。

自分(自分達夫婦)に子どもがいない場合、疎遠の兄弟姉妹よりはその娘である姪に財産をあげたいという人もいるでしょう。

子どもがいなければ、小さい頃から姪を可愛がっていたことが考えられます。

2.兄弟姉妹とは仲が良く姪を我が子のように可愛がっている

1とは逆のパターンです。

兄弟姉妹と仲が良く、自分(自分達夫婦)に子どもがおらず、兄弟姉妹の子である姪を我が子のように可愛がっているケースでも姪に財産をあげたいと思うことでしょう。

3.姪とは仲が良いが甥とは疎遠になっている

子どもであれば離れて暮らしていたとしても、連絡を取り合い常に気に掛けるのが親の心情です。

しかし、姪や甥となると、交流がある場合と疎遠になっている場合では愛情に差があるのはやむを得ません。

子どもがいない場合、甥とはほとんど交流がないが、姪はなついていて頻繁に遊びに来るといった環境であれば、姪に多くの財産をあげたいと思うのは自然な心情でしょう。

4.姪に老後の面倒をみてもらう

独身のため自分に身寄りがない場合、姪が老後の面倒を見てくれる生活環境であれば、御礼も兼ねて財産を姪に継がせたいという思いが湧いてくるかもしれません。

姪の親である兄弟姉妹が存命なら相続は兄弟姉妹が優先されるので、姪にいくらか財産をあげたいなら、次に紹介する方法を検討する必要があります。

姪に相続させる具体的な方法3つ

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姪に財産をあげたいと思っても、姪に代襲相続の順番が回ってくるのは稀です。

相続順位に関係なく姪に相続させるには以下のような方法があります。

姪に相続させる具体的な方法3つ

1.遺言書を遺す

最も確実なのは遺言書を遺すことです。相続においては法定相続分より遺言書の内容が優先されます。

遺言書に姪にあげたい財産の内容と配分を記載しておけば、相続発生時に実行されます。

遺言書の作成方法は以下の3種類があります。

1.自筆証書遺言|自分が手書きで作成する遺言
2.公正証書遺言|公証人が作成する遺言
3.秘密証書遺言|内容を秘密にしたまま公証役場で証明してもらう遺言

・1.自筆証書遺言|自分が手書きで作成する遺言

遺言者が全て手書きで作成する遺言書です。

遺言の承認は不要ですが、裁判所の検認が必要(法務局に預ける場合は不要)です。保管は本人がおこないます。

パソコンや代筆での作成不可ですが、添付する財産目録はパソコンや代筆でも作成できます。

・2.公正証書遺言|公証人が作成する遺言

遺言者が述べた内容に基づいて公証人が作成する遺言書です。

作成した遺言書に双方が署名・捺印します。遺言の承認が2名以上必要ですが、裁判所の検認は不要です。原本の保管は公証役場がおこないます。

・3.秘密証書遺言|内容を秘密にしたまま公証役場で証明してもらう遺言

遺言者が作成して封印した遺言書に公証人が署名・捺印します。

遺言の承認が2名以上必要で、裁判所の検認も必要な手間のかかる方法です。保管は本人がおこないます。

また、法定相続人たちとのトラブルを防ぐために付言を書くことも大事です。

付言とは、「なぜ姪に相続させたいのか」という被相続人の思いを記載する項目のことです。

たとえば、被相続人が経営していた店を姪に手伝ってもらっていたとします。

「店を手伝ってもらっていたので、感謝の意味を込めて一部を相続させたい」と記載すれば、法定相続人たちの理解を得られやすくなります。

2.養子縁組する

姪と養子縁組することで実子と同じように相続させることができます。

養子縁組には以下の2つの方法があります。

1.普通養子縁組|実の親はいるが養子縁組をすること
2.特別養子縁組|実の親子と同様の親子関係を成立させる制度

・1.普通養子縁組|実親はいるが養子縁組をすること

普通養子縁組は、自分たちで養子縁組届を書いて役所に提出すれば、家庭裁判所での手続きがなくても受理される簡易な制度です。

相続対策で姪を養子にする場合に適しています。姪を養子にしたとしても、実の親との親子関係が消滅することはありません。

・2.特別養子縁組|実の親子と同様の親子関係を成立させる制度

特別養子縁組は、事情があって実の親と暮らせない子どものために、養親との間に実の子と同じ親子関係を結ばせる制度です。

家庭裁判所で特別養子縁組する条件に該当するか審理され、適合する場合のみ許可されます。

相続対策で姪を養子にする場合には向いていません。特別養子縁組が成立すると、実の親との親子関係は消滅します。

3.姪に生前贈与する

姪に生前贈与であらかじめ財産を渡しておくのも1つの方法です。

姪は通常では法定相続人になれないので、財産の一部をあげたい場合は、贈与を利用したほうがスムーズに渡せる可能性が高いです。

ただし、姪にまとまった金額を一度に贈与すると税負担が生じる場合があります。

たとえば1000万円を贈与する場合、相続税なら3000万円の基礎控除があるため非課税となりますが、贈与税の基礎控除は年間110万円のため、差し引いた890万円に以下のように贈与税が課税されます。

【一般贈与財産用の速算表】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

1,000万円 - 110万円 × 40%-125万円 = 231万円

けっこう多くの課税額になるので、まとめて贈ると損することになります。

そこで、年間110万円の基礎控除を利用して、100万円ずつ10年間に分けて贈与すれば1000万円を非課税で贈与することができます。

その場合、定期贈与とみなされないように、1回ごとに贈与契約書を作成する必要があります。贈る月も毎年同じではなく、年ごとに変えたほうが無難です。

姪に生前贈与することで相続財産が減るため、相続税の節税対策になるメリットもあります。

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姪に相続させる場合の注意点4つ

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姪に相続させる場合には、以下の点に注意しておこなうことが必要です。

姪は本来の法定相続人ではなく代襲相続人であるため、相続に不利になる点があります。

1.姪が相続すると相続税が2割増しになる

姪が相続する場合は相続税が2割増しになるという規定があります。

被相続人の配偶者、父母、子ども、養子縁組した人以外の人が相続する場合は、「各人の税額控除前の相続税額×0.2」で計算した金額が相続税額に加算されます。

【相続税が2割増しになる人】
兄弟姉妹、甥・姪、祖父母、代襲相続人でない孫、孫養子、子どもの配偶者・内縁の妻など相続人ではない第三者、特別縁故者

2.ほかに相続人がいる場合は遺留分を差し引かれる

姪のほかに相続人がいる場合は、法定相続人としての遺留分があるので、全財産を姪に渡すことはできません。

法定相続人の遺留分は法定相続分の2分の1(直系尊属者のみが相続人の場合は3分の1)です。

したがって、姪が相続できるのは全体の2分の1(直系尊属者のみが相続人の場合は3分の2)となります。

3.姪の子どもは相続できない

法定相続人としての権利は第3順位の場合、代襲相続するケースの姪までしかありません。

姪の子どもは相続することはできないので留意しておく必要があります。

第1順位の子どもの場合は、子どもが他界していれば孫が代襲相続し、さらに孫も他界している場合は、ひ孫が「再代襲相続」できます。

これに対し、第3順位の兄弟姉妹の系統には再代襲相続が認められていません。

4.負の遺産も相続する

相続では財産だけでなく、各種ローンの残債など借金もあわせて相続しなければなりません。

これを「負の遺産」といいます。

たとえば、自家用車を相続した場合、マイカーローンの残債があれば受け継いだ姪が支払うことになります。

したがって、姪に負担を生じさせないためには、ローンは可能な限り完済しておくことが大事です。

もちろん債務の金額が多いような場合は相続放棄することもできます。

ただし、相続放棄すると正の遺産も受け取れなくなるので、両者を比較して慎重に判断することが大事です。

代襲相続した場合の姪の相続比率は?

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姪が代襲相続した場合、相続比率はどれくらいなのでしょうか。

何割相続できるかは、配偶者の有無や兄弟の人数によって変わります。

【ケース1】
相続財産:4,000万円
相続人:姪
すでに配偶者、第1順位、第2順位、第3順位すべての相続人が他界。
姪のみが代襲相続する場合は4,000万円をすべて相続できる。

【ケース2】
相続財産:4,000万円
相続人:配偶者、被相続人の弟、他界した妹の娘(姪)
配偶者と第3順位(兄弟)の相続人がいる場合の相続比率は以下のとおり。
・配偶者が3/4
・第3順位の相続人が1/4
この場合、配偶者は3,000万円、被相続人の弟は500万円、姪は500万円を相続。

姪しか身寄りがない場合は姪にすべて相続させることができます。

しかし、配偶者や兄弟が存命の場合は、姪の代襲相続分は姪の母親である妹の分しか相続させることができません。

姪に遺留分(法的に保障された最低限の取り分)はあるのか?

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相続には法律で保証されている遺留分があります。

遺留分とは、法定相続人に保証された最低限の取り分のことです。遺言書の内容いかんに関わらず、遺留分は保証されます。

しかし、被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。したがって、姪にも遺留分の権利はないことになります。

もし、遺言書に「財産の全てを妻に相続させる」と書かれていた場合は、姪は相続を受けることができません。

自分に子どもがいない場合は姪に相続はできる?3つのケースで考える

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自分に子どもがいない、またはいても離婚によって疎遠になっているケースもあります。

自分に子どもがいない場合、姪への相続はどうなるのかケース別に考えてみましょう。

1.自分に配偶者がいない場合の相続

配偶者がいない場合、原則として相続第1順位の子どもや孫もいないので、相続の優先順位は第2順位の父母が一番先になります。

父母が他界している場合は祖父母が次に優先されますが、年齢的に考えて他界しているケースが多いでしょう。

次に第3順位の兄弟姉妹に順番が回ってきますので、兄弟姉妹が他界している場合に姪が代襲相続できることができます。

2.結婚しているが子どもがいない場合の相続

結婚はしているが子どもがいない場合、配偶者が存命なら全ての財産を相続します。

兄弟姉妹に遺留分はないので、姪が相続することはありません。

一方で、配偶者がすでに他界している場合は、上記の配偶者がいない場合と同じ経路を辿って、姪が代襲相続する可能性はあります。

3.離婚して元妻が子どもを引き取った場合の相続

離婚して元妻が子どもを引き取ったケースでは、どうしても子どもとの関係が疎遠になります。

しかし、離婚して妻とは他人になったとしても、子どもとの血縁関係は一生続きます。

この場合、元妻に相続の権利はありませんので、子どもが全財産を相続します。

このケースでは姪が相続できる可能性はありません。

妻が引き取った子どもとの交流がほとんどなく、姪はよく遊びに来てなついているような場合は、遺言書で姪にいくらかの財産を相続させたい旨の希望を記載しておく必要があります。

姪への相続について無料相談する方法4つ

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姪への相続についてさまざまなケースについて紹介しましたが、ここに書かれている以外にも各家庭によって異なる問題が生じる場合があります。

専門家に直接不明な点を聞きたい場合は、無料で相談できる場所があるので紹介します。

おもに以下の4つが挙げられます。

1.地方自治体|弁護士や司法書士などの専門家が対応にあたる

相続全般に関しての相談は各都道府県や市区町村の役所で相談を受け付けています。

弁護士や司法書士などの専門家が対応にあたる自治体もあるので、安心して相談できます。

対面での相談は原則として予約制です。開催の曜日や時間等は自治体によって異なるので、各都道府県や市区町村の公式サイトで確認する必要があります。

2.税務署|電話や対面での相談が可能

姪への相続で発生する相続税や生前贈与で発生する贈与税など、税金に関しての相談は税務署で受け付けています。

相談方法には2つあり、1つは電話による相談で、国税庁の国税相談専用ダイヤルに電話して相談することができます。

対面で相談したい場合は税務署への予約が必要です。所轄の税務署に電話して予約を取ったうえで相談に出かけます。

3.法テラス|法的トラブル解決のための総合案内所

相続に関するトラブルについて相談したい場合は、法テラス(日本司法支援センター)が便利です。

国によって設立された機関で、相続に関する悩みを電話やメールで相談することができます。

専門家の対応が必要な場合は、弁護士会、司法書士会、地方自治体の窓口などを紹介してくれます。

対面による無料法律相談は、一定の収入以下の人を対象におこなわれています。

相談は1回30分間で同一の問題につき3回まで相談できます。相談には予約が必要です。

4.その他|無料相談をおこなっている弁護士・司法書士・税理士

初回のみ無料で相談を受け付けている専門家もいます。時間は30分から1時間程度です。

インターネット検索で「初回無料相談、弁護士」「初回無料相談、司法書士」「初回無料相談、税理士」と入力し、近くの専門家を探してみるといいでしょう。

限られた時間で無料相談を有効に活用するには、事前に以下をおこなっておくことをおすすめします。

・話したいことを頭の中でまとめておく(メモを残しておいてもいい)
・質問事項をまとめておく
・関係性が複雑な場合は図などにしておく

生前に相続させたい相手と配分を決めておこう

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相続で姪まで順番が回ってくることは稀です。しかし、子どもがいない被相続人の中には、姪を子どものように可愛がっている人もいるでしょう。

姪の他に相続人がいる場合は、生前に相続させたい相手と配分を決めておくことが望ましいといえます。

今回は姪に相続させるケースを解説しましたが、相手が甥の場合も条件は同じです。

子どもがいない人にとっては、姪への相続が可能なことがわかっただけでも安心できたのではないでしょうか。

(提供:ACNコラム