不動産投資を老後の備えや資産形成に検討する人も多くなっています。
一般的な不動産投資は初期費用が高額で、ハードルが高いイメージを持たれがちです。
しかし、近年は少額から始められる不動産投資商品も増えていることをご存じでしょうか。
この記事では、少額不動産投資の種類、メリット・デメリット、具体的な始め方、失敗しないポイントなどをわかりやすく解説します。
- 少額で可能な4つの不動産投資
- 4つの少額不動産投資のメリットと注意点
- 少額不動産投資全般のメリットとデメリットと始め方に関する注意点
目次
少額不動産投資とは?1万円からでも可能
少額不動産投資とは、1万円程度の少額から始められる不動産投資の総称です。
大きな金額を必要とする不動産投資のハードルを下げ、より多くの人に不動産投資の機会を与える手段として注目を集めています。
通常の「不動産投資」では、数百万〜数千万円、ときにはそれ以上の資金が必要なことが一般的です。
しかし少額不動産投資では、不動産投資信託(REIT)や不動産小口化商品、不動産クラウドファンディングなどの小口化された商品に投資することで、少額から始めることが可能です。
少額不動産投資には、区分マンション投資や格安物件への投資などもあり、予算や状況に応じて選ぶことができます。
少額不動産投資は、少額から始められる手軽さや分散投資のしやすさから、初心者投資家、不動産投資の入門者、リスクを抑えたい投資家にとって魅力的な投資手段です。
しかし、「投資」であるからには当然リスクは存在します。
元本は貯蓄のように保証されるわけではありません。
少額だから大丈夫だろう……となんとなく始めるのではなく、投資する前にそれぞれの商品の特徴やリスクをしっかりと理解し、自分に合った投資方法を選ぶことが重要です。
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少額不動産投資が向いている人・おすすめしたい人
少額不動産投資は、特に以下のような人におすすめです。
1.長期的な計画を視野に入れて資産形成を始めたい人
少額不動産投資は、長期的な視点で資産形成を目指す人におすすめです。
少額不動産投資は、短期間で結果が出る投資方法ではありません。
長期的な視点をもち、コツコツと投資を続けることが大切です。
そのため、ある程度の時間と労力をかけることができる人に向いています。
2.リスクをできるだけ低くし投資をしたい人
少額不動産投資は、株やFXなどの他の投資方法と比較するとリスクは低い傾向にあります。
そのためリスクを抑えて資産形成を始めることができる投資方法です。
方法にもよりますが、主な少額不動産投資では実際に物件を所有するわけではないため、物件オーナーならば避けられない空室リスクや修繕リスクなどの心配もありません。
3.不動産投資に興味があるが少ない資金しか容易できない人
不動産投資に興味がある人にとっても、少額不動産投資は良い入門方法となります。
少ない資金額から始められることは大きなメリットです。
リスクを抑えながら不動産投資の経験を積むことができます。
自己資金がなく不動産投資をあきらめていた人にも向いているでしょう。
4.不動産投資の基礎知識を勉強したい人
少額不動産投資は、投資初心者の勉強にも最適です。
さまざまな商品や物件について調べ、比較検討することで、投資に関する知識を深めることができます。
少額からのスタートなので、大きな損益を出すリスクが本格的な不動産投資よりも低く、不安も少ないでしょう。
実際に投資をしてみて、利益が出た場合や損失が出た場合にどうすべきか、どのようになるのかなど、実際に経験を積んで理解を深められます。
また、不動産以外の投資方法についても知識が得られます。
たとえばREITは、不動産を扱いますが実際は金融商品のためかかる税金なども異なります。
知見を深めるうちに不動産以外の投資方法にも挑戦したいという意欲が出てくるかもしれません。
5.不動産を管理・運用する時間がない、自信がない人
通常の不動産投資では物件オーナーとして所有した不動産の管理をおこなう必要があります。
不動産は賃借人が実際に住むものなので、故障の修繕や家賃の滞納など、さまざまなトラブルが起こることが考えられます。
物件の管理・運用をおこなう時間が無い人や、時間はあっても実際にできるかどうかわからないという人には、少額不動産投資の中でも物件を直接持たないタイプは向いているでしょう。
少額で可能な不動産投資4つ|それぞれのメリットと注意点を紹介
代表的な5種類の少額不動産投資について、それぞれのメリットと注意点を紹介します。
1.REIT(リート)|投資家から集めた資金で不動産を購入
REIT(Real Estate Investment Trustの略称、リート)とは、日本語では「不動産投資信託」と呼ばれます。
日本版のREITは、日本を示すJ(=Japan)を頭に付けて、「J-REIT(ジェイ・リート)」と呼ばれています。
投資家から集めた資金をもとに、主にオフィスビルや商業施設などの不動産を購入・運用し、そこから得られる家賃収入や売却益を投資家へ分配する金融商品です。
取引は証券会社を通じておこなわれます。
売買の方法はおおむね株の取引と同じで類似点は多いです。
分散投資が可能で、投資の専門家が運用をおこないます。
株券と同じように投資証券が発行されますが、株式と異なり不動産投資によって得られた収益を株式よりも多く投資家に分配できます。
そのため株式よりも配当利回りは比較的高めです。
不動産を自分で実際に所有するわけではないため、不動産投資特有のリスク(空室リスクなど)がなく、修繕費などのランニングコストもかかりません。
また現物不動産よりも流動性が高い(売却が比較的容易な)点もメリットです。
一方、不動産という名称がついていますが、実際は金融商品の扱いになります。
REITのメリット | 注意点 |
---|---|
1. 少額から投資できる(数万円程度~) 2. 分散投資が可能 3. 配当利回りは比較的高め 4. 現物不動産固有のリスクがない 5. 現物不動産ではないため管理運用の手間がかからない 6. 値上がり益も期待できる |
1. 投資信託のため、不動産そのものを所有するわけではない 2. 運営会社によってリスクやリターンが異なる 3. 値下がりリスクがある 4. 相続税対策には不向き 5. 株式と似ているが配当控除は適用されない |
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2.不動産小口化商品|好立地にあるオフィスビルを小口化して購入
不動産小口化商品は、通常は億単位の価格になる好立地にあるオフィスビルなどの不動産を、一口数万円〜100万円程度に小口化して事業者が販売します。
それを投資家は購入し、口数に応じて家賃収入や売却益を分配される仕組みが不動産投資商品です。
不動産小口化商品には任意組合型、匿名組合型、賃貸型の3つがあり、このうち代表的なものは任意組合型と匿名組合型になります。
任意組合型は長期運用タイプ、匿名組合型は短期運用タイプという特徴があります。
メリットとして、比較的少額から投資できること、特に匿名組合型は数万円程度から投資可能なものがあります。
また匿名組合型は「匿名」の名称どおり、出資者(投資家)は物件の管理などには関わりません。
そのため手間もかからず手軽に始められます。
一方、任意組合型は商品によってはオーナーとしてある程度関わるものもあります。
デメリットとしては、利回りは通常の不動産投資と比較すると低い傾向があります。
また投資対象が株やREITのように多いわけではなく限定的で、投資できる物件は限られています。
なお任意組合型、賃貸型は一般的な投資物件同様に所有しているとみなされるため相続税対策に活用できますが、匿名組合型は相続税対策のメリットはありません。
不動産小口化商品のメリット | 注意点 |
---|---|
1. 少額から投資できる(商品により異なる) 2. 相続税対策に活用できるものもある 3. 匿名組合型は流動性が比較的高い |
1. 利回りは比較的低い 2. 不動産そのものを所有するわけではない 3. 相続税対策にできないものもある 4. 任意組合型は長期保有のため流動性は低い 5. 商品そのものがそれほど多くない |
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3.不動産クラウドファンディング|インターネットで投資家から資金を集め不動産を購入
不動産クラウドファンディングとは、インターネットを通じて投資家から資金を集め、不動産を購入・運用する仕組みです。
1万円程度から可能で、さまざまな物件に投資することができます。
不動産クラウドファンディングには、不動産小口化商品と同じく2つの種類(匿名組合型と任意組合型)があります。
このうち匿名組合型は、出資者は不動産を所有していることにはならず分配金のみを受け取ることになります。
そのため実際の不動産経営に携わる必要はなく、手間もかかりません。運用期間が短いものが多く、流動性も比較的高いです。
一方、投資のため当然元本割れの可能性などリスクもあります。
また人気のものは競争倍率が高くなる傾向があり、投資自体がなかなかできないこともデメリットです。
不動産クラウドファンディングのメリット | 注意点 |
---|---|
1. 少額から投資できる 2. 自分が興味のある物件に投資できる 3. 高利回りが期待できる 4. 運用期間が短いものが多く流動性が比較的高い |
1. 元本割れすることもある 2. 競争率が高い |
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4.区分マンション投資|マンションの一室を購入して賃貸に出す
区分マンション投資とは、物件を一棟まるごと購入するのではなく、マンションの一室を購入して賃貸に出すことで、家賃収入を得る方法です。
一棟買いと比較すると費用は少なく始められます。
ただし、REITや不動産小口化商品、クラウドファンディングと比較すると、初期費用はローンを利用しても数百万円からと、高額になることには注意が必要です。
区分マンション投資はマンションの一部という「実際の不動産」を所有します。
そのため、家賃収入を得ること、管理・運用をおこなうこと、ローンを組んでレバレッジを効かせられることなど一棟買いと同様の経験ができます。
賃貸として活用しなくなれば自分で住むことも可能なほか、相続税対策にも有効です。
ゆくゆくはアパート経営などを目指す人の不動産投資経験の第一歩として始めることもできるでしょう。
しかし現物不動産であるからには、空室リスク、修繕積立金の発生、家賃滞納リスク、災害リスクなど不動産特有のリスクは当然発生します。
また少額とはいえローンを組むために、最低数百万円は自己資金を用意しなければならないため、他の方法と比較するとハードルが高いことがデメリットといえます。
区分マンション投資のメリット | 注意点 |
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・ 自分の住まいとしても利用できる ・ 家賃収入を得られる ・ 現物不動産投資を学ぶ機会にできる ・ 自己資金を元手にローンを組むことでレバレッジを効かせられる |
・ 他の少額不動産投資と比較すると、数百万円と高額な初期費用が必要 ・ 現物不動産ならではのリスクがある(空室リスク、家賃滞納リスクなど) |
少額不動産投資のメリット4つ
ここでは、少額不動産投資の総合的なメリットについて解説します。
1.手軽に少額から始められる
少額不動産投資の最大のメリットは、手軽に始められることです。
従来の不動産投資では数千万円の資金が必要でした。
しかし少額不動産投資は、商品や投資の種類にもよりますが1万円程度からでも始められるものもあります。
そのため、少ない資金で投資を始めたい方にとって魅力的な投資方法といえるでしょう。
2.分散投資が可能
少額不動産投資は、分散投資が可能なのも大きなメリットです。
少額でさまざまな物件や銘柄に投資することで、リスクを分散することができます。
3.ローンを組む必要がないものが多い
少額不動産投資の多くは、ローンを組む必要がなく自己資金で始められるというメリットもあります。
自己資金だけで投資できると金利負担が少なく、比較的安全に投資することができます。
4.節税効果が期待できるものもある
少額不動産投資には節税効果が期待できるものもあります。
たとえば不動産小口化商品のうち「任意組合型(現物型)」「賃貸型」は、現物不動産と同様に相続税対策にも活用できます。
少額不動産投資のデメリット4つ
少額不動産投資のデメリットとしては、以下が挙げられます。
1.投資商品なのでリスクが存在する
少額不動産投資にもリスクはあります。
たとえば、REITは紹介したように金融商品として取り扱われており利回りも比較的高いです。
しかし、投資対象物件にはテナントが入らず家賃収入が得られなくなる空室リスク、地震などで建物が被害を受ける災害リスク、金利上昇リスクなどを受ける可能性があります。
投資対象物件の状況が悪くなれば、当然配当金や売却価格も下がるため、ケースによっては元本割れすることもあり得ます。
2.すぐに換金できない(流動性が低い)ものもある
少額不動産投資の中には、すぐに換金できないものもあります。
たとえば、不動産クラウドファンディングの場合、物件の売却まで時間がかかる場合があるため、すぐに現金化したい方には向いていません。
3.投資対象が限定的
少額不動産投資は、投資対象が限定的なものがあります。
不動産小口化商品の場合、限られた数の物件しか投資できません。
REITの場合も、投資対象となる物件は限定されています。
4.リターンがほかの投資方法と比較して小さい傾向がある
少額不動産投資は、投資金額自体が少ないため、得られる利益も小さくなる=リターンが小さくなりがちです。
資産形成の一つの手段、投資の最初の一歩として有効ですが、ゆくゆくは現物不動産投資やほかの投資方法への挑戦なども視野にいれて勉強することをおすすめします。
少額不動産投資を始める際の注意点3つ
少額不動産投資は、手軽に始められる反面、リスクも存在します。
投資を始める前に注意すべきことを解説します。
1.十分な情報収集をおこなう
少額不動産投資には、さまざまな商品があります。
それぞれの特徴やリスクをしっかりと理解したうえで、自分に合った商品を選ぶことが重要です。
そのためには、インターネットや書籍などで情報収集をおこない、勉強して知見を深めることが大切です。
また、少額不動産投資に詳しい企業のセミナーや投資相談会に参加するのも良いでしょう。
2.リスクを理解したうえで投資する
少額不動産投資はあくまでも「投資」のため、さまざまなリスクがあります。
リスクを理解したうえで、投資するかどうかを判断しなければなりません。
リスクを回避するために、分散投資をしたり、流動性の高い商品を選んだりするなどの対策も検討しましょう。
3.長期的な視点で考える
少額不動産投資は、少額でスタートできる点がメリットですが、額が少ないこと、不動産投資であるという特徴から、短期間で大きな利益を上げることは難しい投資です。
長期的な視点で、コツコツと資産形成していくことを考えて投資することが大切です。
あせらず、計画的に投資を進めていきましょう。
ほかにも基本的な注意点として、「投資資金は、生活資金とは別に用意する」「投資する前に専門家に相談する」などがあります。
少額不動産投資は、計画的に取り組むことで資産形成の一助となる投資方法です。
自分に合った方法で投資を進めていきましょう。
まとめ
少額不動産投資には、不動産小口化商品、REIT、不動産クラウドファンディング、区分マンション投資など、さまざまな方法があります。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、自分の予算や資産形成の目的をよく確認し、それに合った方法を選ぶことが大切です。
少額不動産投資は少ない資金で始められることが魅力です。
しかし、「投資」にはリスクがともないます。
それぞれの商品の特徴、メリットとリスクをしっかりと理解してから始めることが重要です。
また、投資に関する知識がない場合は、専門家に相談することをおすすめします。
(提供:ACNコラム)