今年のTOB(株式公開買い付け)が8月で早くも節目の50件(届け出ベース)を突破した。2009年(年間79件)以来14年ぶりの高水準だった前年(同74件)よりも2カ月近くペースが速い。活況を呈するTOB戦線にあって、公開買付代理人の座をめぐる争いはどうなっているだろうか。

前年、50件到達は10月初め

TOBの実施に際し、事務手続きを仕切るのが公開買付代理人。TOBへの応募を受け付ける窓口証券会社のことで、公開買付者(買収者)に代わり、買収対象会社の株券の保管・返還や買付代金の支払いなどを担う。TOBに応募する株主は代理人の証券会社に口座を開設し、株式を移管する手続きが必要になる。

TOB件数が50件を超えたのは8月9日。三菱電機、オカモト、オートバックスセブンなどによる5件の公開買付届出書(TOB開始)の提出があり、一気に51件まで伸びた。前年は50件到達が10月5日だったので、快調に件数を伸ばしていることが分かる。

お盆期間中も13日にレスターが組み込みソフトなどIT製品開発のPCIホールディングスに対するTOBを開始。さらに15日にはJTOWER、日本出版貿易に対するTOBが始まった。これにより、ここまでのTOB件数は54件を数える。

8月8日には、米投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)が富士ソフトの非公開化を目的に5883億円を投じる今年最大級のTOBを発表があったが、こちらは9月中旬の買付開始を予定しているため、集計には含めていない。

SMBC日興、みずほがトップに並ぶ

では、現時点で公開買付代理人の座をめぐる証券会社の戦いぶりはどうか。

目下のトップはSMBC日興証券とみずほ証券で、各12件。野村証券が11件で迫り、上位3社がほぼ横一線にある。

SMBC日興は前年まで3年連続で年間首位に立つが、今年もコンスタントに件数を積み重ね、代理人レースを引っ張っている。みずほ証券は前年の年間9件をすでに上回り、野村証券は同11件に並ぶ(SMBC日興は前年年間21件)。

大和証券もここまで8件で前年の年間7件を早くも超えている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は2件にとどまり、内容はいずれもMBO(経営陣による買収)案件。

一方、件数を大きく落としているのがネット証券最大手のSBI証券だ。前年は年間8件と既成の大手証券を相手に上位3社に食い込む勢いだったが、今年はわずかに1件どまり。

ネット証券ではほかに、auカブコム証券2件、マネックス証券1件、楽天証券1件となっているが、いずれもサブの「復代理人」だ。このうち、楽天証券は8月初めに始まったAPAMANのMBO案件で、初めて復代理人(みずほ証券のサブ)を務める。