2024年7~9月(第3四半期)のM&A件数(適時開示ベース)は282件と前年を36件上回り、2022年4~6月期から10四半期連続で前年比プラスとなった。

1月からの累計は前年比142件増の889件。10~12月が前年と同じペースなら、少なくとも年間1210件となる計算で、2年連続で1000件の大台乗せにとどまらず、2007年(1169件)以来17年ぶりに過去最多を更新する公算が大きい。

9月115件、今年2番目の水準

上場企業に義務付けられる適時開示情報をもとに経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。

第3四半期を月別にみると、7月74件(前年74件)、8月93件(同95件)、9月115件(同77件)。7月、8月は前年並みで推移したが、9月は前年を40件近く上回る今年2番目の高水準となり、1月からの累計件数を押し上げた。

2023年のM&A件数はアフターコロナの到来による経済活動の正常化を背景に年間1068件と、前年を119件上回った。年間1000件の大台に乗せたのはリーマンショック前年の2007年(1169件)以来だったが、このままいけば今年は2007年を超えて過去最多が見込まれる。

1~9月の内訳は国内M&Aが722件(前年604件)、海外M&Aが167件(同143件)で、国内20%、海外17%の伸びを示した。

このうち海外M&Aは日本企業が買い手のアウトバウンド取引115件(前年94件)、外国企業が買い手のインバウンド取引52件(同49件)。インバウンド比率は31%で、前年より3ポイント低下している。2022年春からの過度な円安局面にもかかわらず、日本企業の買収意欲は衰えていない。

M&A Online
(画像=適時開示ベース、※2024年は1~9月段階、「M&A Online」より引用)

富士ソフトめぐり、米ファンドが買収合戦

一方、7~9月の取引金額(金額公表分を集計)は2兆4888億円。1000億円超の大型案件は7件あったが、うち6件は海外M&Aだった(一覧表参照)。

金額トップは米投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)による富士ソフトに対するTOB(株式公開買い付け)。買収総額は約5580億円と今年のTOBとして最大級で、9月初めにTOBが始まった。

ところが、ライバル関係にある米投資ファンドのベインキャピタルがKKRより5%高い価格を提示する用意があることを発表し、買収合戦の様相を帯びる事態になったのだ。

KKRは対抗措置としてTOBを2段階方式に変更した。TOB成立の条件とする買付予定数の下限(53.22%)を撤廃。応募契約を結んでいる筆頭株主のシンガポール投資ファンドなどから32%余りの株式をまず確保する作戦に出た。

ベインは富士ソフトに対し、法的拘束力のある買収提案を10月に提出する予定で、これが受け入れられば、11月以降にTOBを始める構えだ。

日本たばこ産業(JT)は約3780億円を投じて、米国4位のたばこ会社であるベクター・グループを買収すると発表した。買収により、世界第2位(金額ベース)の米国たばこ市場でJTのシェアは2.3%から約8%に拡大するという。

JTは国内たばこ市場の縮小に伴い、海外たばこ事業の拡大を進めている。これまで米国、英国をはじめ、インドネシア、エチオピア、ロシア、バングラデシュなどで大型買収を重ねてきた。