本記事は、長嶋修氏の著書『グレートリセット後の世界をどう生きるか』(小学館)の中から一部を抜粋・編集しています。
マイナス思考は脳のクセ
まずは自分の「やりたいこと」を、どんどん書き出してみてください。この時に「だって」とか「でも」とか「そうは言っても」とか、できない理由が浮かんでくるかもしれませんが、華麗にスルーしてください。後述しますが、そうしたマイナス思考は、実はただの「脳の電気信号」であり、脳の「クセ」に過ぎません。そんなものにとらわれるのはそもそもナンセンスです。できない理由を考えるほど無駄な人生の過ごし方はありません。
非常に面白く興味深い実験結果があります。人が指を動かそうとする際に、脳の「動かそう」とする働きを担う部分と、筋肉に命令を出す運動神経が、どんなタイミングで活動をするのかという実験結果です。
米カリフォルニア大のリベット博士の実験によれば、筋肉を動かす運動神経の指令は、「動かそう」と心が意図する脳活動よりも、およそ0.5秒も先でした。私たちは、まず人の心の意識が「動かそう」と決断して、体が動くはずだと思いがちです。しかし、結果は何と逆なのです。自分の意思決定はある意味錯覚に過ぎず、後付けで自分が決めたと認識しているだけだというのです。
慶応大学大学院の前野隆司教授が提唱する「受動意識仮説」では、人間が「私が」と主語で表す「意識主体」は、私たちが通常そう感じているような「能動的な主体」ではなく、「受動的な何か」でしかないのではないかと論じています。「私」は、私の「司令塔」ではなく、私で起こっていることの単なる「観察者」なのではないかというわけです。
ではなぜ、私たちが「能動的な主体」と感じているかといえば、前野教授曰く、経験を記憶していくエピソード記憶を行うためには、エピソードの主語となる主体を必要としたからだとのこと。意識の主体は、私が勝手に動いている結果を、ただ単に観測しているのに過ぎないのに、「私がやった」「私が感じた」「私が思った」と思い込んでいるだけで、それはそうしたエピソードを記憶に留めるためだということなのです。
つまり、思考や感情は脳の電気信号であり、ただのクセだと言えるでしょう。そのクセにとらわれて、人生の選択肢を狭めるようなことをするより、脳のクセを、演算アルゴリズムを変えてしまえばいいのです。
最初は「でも」とか「だって」とか、いろんな言い訳が湧きあがってきますが、それこそが脳の「クセ」であり「脳の中の小人」が自動計算しているだけだと思ってください。
そもそも「自分は何をやりたいのかわからない」といった人もいるでしょう。それはたいていの場合「行動不足」が原因です。これまで自分がやりたいことに意識を向けることなく、何となく受け身で過ごしてきてしまったため、いざ「ご自由に」と言われても戸惑ってしまうわけです。
この場合は、とにかく何でもいいからアクションを起こしてみてください。人のいる場所に出かけてみるとか、休日に自分が好きなことをやってみるとか、どんなことでもいいと思います。そうした動きの中から気づきが生まれたり、先入観が消えたりすることがあり、つまり何でもいいからとにかく行動することで何らかの光明が見えるはずです。
留まっていないで行動することが大切です。昔話のわらしべ長者をイメージするとよいでしょう。行動することで人生の景色が変わり、場面がどんどん展開していきます。
とりあえずこの数年の資産戦略
さてこの大激動期にあって、現金や株式、不動産やゴールド、仮想通貨など多様な資産がある中で、自身の資産を増やすため、あるいは守るために、具体的にどこに、どのような割合で投資をしておけばよいでしょうか。
ここ2〜3年程度の金融市場は原則的に、過去20年程度の延長線上にあります。リーマン・ショック前のプチバブルとその崩壊、そしてそれをリカバーする世界的な大規模金融緩和、そして2020年コロナショック後の天文学的な金融緩和の中で、円やドル、ユーロといった通貨の価値が希薄化し価値を毀損させると同時に、株や不動産などの資産が大きく価値を持つといった流れです。
「金融リセット」が起こるまでの数年は引き続き、ますます通貨の価値が下がる、換言すると資産の価値が上がる、といったことが続きそうです。この時、現時点では大幅な円安圏にある為替が円高に反転するようなことがあった場合、1990年型のバブルが発生する可能性があります。
1990年型のバブルとは要は、日本の株や不動産など資産市場だけが独り勝ち状態の独歩高、といった状況です。当時は基軸通貨ドルを支えるために1985年のプラザ合意によって円高ドル安が決定づけられ、1ドル220円程度だったところ一気に120円まで円高が進みました。
今回円高になるきっかけや理由は何でもいいと思います。
例えば米国でのFRBの金利下げと同時に、日本での日銀の金利上げが実現するか強く意識された場合、日米の金利差縮小で相対的な米ドルの魅力低下により、円キャリートレードの巻き戻し、あるいはそれを超える円転換が起こるケースです。
転換された円のうち一定量が、株や不動産など資産市場に流れ込むと、それまで専門家が予想してきた範疇を超えた、まさに「想定外」の株高・資産高といった事態が発生する可能性があります。
現時点でこのような話を聞いても荒唐無稽に聞こえるかもしれませんが、1985年の時点であのようなバブル発生を想定できた専門家は皆無と言ってよく、それどころか、不景気を懸念したからこそ異例の大規模金融緩和が行われたのでした。だからこそあのようなバブルが発生したわけです。このあたりの経緯については『バブル再び 〜日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)に詳細を記していますので、ご確認ください。
そしてこのような事態になると、上昇するのは株や不動産のみならず、絵画や高級車、高級ワイン、高額腕時計なども飛ぶように売れ、その時点での理屈を超えた価格で取引されそうです。
2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任。TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動等でも活躍中。現在、東洋経済オンライン、ダイヤモンドオンライン等で連載中。NHKドラマ「正直不動産」の監修を一部担当。業界・政策提言や社会問題全般にも言及する。YouTubeチャンネル(長嶋修の「日本と世界を読む」)を運営し、不動産投資・政治・経済・金融全般についての情報発信をするYouTuberとしても活動中。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。