本記事は、長嶋修氏の著書『グレートリセット後の世界をどう生きるか』(小学館)の中から一部を抜粋・編集しています。
感情が先、理屈が後
すでに私たちは「1人1台スマホ持ち」の情報化社会・情報過多社会にいますが、そうした情報はそもそも、どのように創られ、配信されているのでしょうか。
まず前提として、テレビは視聴率、雑誌は販売部数、ネット記事ならページビューが求められます。とりわけインターネット、スマホの登場でテレビ・ラジオ・新聞などのいわゆるオールドメディアは旗色が悪くなっていますが、ネットの世界においてもその情報量は指数関数的に増大し続けています。
そうした中、多くの人に興味を持ってもらうためには、どうしても刺激的なタイトルや中身を追求することになります。具体的には「不安や恐怖をあおる」のがありがちな手法です。人は理屈ではなく感情で動き、後からその行動を理屈で説明する生き物だからです。
「感情が先、理屈が後」です。心理学的に、人の感情を揺さぶるのが手っ取り早いのです。
例えばテレビや新聞・雑誌などで株や不動産の特集を組む時に、株価が上昇基調にあれば「今買わないと損する○○銘柄」とか「バブル到来! このチャンスの波に乗り遅れるな!」みたいなタイトルになり、不動産市場が好調ならやはり「狙い目のエリア○選」といった具合です。
またアンチの気持ちを引き付けるべく「バブル崩壊の足音が聞こえる」みたいなタイトルと本文で、株や不動産市場好調の恩恵を全く受けていない層の溜飲を下げる効果を狙ったりもします。タワーマンションがしばしば叩かれるのも、それを買えない層のコンプレックスを解消する効果をもたらす格好の材料提供となっているわけです。
一方、株価下降基調においては「バブル崩壊」「底なし沼の市場」といった、これからお先真っ暗のようなタイトルになりがちです。情報を受け取る側は、上へ下へと感情を大きく揺さぶられて大変です。
こうしたメカニズムでメディアから流される記事やオピニオンを参考にして投資の意思決定を行うのですから、思惑通りになるわけがないのですが、これこそが「マス」と言われるものの実態・正体です。
混乱期に飛び交う流言飛語
こうした混沌期・混乱期にはいつの時代でも不安が高まり、特に昨今のような情報過多社会では、その不安を何倍にも増幅させるような
「バブルが崩壊する」程度ならまだかわいいもので、「日本は財政破綻する」とか「AI化・ロボット化の進展で仕事がなくなり管理社会になる」といった、まるでジョージ・オーウェルの著書『一九八四年』のような見立てなど様々です。
はたまた「ネクストパンデミックがやってくる」というものや、あげくには「2025年7月5日4時18分にフィリピン沖で災害があり、日本に大津波が押し寄せる」とか、「いやその災害は隕石が原因で、その時刻の隕石飛来をNASAがつかんでいる」とか、何やらこの世の終わりのような情報まで飛び交っています。
そのきっかけは、東日本大震災の発生を予言したと言われるマンガ『私が見た未来』(たつき涼・著 飛鳥新社)における著者の夢の記録のようですが、そのほか多数の人が7月5日の災害予言や予測をしているようです。
「令和6年6月6日に大きな事件や事故・災害が起きる」なんてのもありました。「666は獣の数字だから」ということのようです。聖書の『ヨハネの黙示録』には、10本の角と7つの頭を持つ海から上がってきた「獣」と、2本の角を持ち竜が吠えるようにものを言う地中から上がってきた「獣」という2匹の獣が登場します。そしてその獣の数字は「666」であると記されているのです。実際には何も起きませんでしたが。
この世はゴミ情報であふれている
このような現象は、あたかもバブルが崩壊して久しい1995年に阪神・淡路大震災やオウム真理教による地下鉄サリン事件が起き、1997年には三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券、徳陽シティ銀行、1998年には日本長期信用銀行などが次々と破綻し、世の中が不穏な空気に包まれたころと似ています。
「1999年7の月、空から恐怖の大魔王が降りてくる」といったノストラダムスの予言でこの世界は終わるとか、コンピュータの「2000年問題」による世界のコンピュータ誤作動で、発電・送電機能・医療関連機器・金融機関・通信・水道・交通などが停止する、はたまた弾道ミサイルなどの誤発射など、20世紀末にはあたかもこの世界の終わりかというような論調が巻き起こったのです。
2012年。数年前のリーマン・ショックの影響や2011年の東日本大震災でやはり社会全体に、暗い、不穏な空気が流れていたころには、2012年12月21日でマヤ暦が終わっていることを理由として、やはり「この世が終わる」とか「地球が次元上昇して空中
「空中携挙」とは、選ばれた能力の高い人達だけ、テレパシーが通じた人達だけが、天に引き上げられ、
混乱と混沌が当面継続する大変化の時代にあっては、やみくもに情報収集すればするほど、わけがわからなくなり迷宮に入ります。言葉を選ばずに言えば、この世はゴミ情報であふれかえっているのです。
2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任。TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動等でも活躍中。現在、東洋経済オンライン、ダイヤモンドオンライン等で連載中。NHKドラマ「正直不動産」の監修を一部担当。業界・政策提言や社会問題全般にも言及する。YouTubeチャンネル(長嶋修の「日本と世界を読む」)を運営し、不動産投資・政治・経済・金融全般についての情報発信をするYouTuberとしても活動中。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
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