武田薬品・ウェバー社長、長期政権に
現役の外国人社長として在任10年超となるのは武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長・CEOだ。2019年1月、日本企業によるM&Aとして過去最大の約6兆2000億円を投じてアイルランド製薬大手のシャイアーを買収した。医療用医薬品事業に経営資源を集中する一方、一般大衆薬事業(現アリナミン製薬)を米投資ファンドに売却するなど、事業の入れ替えに力を振るってきた。
自動車用ランプ大手の市光工業では2010年以降、外国人社長が3代連続する。現社長のヴィラット・クリストフ氏までいずれもフランス自動車部品メーカーのヴァレオ・バイエンの出身。2017年にヴァレオがTOB(株式公開買い付け)で市光工業を子会社化(ただし上場は維持)したが、それ以前から両社は協業関係を築いていた経緯がある。
日産、ソニーはどうだったか?
もちろん、経営トップには毀誉褒貶がつきものだ。1999年にフランスのルノーから送り込まれ、窮地の日産自動車を再生し、剛腕経営者とうたわれたカルロス・ゴーン元会長(社長・CEOも一時兼務)。ところが、あろうことか2018年、金融商品取引法違反容疑で逮捕され、保釈中にレバノンに逃亡したことは記憶に新しい。
日本板硝子も苦い過去を持つ。同社は2006年、自社の2倍の売上規模を持つ世界第3位ガラスメーカー、ピルキントンを買収。大型M&A後の経営を外国人社長に託したが、2代続けて2年ももたずに退任し、経営の迷走で悪化した業績を立て直すのに10年の歳月を要した。
ソニー(現ソニーグループ)で初の外国人トップが誕生したのは2005年。米テレビ界出身で、ソニー米国法人社長などを務めたハワード・ストリンガー氏が本社の会長兼CEOに就き、後に社長も兼務した。
ストリンガー氏の在任期間は2012年まで7年間に及んだが、むしろ停滞を招いた感が強い。ヒット商品が出ず、エレクトロニクス企業としてのモノづくり力の低下への懸念が広がった。日本を代表するグローバル企業の同社だが、外国人トップを待望する声は聞こえてこない。
亀田製菓のトップはインド出身
食品業界で注目を集めているのは亀田製菓のジュネジャ・レカ・ラジュ会長兼CEO。インド出身で、日本の大学で学んだ。ロート製薬副社長を経て2020年に亀田製菓の副社長に転じ、2022年6月から現職に就いている。
半導体材料大手のJSRは今年6月に上場企業の看板を返上した。官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)によるTOBを受け入れ、株式を非公開化した結果だが、これを主導したのはエリック・ジョンソンCEO・社長。2019年にJSR初の外国人トップとして常務から昇格した。日本政府が半導体産業の復権を国策とする中、同氏は次の一手をどう繰り出すのか。
文:M&A Online