これまでの事業変遷について
—— まず、これまでの事業の変遷についてお聞かせいただけますか。特に貴社は事業の変遷が多岐にわたっており、会社分割も行われているので、少し複雑かと思います。
株式会社QQEnglish 代表取締役社長・藤岡 頼光氏(以下、社名・氏名略): そうですね、確かに今とは全く違うことをやって、最初は東京でバイク便の会社「QQ便」を立ち上げたんです。この名前のまま今の英会話学校にも使ってしまい、今では少し後悔しています(笑)。
——なるほど、当時はバイク便から始まったわけですね。
藤岡: そうです。バイク便なら初期投資が少なくて済むし、電話さえあれば始められるビジネスでした。当時は、独立して事業を始める環境が今ほど整っていなかったので、バイク便が私の中では一番現実的だったんです。
——ビジネスを始める際に、工夫があったんですね。
藤岡: そうですね。そしてバイク便の規模が拡大する中で、オートバイのメンテナンスも必要になり、大きな工場を持つことになりました。大手バイクメーカーH社、Y社、S社とも取引をしていましたし、都内の大手バイク屋さんよりも多くのパーツを購入していました。年間で100台以上のオートバイを購入する規模だったのです。
もともとオートバイが好きなこともあり、バイク便の次にオートバイの販売をやることにしました。そんな中、イタリアの輸入バイクを取り扱うことが縁で、イタリア第2位のオートバイメーカーのオーナーと仲良くなり、趣味のバイクの話を通訳なしでしたいと思いました。
——なるほど、その後、どのように英会話学校に移行されたんですか?_
藤岡:そのオーナーと通訳なしで話したいという気持ちから、2005年にフィリピンに留学し、現地のマンツーマン英会話の効果に驚きました。英語が苦手な私でも、マンツーマンで学ぶことで英語が話せるようになったんです。フィリピン人のホスピタリティもあって、非常に学びやすい環境でした。これがきっかけで、2009年に現地に英会話学校「QQEnglish」を設立しました。
——フィリピン留学の効果に早くから気づかれたのですね。
藤岡: そうです。フィリピンは、英語を公用語として使用しており、しかもネイティブではないため、英語を学ぶ側の気持ちがよく分かるんです。これが、日本人にとって非常に大きな強みです。また、フィリピンは日本から近く、費用も安い。ホスピタリティも高く、教師に向いている人が多いんです。
——フィリピン英会話の利点を存分に活かしているわけですね。
藤岡: その通りです。フィリピンでマンツーマン英会話を学ぶというスタイルは、プレッシャーが少なく、非常に効果的です。私自身、このビジネスモデルには大きな可能性を感じています。
自社事業の強みについて
—— 続いて、自社事業の強みについてお伺いします。競合他社との違いや、貴社の優位性、実績などについて教えていただけますか。
藤岡: 私が英語を伸ばすためにやってきた方法をそのままビジネスにしているんです。私がフィリピンに来たのは2005年頃です。東京で社長をしていたので、長期間フィリピンに留学するのは難しかったんです。英語の勉強も1ヶ月や2ヶ月では話せるようにならないんですよね。それで、私自身が月に1週間ぐらいフィリピンに来て学び、帰国してまたSkypeでオンラインで学ぶという英語学習法をやっていました。
——その経験が今のビジネスに繋がっているんですね。
藤岡: そうなんです。フィリピンに留学するだけでなく、帰国後もオンラインで継続して学べる仕組みを作り上げたんです。これが私たちの競合他社にはない強みです。フィリピンに留学して対面で学び、その後はオンラインで続けることで、学習のモチベーションを維持しやすくなります。また、私たちは英語を学ぶ方法がわからないという人に向けて、コーチングも提供しています。これも他にはない特徴です。
——コーチングを取り入れているんですね。それが競合優位性の一つということでしょうか。
藤岡: そうです。私たちのビジネスモデルは、オンライン英会話とフィリピン留学、そしてコーチングをセットにしている点が強みです。オンライン英会話だけだと、多くの人が平均して7ヶ月から9ヶ月で学習をやめてしまうんですが、うちの生徒は2年から3年続けてくれるんです。これも、留学中に出会った先生との関係が継続学習に繋がっているからなんです。
——それは大きな違いですね。他にも競合との違いはありますか?
藤岡: 我々は2200人の正社員を抱えています。しかも全員フィリピンで現地採用しているんです。これは他社と大きく異なる点です。多くのオンライン英会話会社は、先生を契約社員として雇用しているため、固定費が少なくリスクも低いんですが、我々は正社員として雇い、トレーニングも行っています。これが、質の高いサービス提供に繋がっているんです。
——フィリピン政府の認可も受けているということですね。
藤岡: そうです。私たちはフィリピン政府からの認可を受けて英会話学校を運営しています。セブのITパークにオフィスを構えていますが、ここは日本の大手企業も多数入居しているビジネスタウンで、家賃も非常に高いエリアです。この場所で学校を運営し、トレーニングを徹底して行うことで、質の高い先生を育成しています。
——オフィスでのトレーニングが先生の質を高めているんですね。
藤岡: そうなんです。先生たちは正社員なので、トレーニングを通じて継続的にスキルアップが可能です。優れた先生が職場にいると、隣でその姿を見て学ぶことができるんです。これは自宅でオンラインレッスンを提供している先生にはできないことです。
——なるほど、トレーニングの面でも他社とは大きな差があるんですね。
藤岡: はい。特にパンデミックの時期にはこの強みが顕著に現れました。他社はオンラインで30%ほど成長しましたが、我々はその4倍の成長を遂げました。
——4倍ですか、それはすごいですね。
藤岡: はい、オンライン授業が急増しましたが、留学自体はゼロになったので、留学の減少分をオンラインで補った形です。しかし、このビジネスモデルがあったおかげで、ピンチを乗り越えることができました。
——その強みは確かに大きいですね。競合他社にはない、独自の優位性がよく伝わってきました。
ぶつかった壁やその乗り越え方
——ぶつかった壁やその乗り越え方についてお聞かせいただけますか。
藤岡: 一番辛かったのはやはりパンデミックの時期ですね。オンラインとオフラインのビジネスが1対1の比率で運営されていたんですが、その時期に売り上げが一気に減少しました。大体13億円くらいの売り上げが消えてしまったんです。でも、その時は「住み込みで頑張るぞ」という意識で、社員全員でなんとかしようと団結しました。
——大変な時期でしたね。
藤岡: そうですね。フィリピンでは「ノーワーク・ノーペイ」の仕組みがあって、仕事がなければ給料はゼロになるんです。でも、我々にはオンライン事業があり、半分の収入でも何とか社員全員の給料をカバーしようと努力しました。チームワークの力で乗り越えられたんです。
——チームワークが鍵だったんですね。
藤岡: その通りです。パンデミックの後、今度はセブ島に過去最大級の台風が直撃しました。最大瞬間風速が75メートルという信じられない規模で、海沿いにあった学校は壊滅状態でした。留学生がいなかったのは不幸中の幸いでしたが、校舎は完全に吹き飛んでしまいました。
——それは相当な打撃だったでしょうね。
藤岡: 精神的にはかなり辛かったです。パンデミックが終わり、やっと留学生が戻ってくると思った矢先に、学校がなくなってしまったんです。でも、運よく街中にあった別の校舎は無傷で残り、そこで何とか再建できました。
——非常に厳しい状況だったのですね。それでも、街中の校舎が無傷で残ったのは大きな救いでしたね。
藤岡: そうです。その校舎に全員を移して、何とか業務を続けることができました。このように、危機が来るたびに私たちは強くなっていると感じます。実際、困難な状況に直面すると、アドレナリンが出て、成長するきっかけになります。それが毎回大きな学びとなり、次のステップに進めるんです。
——危機が来るたびに成長するというのは、まさにおっしゃる通りですね。
藤岡: ただ、もちろん危機が来るたびに「もうやめてくれ」と思うこともありますけどね(笑)。それでも、危機を乗り越えるたびに、私たちの組織は強くなっています。台風やパンデミックといった大きな出来事を経て、社員全員が「自分たちの会社を守る」という意識を持ち、一丸となって行動しています。
今後の経営・事業の展望
——新規事業の展開、既存事業の拡大、またはM&AやIPOについての考えがあれば教えてください。
藤岡: IPOは規模や売上では問題ないんですが、スピード感が追いつかないですね。例えば、我々のようにオフィスを作って、正社員を雇ってトレーニングをしていくモデルでは、IPOに適したスピード感が出ないんです。でも、一つ誇れるのは、我々が世界一の英語を話せる高度人材を揃えているという点です。人件費が安く、英語を教える教師が2000人以上も一か所に集まっているというのは、他にはない強みですね。
——確かに、それは非常に大きな強みですね。
藤岡: さらに、我々には10年以上かけて鍛え上げた優秀な英語を話す人材がいますので、英語だけでなく、理科や社会、数学なども英語で教えられるようになりました。フィリピンではこのビジネスは成功しましたが、アメリカでこのビジネスを成功させるのは難しかったです。成功すればユニコーン企業になれる可能性もありますが、アメリカンドリームは非常に難しい。
——アメリカ市場での壁は大きかったんですね。
藤岡: そうですね、アメリカンドリームは簡単にはいかないということを痛感しました。でも、我々には優秀な英語を話す人材がいますので、これを武器に、今後も新たな市場に挑戦していきたいと考えています。
——具体的にはどのような展開を考えていますか?
藤岡: オンラインを活用した教育ビジネスはもちろん、AIや自動学習が進んでいる中でも「人」を重視したビジネスモデルにこだわっています。アメリカでは、人を使わずにコストを削減する方向が主流ですが、我々はあくまで「人」にかけています。AIが進化しても、英語を学ぶには人とのコミュニケーションが必要だと思っています。
——人にこだわるというのは、これからの時代においても重要なポイントですね。
藤岡: そうです。特に我々のビジネスでは、教師同士のトラブルや予期せぬ問題が発生することもありますが、それがあるからこそ人の力が必要なんです。だから、私たちはAIではなく、人とのコミュニケーションを軸にしていきます。
ZUU onlineユーザーへ一言
——最後にZUU onlineのユーザーに向けて一言お願いします。
藤岡: 僕の人生は、もともとはバイクで始まって、バイクで終わる予定だったんですよ。バイクが大好きで、英語や海外には全く興味がなかったんです。でも、英語を学び、話せるようになって外の世界に出た時、全く新しい世界が広がっていたんです。僕にとって、英語はまさに「世界へのゲートウェイ」なんですよね。
英語を通して、新しい世界を見られる。特に今、日本国内では少子化や円安など、明るいニュースが少ないですよね。でも、一歩外に出れば、日本は輝いています。アジアでも日本は尊敬されていますし、日本の企業もまだまだ強い。日本がこれまでに築き上げてきた成功体験は、他の国にはない大きな財産なんです。だからこそ、日本人はもっと海外に出るべきだと思います。
これからアジアは大きく成長します。ASEANの人口は6億人、インドや中国を加えれば、30億人を超える巨大な市場が広がっています。日本国内だけで見れば、1億2000万人の人口が減少していくという厳しい現実がありますが、視野をアジア全体に広げれば、無限のチャンスがあるんです。
僕は、ZUU onlineのユーザーの皆さんに、ぜひ外の世界に目を向けてほしいです。英語が話せるようになれば、見たこともない新しい世界が待っています。QQEnglishでも、たくさんの人が英語を学び、世界へ飛び出していく姿を見ていますが、そのワクワク感は本当に特別です。僕は、そのワクワクする世界を見ずに終わるのはもったいないと思うんです。だから、皆さんもぜひ一緒に新しい世界に飛び出していきましょう。
——ありがとうございます。英語を学ぶことで広がる世界について、非常に強いメッセージをいただきました。
藤岡: 翻訳ツールも便利になっていますが、やはり自分で英語を話せることの価値は別次元です。人との直接的なコミュニケーションは、AIや機械では代替できない部分があると思います。ですから、英語を学ぶことをぜひ続けてほしいですね。
- 氏名
- 藤岡 頼光(ふじおか らいこう)
- 社名
- 株式会社QQEnglish
- 役職
- 代表取締役