トランクルーム投資の特徴

トランクルームは、多くの店舗が月単位で利用料を徴収します。投資家は、この利用料から諸費用を差し引いた部分を収入として受け取れます。トランクルームの構造には大きく分けて、屋外型・屋内型の二つの種類があります。

従来では不動産投資の一種といえる投資方法が多かったのですが、足元は物件を所有しないスキームも増えています。まずは、トランクルーム投資の基本的な特徴をまとめました。

トランクルーム投資の基本的な仕組み

トランクルーム投資は、トランクルームを取得して、基本的には利用者から利用料収入を獲得する仕組みです。トランクルームは都市部を中心に全国各地にあり、かつ増加傾向の施設です。家庭で自宅に収納できなくなった備品や、オフィスの重要書類や事務用品などの保管目的で、盛んに利用されています。

利用者は、ほとんどの場合月単位で契約して業者や店舗オーナーに利用料を支払います。実際には年単位で長期間利用する方が多いため、需要の見込める立地にあるトランクルームであれば、安定稼働が期待できます。

トランクルームの所有者は、利用者の月額料金を得られます。自分で施設自体を管理・運営することもできますが、投資として手間なく運営する場合には、実際の運営は業者に任せるケースが多いといえます。

その場合は、月額料金から業者に報酬を支払い、残った金額が投資家の収益です。稼働率が高ければ、月々安定した収入を期待できるのが特徴といえます。

トランクルームの二つの構造

トランクルームは、おおまかに分けて屋外型屋内型が存在します。

屋外型

屋外型は、更地にコンテナのような収納スペースを多数設置して、1コンテナごとに利用者を獲得します。事前知識なしにトランクルームというと、こちらをイメージする方も多いでしょう。

何もない空き地を利用する必要があるため、比較的郊外に設置する場合が多いタイプです。屋外型では、更地に施設を設置する必要があります。借地というケースもゼロではありませんが、ほとんどのケースでは投資家か業者が土地を所有します。

屋内型

屋内型は、トランクルームの施設が室内にある構造です。その分、収納スペース一つ一つはより簡素な構造で仕切られています。こちらの構造は、既存の建物のテナントを借りて運営できます。

そのため都市の中心部の、テナントを活用して運営されるケースも少なくありません。土地開発を伴わない、相対的に手軽に始められる投資方法といえます。

物件を所有する投資、所有しない投資

トランクルーム投資は不動産投資の一種と捉えられがちですが、最近は物件を所有しない投資スキームもみられます。この場合は、不動産投資というより事業投資に近い形態といえるでしょう。

不動産を所有するケースとしては、自分が持つ空き地やビルの一室を加工してトランクルームとして運営するパターンです。トランクルーム投資を見据えて自分で土地を購入することも可能です。特に屋外型では、自前の土地を活用して運営されるケースが多いといえます。

一方で、事業経営をするときのように、建物の一室を借りて運営するスキームもあります。この場合、投資するうえで、投資家は不動産を一切所有しません。その代わり、契約者が支払う利用料を受け取る権利を所有し、収益を獲得します。

トランクルームの市場見通し

日本におけるトランクルームの市場は2023年時点で770億円です。2008年以降15年連続で市場が拡大し続けています(株式会社キュラーズによる2024年トランクルーム市場調査)。家賃の高騰とそれに伴う自宅の狭小化などが、需要の拡大に寄与しているとみられます。

2023年時点で全国のトランクルーム数は1万3,691店舗に達し、ファミリーレストランよりも店舗数が多くなりました。2027年には1,000億円規模に達するとの見方もあり、市場拡大が見込まれる有望市場となっています。

トランクルーム投資の契約タイプ

トランクルーム投資には複数の契約タイプがあり、トランクルームに転用できる物件の有無や初期投資額、求めるリスク・リターンをもとに自分に合ったものを選ぶことが大切です。

  • 管理委託方式
  • 店舗全体の一括借上げ方式
  • 区分所有方式
  • 事業用借地方式

管理委託方式

管理委託方式は、トランクルームの経営に最も積極的にかかわる形式です。最も投資家が対応する範囲が多いケースでは、土地の調達(もしくは賃貸物件の契約)や設営、集客まで全て自分で対応します。経営開始後のトランクルーム設備の維持・管理のみを管理会社に任せる仕組みです。

管理コストを差し引いた部分は全て自分に入ってくるため、稼働率が高ければ最も収益性が見込める方式といえます。一方で、稼働率がダイレクトに自分の収支に影響するため、リスクも高いといえます。

足元は、管理委託方式でも管理会社によって対応範囲は異なります。設備の設営や集客など、より幅広い範囲の管理を行ってくれる契約形態もしばしばみられます。

土地やテナントを業者が準備し、投資家は初期費用や管理コストを負担するだけで投資を実行できるスキームも見られます。

店舗全体の一括借上げ方式

不動産でいうところのサブリース方式に似て、運営業者が店舗を丸ごと借り上げて運営する方式です。業者と投資家間の契約料は固定になっていて、実際の稼働率に関わらず固定の収益を得られる仕組みとなっています。一般に収益性は下がるものの、投資家にとっては安定した固定収益を得られるのが魅力です。

こちらの契約方式では、一度運営が始まってしまえば投資家はほぼ対応事項がありません。手間なく投資ができるのも特徴といえるでしょう。借上げ方式でも、投資家が出資した資金で業者が土地取得やテナントの整備を行うスキームもあります。その場合、投資家は不動産を所有せず、賃料を取得する権利だけを有する仕組みです。

区分所有方式

近年は、トランクルーム投資でも区分投資スキームが出てきています。一つの店舗の経営権を複数の投資家で分担して保有し、獲得した利用料を分け合う仕組みです。なお、2024年現在において、大きく分けて二つの形態が見られます。

一つは、トランクルームの区画単位で賃料を受け取る権利を分け合う仕組みです。例えば30区画あるトランクルームを5口で区分する場合、No.1~No.6は投資家A、No.7~No.12は投資家B、といったように区画で権利が分かれています。それぞれの区画の稼働率に応じて収益を獲得します。

個別の区画の稼働率によって、投資家間でも収益性に差が出る余地がありますが、基本的には運営業者が不公平にならないように稼働率をコントロールしています。

もう一つは、一店舗を共同所有する仕組みです。こちらは、投資家ごとに区画は割り当てず、1店舗の1カ月の総収益を投資口数に応じて山分けします。

区分所有は、一店舗丸ごとを経営するよりもコストを抑えられるのが特徴です。区分所有の普及により、トランクルームの投資ハードルは下がったといえるでしょう。なお、区分所有でも、投資家が得られる収益を固定する契約形態もみられます。

事業用借地方式

保有している土地や物件を、トランクルーム業者に丸ごと貸し出す方法もあります。こちらは最も不動産投資に近い方法であり、土地や建物を所有していることが前提となる投資手法です。

トランクルームの経営自体には一切かかわらず、業者から徴収する月々の賃料が投資家の収入源となります。手間をかけずに空き地を活用できますが、トランクルーム業者が撤退してしまえば、たちまち収益が得られなくなってしまいます。

不動産投資とトランクルーム投資の比較

トランクルーム投資は、不動産投資を考えている方の一つの選択肢として検討の余地があります。双方の特徴を比較したうえで、自分にあった投資方法を選択しましょう。

両者の比較を簡単に整理すると、次の通りです。

不動産投資 トランクルーム投資
総取得価格 1千万円〜数億円 百万円〜2千万円
自己資金額 数万円〜数千万円 百万円〜2千万円
利回り 平均で5%程度 平均で10%超
レバレッジ効果 ローン借入により享受できる 一括現金購入が多く、活用は難しい
運営中の収支 収入:賃料収入支出:管理コスト、修繕費用、税金、ローン返済 収入:利用料支出:管理コスト、税金
リスク 賃料減少リスク不動産価格の下落リスク 利用者の減少リスク運営業者の倒産・撤退リスク

総取得価格

総取得価格(ここではローンでの資金調達額も加味した当初の費用とします)は、平均を取れば不動産投資の方が高くなります。不動産投資の場合、投資開始時点では物件取得+諸費用がかかります。地方の築古物件など極端な例を除けば、おおむね以下のような価格帯が目安です。

  • 区分マンション:1千万円〜
  • アパート一棟:数千万円〜数億円
  • マンション一棟:1億円台〜数億円

対してトランクルーム投資は、土地の取得を伴わないスキームでいえば、店舗まるごとの投資で1〜2千万円、区分なら百万円~数百万円が目安です。土地取得を伴う場合は、土地によって数千万円になる可能性はありますが、平均で見れば不動産投資より安く済むでしょう。

自己資金額

自己資金に絞った場合は、少し事情が変わってくるので留意しましょう。不動産投資は、ローンを活用して自己資金を抑える投資家が多いですが、トランクルーム投資では必ずしも一般的ではありません。

特に、不動産の取得を伴わないスキームでは、事実上不動産ローンのように多額の借り入れをするのは困難です。すなわち、トランクルーム投資の方が、初期費用を丸ごと自己資金で支払うケースが多いといえます。

不動産投資のうち、区分マンション投資では、月々のキャッシュフローが赤字となるものの、自己資金が数十万円以下の少額から始められるスキームが少なからず存在します。月々のキャッシュフローが赤字化するケースまで含めれば、実は自己資金という観点では不動産投資の方が抑えることができます。

ただし、月々のキャッシュフローを黒字に保ち、毎月現金収入を獲得することを前提とするのであれば、不動産投資でも、ローン返済負担を抑えるために一定の自己資金が必要となります。キャッシュフローの黒字化を前提とする場合には、やはりトランクルーム投資の方が自己資金が少なく済む場合が多いでしょう。

利回り

利回りを以下のように定義すれば、トランクルームの方が高い傾向にあります。不動産投資の「実質利回り」にあたります。

利回り=(年間収益額-諸費用)÷物件(もしくは資産)取得価格

トランクルームは、手のこりのキャッシュフローベースで、一桁後半〜10%台半ばが利回りの目安です。より具体的にいえば、投資家が稼働率に伴う損益の変動リスクを負うスキームで10%台、一括借上や固定収益のスキームでは10%以下が一つの目安です。

不動産投資の利回りは物件のタイプや立地によって大きく異なりますが、5%前後が一つの目安で、少なくとも10%を超える物件は多くないでしょう。ローンを借りている場合は、上記の利回りの式からさらにローン負担返済額が差し引かれるため、実際の手のこりはさらに少なくなります。

利回りを重視して投資するのであれば、トランクルーム投資の方が高水準を追求しやすいと言えます。

レバレッジ効果

レバレッジ効果を得やすいのは、不動産投資です。トランクルーム投資は、2024年現在、ローンを活用した投資手段が限られています。

賃料収入を得る純粋な不動産投資とは異なるため、不動産ローンは活用しづらいのが実情です。どうしてもローンを活用したいなら、事業用ローンを検討することになります。事業用ローンは、不動産ローンと比べて借り入れ期間が短くなるため、キャッシュフローが大幅に削られてしまいます。そのため、現実には事業ローンを活用してトランクルーム投資を始める方は少数派でしょう。

トランクルーム投資は、基本的に現金一括で投資を始めるのが適しています。そのため、借り入れを活用した収益拡大効果である「レバレッジ効果」を享受するのは困難です。少ない自己資金で大きな収益を狙うなら、不動産投資の方が実現余地があります。

運営中の収支

トランクルームと不動産投資の経営期間中の収支構造の概略は次の通りです。固定資産税や修繕負担、ローン返済がある分、不動産投資の方が支出項目が多いと言えます。

不動産 トランクルーム
収入(+) 入居者からの賃料 契約者からの月額利用料
ランニングコスト 管理・メンテナンス費用 管理・メンテナンス費用
修繕の準備 修繕積立金(計上ない場合は貯蓄が必要) 一般に不要
税金 所得税・住民税固定資産税 所得税・住民税(固定資産税)
減価償却 物件によるが数十年程度 5年
ローン返済負担 金利+元本返済 なし*

*不動産を取得せず、またローンを活用しない前提

性質は違うものの、毎月安定した収入を得られるという点では共通しています。また、物件もしくは施設の管理・メンテナンスコストも、どちらの投資でもかかります。

修繕費用は、管理委託方式で投資家の裁量が大きい契約を例外として、基本的に運営業者が対応するため、ランニングコストに上乗せして徴収される契約は多くありません。そもそも賃貸物件を活用する場合には、不動産の修繕の負担がないためです。

税金は、トランクルーム投資が不動産を保有するスキームであれば、負担する税金の科目は同様です。不動産を保有しない場合は、固定資産税がかからない分不動産投資より税負担を抑えられるでしょう。

減価償却の期間は、不動産の場合は建物の耐用年数と築年数に依存します。長いケースで言えば、RC造の耐用年数は47年です。新築から投資を始めると、数十年単位の償却期間となります。

トランクルーム投資では、自身のビルや建物を転用するケースを除いて、償却対象の不動産を所有しません。取得する資産は、その年次に経費計上するか、一部を繰延資産として5年で減価償却する形となります。

最後に、返済負担やローンの金利負担は、ローンを活用して不動産投資をしていれば発生します。トランクルーム投資では、ローンを活用しない(できない)ケースが多いため、基本的にはローンに関する負担が発生しません。

リスク

不動産投資とトランクルーム投資では、投資家が負うリスクに違いがあります。不動産投資の場合は、空室や賃料下落に伴う収入減のリスクと、不動産価格の下落に伴う売却損のリスクです。リスクを抑えるうえでは、立地や物件の資産価値、品質が重要となります。

なお、不動産は「実物資産」を所有するため、資産価値が下落することはあっても、無価値になるリスクは低いと言えます。この点はトランクルーム投資と比べて安心して投資できるポイントです。

トランクルーム投資の場合も、月々の収入減は重要なリスクの一つです。ただし、賃貸住宅と比べて物件自体のクオリティでは差がつきにくく、周辺住民や企業からの申し込みが見込める立地かどうかがより重要となります。

もう一つは、トランクルームの運営業者の倒産・撤退リスクです。物件を所有しないスキームの投資では、運営業者が倒産すると売上を獲得する術がなくなるため、「利用料を受け取る権利」という無形の資産は限りなく無価値に近くなります。運営業者の判断による、撤退もリスク要因です。

トランクルーム用地の所有権があれば、別の業者を招聘したり、トランクルーム以外に転用したりといった選択肢が残るものの、一時的な収入減や重い追加のコスト負担は避けられないでしょう。このようなリスク要因の違いに注意して、投資を検討しましょう。

トランクルーム投資の体験談

筆者は、冒頭にご紹介の通りトランクルーム投資を先日から始めています。もともとアパートでの不動産投資は手掛けていましたが、新たな取り組みとしてチャレンジしました。

トランクルーム投資を始めた背景は主に二つで「少額投資で現金収入を得る投資がしたかったから」と「アパート投資で自己資金を少額で抑える投資が難しかったから」です。

筆者の借入総額的に自己資金を求められるケースが増えてきたため、アパート投資では500万円以下の自己資金で投資を始める目処が立ちませんでした。

トランクルームも、店舗丸ごとでは1千万円〜が必要な情勢でしたが、区分なら数百万円で投資できて、さらに毎月のキャッシュフローも確かに生まれます。今回はすでに稼働している物件に投資したため、投資開始初月から収益が生まれています。

筆者のケースでは、今回紹介中にもあった「物件を持たない」タイプで、トランクルームの利用料から成る収益のうち、運営コストを引いた分が手残りとなる仕組みです。このスキームでは、正直契約後はやることが何もありません。毎月正常に収入が入金されるのを確認するだけです。

稼働に不測の事態がなければ、不動産より高い一定程度の利回り・現金収入が期待でき、まさに当初求めていた投資が実現しています。一方で、やはり運営事業者の事業継続性がリスクだと考えています。

現時点で業者には何ら不安はないのですが、急成長中の市場ということで、事業者も高成長企業が多いのではと推測しています。もし企業が戦略を見誤って業績悪化や倒産といった事態になれば、投資家も煽りを受けるスキームという理解です。

この点において具体的な懸念は一切なく、市場が成長中であることも安心材料ではあります。しかし、万が一の時には資産が全損となるリスクがあることは念頭においたうえで、他の投資先とのバランスを鑑みて投資していく必要があると感じています。

不動産投資とトランクルーム投資、自分にあった方法を検討しよう

不動産投資とトランクルーム投資のどちらがより適しているかは、投資家の考え方やスタンスによります。簡単に整理すると次のとおりです。

不動産投資がおすすめ
  • レバレッジ効果で自己資金対比での収益性を重視する人
  • 数千万円の余剰資金がある人
  • 実物資産を所有する方が安心感がある人
  • 節税目的で、短期間・多額の減価償却を計上したい人
トランクルーム投資がおすすめ
  • 取得価格対比での高い利回りを重視する人
  • 数百万〜1千万円程度の初期投資で安定した現金収入を得たい人
  • 負債を増やすのを避けたい人
  • 実物資産の所有にこだわらない人

自分の投資スタンスや負担できる自己資金額、ローン借入の余地などを整理したうえで、適した投資方法を選択しましょう。

この記事を書いた人

伊藤圭佑
証券アナリスト
資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。
新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。