再建築不可物件は安価な価格で販売されることが多く、一見すると魅力的な物件に見えます。しかし、その実態や注意点を知らずに購入すると後々大きな問題に直面する可能性もあります。
そこで本コラムでは再建築不可物件とは何かを中心に、再建築不可物件を購入するメリット・デメリットや、再建築不可物件を有効活用する方法、購入する際に確認すべき点について解説します。
再建築不可物件とは?
再建築不可物件とは、建築基準法上の接道義務を満たしていない土地に建つ建物のことを指します。具体的には「建物を建てる際には、その土地が幅4m以上の道路に2m以上接していなければならない」という接道義務が定められており、この条件を満たさない物件が再建築不可物件として分類されます。このような物件は、現在の建物が取り壊された後に新たな建物を建設することができません。
この状況が生じる背景には、都市の発展や法律の変更などの要因があります。かつては適法だった建物が、法改正により現在の基準に適合しなくなるケースも少なくありません。特に古い住宅地や密集市街地では、このような物件が多く存在する傾向にあります。
再建築不可物件になる要因を詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事も参考にしてください。
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再建築不可物件を購入するメリット
まずは再建築不可物件を購入するメリットから見ていきましょう。
- 安く購入することができる
- 固定資産税評価額が低く設定されている
安く購入することができる
再建築不可物件を購入する大きなメリットは価格が安いことです。再建築不可物件はその制約によって、市場価値が低く設定されています。そのため、同じエリアにある再建築可能な物件と比較すると、かなり安く購入できるケースが多いです。
人気のエリアや利便性の高い立地でも、再建築不可物件であれば通常の相場の半額以下で手に入ることもあるため、限られた予算での不動産経営を検討している方にとって大きな魅力となります。
固定資産税評価額が低く設定されている
再建築不可物件のもう一つのメリットは、固定資産税評価額が低く設定されており結果として固定資産税額も低くなることです。固定資産税評価額とは固定資産税の税額計算に使用される基準税額のことです。具体的には次の計算式によって税額が決まります。
固定資産税額=固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率)
再建築不可物件を購入するデメリット
メリットがある一方で、再建築不可物件には様々な制約があります。購入を検討している方は、以下のようなデメリットを理解しておくことが大切です。
- 建て替えることができない
- ローンを組むことが難しいため資金が全額自己負担となる
- 買い手が限定されるため売却がしづらい
建て替えることができない
再建築不可物件の一番のデメリットは、新しい建物に建て替えることができないことです。不動産投資において、物件の維持や価値向上のためには建物の更新や増改築も必要な要素です。しかし、再建築不可物件では、既存の建物が老朽化したり、災害などで使用不可能になったりした場合でも、新たに建物を建設することが法律上許されていません。
建築確認申請が不要なリフォームであれば問題ありませんが、例えば増改築や敷地内での移転を行う場合や「壁・柱・床・梁・屋根・階段」などの主要構造部を1/2を上回る範囲で修繕や模様替えを伴うリフォームができないため、物件価値を維持しづらくなります。
ローンを組むことが難しいため資金が全額自己負担となる
金融機関は、再建築不可物件に対して融資の提供をしないこともあります。その理由として、再建築ができないため物件自体の担保価値が低く評価され、万が一の際に金融機関が物件を売却しても貸し付けた資金を回収しにくいからです。そのため、投資家は購入資金を全額自己負担で用意しなければならない場合もあり、資金面での障壁が高くなります。
ただし、必ずしもすべての金融機関が融資を拒否するわけではなく、条件によっては融資を検討してもらえる場合もありますので、購入を希望する際は金融機関に相談してみることをおすすめします。
買い手が限定されるため売却がしづらい
再建築不可物件には再建築ができないという制約があるため、購入を希望する買い手が限られることが多く、売却が難しくなります。特に、不動産投資では多くの人がローンを利用するため、ローンが組みにくい再建築不可物件は敬遠されがちです。購入資金を全額自己負担できる人や、再建築の制約を理解した上でその物件を魅力的だと感じる特定の層にのみ限られることになります。
そのため、売却が長期化し、投資物件の流動性が低下するリスクがあります。また、購入価格が安かったとしても、売却時にはさらに値引き交渉を受けることも考えられるため、投資としての収益性を損なう可能性があります。このように、売却までを想定すると投資家にとっては、出口戦略が限られることがデメリットとなります。
再建築不可物件を有効活用する方法
建て替えることのできない再建築不可物件ですが、以下のように有効活用する方法もあります。
- リフォームやリノベーションをする
- 再建築可能にして建て替える
- 更地にして駐輪場にする
- 太陽光発電用地として活用する
- 貸し用地として活用する
リフォームやリノベーションをする
再建築不可物件でも、既存の建物をリフォームやリノベーションすることで居住性や機能性を向上させることが可能です。例えば、内装を一新したり、設備をアップグレードすることで快適な住環境を整えたり、賃貸物件としての魅力を高めることができます。
ただし、再建築不可物件は建物自体に構造的な制約があるため大規模な増築や改築はできません。そのため、事前に建築士などの不動産の専門家に相談し、物件の構造や法的制限を十分に確認してから計画を進めることが重要です。
再建築可能にして建て替える
基本的には難しい場合もありますが、場合によっては接道要件を満たすなど再建築可能な状態にできることがあります。これには近隣との交渉や行政との調整が必要になることが多いですが、成功すれば資産価値を大きく向上させることができます。
更地にして駐輪場にする
再建築不可物件では、道路が狭いなど接道に問題があるため、駐車場を作ることができないケースが多いですが、駐輪場として土地を活用する方法があります。特に都市部や駅近のエリアでは、駐輪場の需要が高いことから安定した収入源にすることができます。
駐輪場にする場合、舗装や簡易なフェンスの設置など小規模な工事で対応できるため、初期投資を抑えた土地活用が可能です。自転車通勤や近隣施設の利用者向けに駐輪スペースを提供することで月極の収入を得ることができ、定期的なキャッシュフローの確保が期待できます。
太陽光発電用地として活用する
日当たりの良い再建築不可物件であれば、太陽光発電パネルを設置して、発電事業を行う方法も検討できます。特に、地方や郊外に位置する物件では広い土地が多いため、太陽光パネルを配置し発電量を確保することが可能です。
日本では再生可能エネルギーの需要が高まっており、発電した電力を電力会社に売電することで安定した収益を得ることができます。太陽光発電は初期投資が必要ですが、長期的には維持コストが比較的低く土地を有効活用する手段として注目されています。
貸し用地として活用する
再建築不可物件を所有している場合、その土地を他者に貸し出すことも一つの活用法です。例えば、資材置き場として建設業者に貸し出したり、小規模な農園として地元の農家やガーデニング愛好家に提供したりすることが考えられます。定期的な賃料収入を得ることができ、土地の維持費や税金を補うことが可能です。
貸し用地として活用する場合は、契約条件を明確にし、長期間の安定収入を得られるように工夫することが重要です。また、地域の需要を把握し、土地の特性に合った用途で貸し出すことで、借り手がつきやすくなります。
再建築不可物件を購入する際に確認すべき点を解説
ここまで再建築不可物件のデメリットやメリットを解説しました。その上で再建築不可物件の購入を検討する場合は、以下のような点を確認することをおすすめします。
- 再建築不可の状況を確認する
- 建物の状態を詳しく確認する
- 近隣との境界線を明確にする
- 施工会社にリフォームが可能か確認する
再建築不可の状況を確認する
再建築不可の理由を正確に把握し、再建築可能にする方法があるかどうかを調査しましょう。具体的には、接道状況や道路の種類、敷地の形状などを調査します。
これらの状況を理解することで、将来的に再建築できるようになる可能性を探ることができます。例えば、隣の土地を少し買い足したり、建物の位置を道路から下げたりすることで、問題が解決することもあります。ただし、再建築不可物件を再建築可能にすることは基本的に難しいということを理解しておきましょう。
建物の状態を詳しく確認する
再建築不可物件を購入する際は、現存する建物の状態を入念に確認することが重要です。再建築ができない以上、今後の修繕やリフォームでどれだけ物件を維持できるかが重要になります。
特に、構造部分は慎重にチェックしましょう。老朽化が進んでいる建物では、耐震性能が不足している場合が多いため、どの程度の地震に耐えられるかどうかは確認すべきです。また、屋根や外壁の状態も耐久性や防水性に影響を与えるため、劣化が進んでいる箇所がないか、雨漏りや断熱不良のリスクを専門家に調査してもらうことが重要です。
設備面では、水道や電気、ガス、排水設備などの配管や配線の状態も確認しましょう。これらが老朽化している場合、大幅な修理費用が発生する可能性があります。特に、築年数が古い物件では現在の基準に合わない設備が使われていることが多いため、費用や工期についても事前に把握しておく必要があります。
近隣との境界線を明確にする
再建築不可物件は密集した住宅地や狭小地に位置していることが多く、隣地との境界線が曖昧な場合があります。購入後のトラブルを防ぐためには、近隣との境界線をしっかり確認することが非常に重要です。
特に、境界線が不明確な場合や古い測量データがある場合は、境界確定測量で正確な位置を確認することをおすすめします。境界が不明確な状態で購入を進めてしまうと、後で予想外の土地の減少やトラブルに巻き込まれるリスクがあるため、専門家を交えて正確な境界線を明確にしておくことが大切です。
施工会社にリフォームが可能か確認する
再建築不可物件を購入した後に、建物のリフォームやリノベーションを行いたいと考えることもあります。しかしながら、トラックや重機などの工事車両が入れないという理由から、そもそもリフォームができなかったり、できるとしても資材を手作業で運ばなければならなかったりする場合には、通常工事よりも工事費用が多くかかることも想定されるため、事前に施工会社に相談することが重要です。また、法規制や用途地域によって、建物の大幅な改修が制限されることもあるため、リフォームが可能かどうかをきちんと確認しましょう。
また、先述した通り、古い物件では断熱材や配管、電気設備などが現在の基準に合わないことがあり、これらを現在の基準に合わせるためには追加のコストが発生する場合があります。施工会社に依頼する際は、具体的なリフォーム内容や費用見積もりを提示してもらい、可能な範囲での改修計画を立てることが必要です。
(提供:manabu不動産投資 )
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