11月中、株式市場で最も注目を集めた銘柄の一つが東京ガスだ。世界最大級のアクティビスト(物言う株主)として知られる米エリオット・インベストメント・マネジメントによる5%超の株式保有が明らかになった。

優良不動産を多数抱える東京ガス

エリオットは11月19日、東京ガス株を新規に5.03%取得したとする大量保有報告書を関東財務局に提出した。9月末から買い付け、取得資金は649億円。「状況等に応じて、重要提案行為等を行う」としている。翌日の東京ガス株は4315円(終値)と前日比500円近く上昇し、月末には年初来最高値の4637円をつけた。

東京ガスは豊洲にある都市ガス製造工場跡地をはじめ都内に優良不動産を多数抱えておており、売却による資産効率の改善や株主還元などを迫られる可能性がある。当面はエリオットが今後さらに買い増しをするのか、出方が注目される。

東京ガス株をめぐっては米投資会社のブラックロックが昨年8月に提出した大量保有報告書で7.82%を保有することが分かっているが、その後、動きは出ていない。

エリオット、4年ぶりの大量保有報告書

実はエリオットが5%超の株式を取得した場合に義務付けられる大量保有報告書を提出するのは2020年のユニゾホールディングス(その後、上場廃止。2023年4月に民事再生法の適用申請)以来4年ぶり。エリオットは住友商事、三井不動産、大日本印刷などの株式保有が明らかになっているが、いずれも5%未満で、大量保有報告書の対象ではない。

エリオットは運用資産が約10兆円とされる。かつて債務不履行(デフォルト)を宣言したアルゼンチン政府を相手に債務返済を求めて法廷闘争を繰り広げ、その名をとどろかせた。

オアシス、TOB銘柄を10%超取得

香港投資ファンドのオアシス・マネジメントは投資先を拡大した。11月中、コクヨ、メルカリ、NECネッツエスアイの3銘柄について5%を超える新規保有が判明した。このうち、NECネッツエスアイは親子上場の解消を目的にNECによるTOB(株式公開買い付け)が10月30日から進行中だ(12月11日まで)。

オアシスがNECネッツエスアイ株を6.01%取得したとする大量保有報告書を提出したのは11月7日。その後、買い増しを進め、11.68%まで保有比率を高めた。NECネッツエスアイ株は11月15日に年初来高値3340円をつけたが、ここへきてTOB価格3250円の近辺にさや寄せされる形で推移している。

オアシスは紅こうじサプリメントによる健康被害問題に揺れる小林製薬の株について、7月に5.2%を新規保有したが、11月19日に保有比率を7.54%まで高めたことが判明。さらにはオアシスが会社側に創業家出身の小林一雅前会長らに損害賠償請求訴訟を起こすよう要求していることが明らかになった。

シンガポール投資ファンドの3Dインベストメント・パートナーズはサッポロホールディングス、ワコールホールディングス、西武ホールディングスなどで株式の買い増しがあった。

サッポロに対しては不動産事業に過度に依存するあまり、本業の酒類事業で必要な経営改革が行われていないとし、都内にある恵比寿ガーデンプレイスなどの不動産売却をかねて迫っている。ワコール、西武では今年、3Dによる新規保有が判明しているが、株主還元を求めるなどの具体的なアクションはまだ表面化していない。