不動産投資を検討する際に、建築構造は重要な選択基準の一つになります。本コラムでは、RC造(鉄筋コンクリート造)の特徴やメリットとデメリットについて詳しく解説します。S造・SRC造・W造との違いを理解し、賢明な投資判断につなげてください。
RC造(鉄筋コンクリート造)とは?
RC造とは、Reinforced Concreteの略で、鉄筋コンクリート造のことをいいます。その名の通り「鉄筋によって補強されたコンクリート」を意味し、鉄筋とコンクリートを組み合わせた建築構造です。柱や梁などの建物の骨格部分に、鉄筋でできた枠組みの中にコンクリートを流し込みます。
鉄筋の引張強度とコンクリートの圧縮強度を活かすことで、強固な建物を実現することができ、RC造は、耐震性、耐久性、耐火性、そして遮音性に優れており、中層マンションや公共施設に広く用いられています。
特に耐震性においては、地震大国である日本において強みを持つ建築構造とされています。また、RC造の建物はコンクリートの特性によって火災時の安全性が高く、延焼を防ぐ効果も持っています。適切なメンテナンスを行えば、非常に長い寿命を持つことも可能です。これらの理由から、RC造は多くの公共施設やマンションの構造として選ばれています。
SRC造・S造・W造との違いとは?特徴と項目別に違いを解説
RC造以外にも、SRC造やS造、W造といった建築構造があります。
それぞれの特徴について、以下の表にまとめました。
RC造(鉄筋コンクリート造) | RC造とは、Reinforced Concreteの略で、日本語だと鉄筋コンクリート造と言います。その名の通り「鉄筋によって補強されたコンクリート」を意味し、鉄筋とコンクリートを組み合わせた建築構造です。コンクリートは圧縮に強いが引張に弱い、鉄筋は圧縮に弱いが引張に強いため、コンクリートが圧縮強度を担い、強固で耐震性に優れた建物を実現します。主に中高層マンションや公共施設に使用されることが多いです。 |
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造) | SRC造とは、Steel Reinforced Concreteの略で、日本語だと鉄骨鉄筋コンクリート造と言います。その名の通り「鉄骨と鉄筋によって補強されたコンクリート」を意味し、鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせた建築構造です。鉄骨が引張強度を担い、鉄筋コンクリートが圧縮強度を支えるため、非常に高い耐震性と強度を持つ建物を実現します。主に高層ビルや大規模な商業施設に使用されることが多いです。 |
S造(鉄骨造) | S造は鉄骨造の略で、Sは鉄(Steel)を意味します。柱や梁などの主な骨組みを鉄骨で構成した建築構造です。鉄骨は軽量かつ強度が高いため、工期が短く、設計の自由度が高い点が魅力です。商業施設やオフィスビルなどに多く採用されています。 |
W造(木造) | W造は木造の略で、Wは木材(Wood)を意味します。柱や梁などの主な骨組みを木材で構成した建築構造です。主に低層住宅や小規模な建築物に使用され、環境に優しい点やコストの低さが特徴です。 |
それぞれの建築構造について、防音性、耐火性、耐震性、コストの比較も表にしましたので、ぜひ参考にしてください。
項目 | RC造 | SRC造 | S造 | W造 |
---|---|---|---|---|
防音性 | ◎ | ◎ | △ | △ |
耐火性 | ◎ | ◎ | ◯ | △ |
耐震性 | ◎ | ◎ | ◯ | △ |
コスト | ◯ | △ | ◯ | ◎ |
RC造はSRC造に次ぐ性能を持ちます。SRC造は総合的に最も高い性能を持ちますが、他の建物構造と比較して建築費用も高くなります。両者は耐火性・耐震性・耐久性においてはSRC造が基本的に優れていますが、防音性能の差はほとんどありません。
S造は工期が短く、構造が比較的軽量なのが特徴です。一方、W造は最もコストが抑えられますが、性能面では他の構造と比べて劣る点があります。
それぞれの建築構造にはメリット・デメリットが存在します。下記の記事もご覧ください。
【関連記事】SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造 )とは?メリット・デメリットや耐用年数を解説
RC造(鉄筋コンクリート造)の工法の種類
RC造の工法には以下の2つの種類があります。
工法 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
RCラーメン構造 | ・柱と梁の接合部を固く留めた構造形式 ・空間を広く活用できる ・変形しやすいことや、部材が大きくなる | ・超高層ビル ・大型施設 |
WRC造(壁式鉄筋コンクリート造) | ・建物の耐力を壁で支える構造形式 ・柱や梁が出ない | ・戸建住宅 ・中層集合住宅 |
RCラーメン構造は、鉄筋コンクリート造の中で最も広く用いられる工法の一つであり、柱と梁が一体となってフレームを形成し、建物の荷重を支える仕組みです。大空間の確保が可能で、間取りの自由度が高いという特徴があります。そのため、オフィスビルや商業施設など、自由な空間設計が求められる建築物に適しています。また、耐火性や遮音性に優れ、メンテナンスも比較的容易です。ちなみに、RCラーメン構造の「ラーメン」という言葉は、ドイツ語の「Rahmen(額縁、枠)」に由来しています。この構造が額縁や枠のような形状を持つことから、この名称が付けられました。
一方、WRC造(Wall Reinforced Concrete)は名前の通り、壁が主要な構造体となり、荷重を支える工法です。この構造では、柱や梁が表に出ず、壁自体が構造体として機能します。WRC造の大きな利点は、高い耐震性と施工の簡易性です。壁全体で荷重を支えるため、地震に対する抵抗力が強く、安全性が高い建物を実現できます。また、施工が比較的簡単であるため、建設コストを抑えることができる点も魅力です。
このように、両工法ともRC造の基本的な特徴である高い強度、耐久性、耐火性を備えていますが、それぞれの構造特性に応じて適した用途が異なります。
RC造(鉄筋コンクリート造)のメリット
建物には様々な建築構造があり、それぞれ特徴が異なることを解説しました。ここでは、RC造の以下のメリットについて解説します。
・高い耐久性と長寿命
・優れた耐火性能
・高い遮音性と断熱性
高い耐久性と長寿命
RC造は、S造やW造と比較して非常に高い耐久性を誇ります。前述した通り、RC造は鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造であり、コンクリートの圧縮強度と鉄筋の引張強度を活かして、強固な建物を実現しています。また、RC造は腐食や劣化に強く、湿気や風化の影響を受けにくい特性を持ち、S造やW造に比べてメンテナンス頻度が少なく済むこともあります。
SRC造は、RC造よりもさらに高い耐久性を有するとされており、RC造と比較してより高い強度が求められる高層マンションやオフィスビルなどで使用されるケースが多いです。しかし、建築技術の進歩によって、RC造の耐震性や耐久性も向上しており、SRC造との耐久性や耐震性の差は縮まっています。また、RC造は建築コストも抑えられることから、近年の新築物件においてはRC造が多く採用される傾向があります。ただし、新築物件が過去のSRC造物件に比べて耐震性や耐久性で劣るわけではありません。
優れた耐火性能
RC造は優れた耐火性能を持っています。RC造に用いられるコンクリートは、燃えない材料であるため、火災時にも建物の形状が保たれやすく、延焼を防ぐ役割を果たします。一定の耐火時間を維持できることから、学校や病院、商業ビルなどの公共施設でもRC造が広く採用されています。
また、RC造は火災リスクが低いことから、W造やS造に比べて火災保険料を抑えられるという経済的な利点もあります。
RC造以上に耐火性能が高いのがSRC造です。SRC造はコンクリートの内部に鉄骨を組み込むことで、より強固な構造となっており、火災時の耐久性もRC造を上回ります。
高い遮音性と断熱性
RC造は、W造やS造と比較して、遮音性と断熱性が高いこともメリットの1つです。コンクリートを鉄筋で補強しているため、壁が分厚くなります。またコンクリートは、木材や軽量鉄骨に比べて音を遮る効果が高く、周囲の騒音を大幅に軽減します。そのため、都市部や交通量の多いエリアに建設されたRC造の住宅やオフィスビルでは、内部の静粛性が保たれ、居住者や利用者がストレスを感じることが少なくなります。
さらに、RC造は優れた断熱性も持っており、外気温の影響を受けにくい構造です。冬は暖かく、夏は涼しい環境を維持することができる上に、暖房やエアコンの使用頻度が減ることで、光熱費の削減にもつながります。
なお、SRC造は内部に鉄骨を持つため、耐久性や耐震性がRC造よりも強化されていますが、遮音や断熱の面ではRC造とほとんど差はありません。
RC造(鉄筋コンクリート造)のデメリット
RC造には高い耐震性や耐火性、防音性などのメリットがありますが、以下のようなデメリットも存在します。
・相対的に高い建築コスト
・重量構造による制限
・リフォームの難しさ
相対的に高い建築コスト
RC造の建築コストは、W造やS造と比較すると高くなります。RC造の建築には、高品質な材料(鉄筋とコンクリート)の使用と、専門的な技術を要する施工プロセスが必要だからです。例えば、型枠の製作や解体、鉄筋の組み立て、コンクリートの打設など、各工程に熟練した技術者が必要となります。
また、RC造はコンクリートの養生期間によって工期も長くなる傾向にあるため、これも間接的にコストを押し上げる要因となります。
なお、SRC造はRC造よりも複雑な施工が求められるため、資材費や人件費もRC造より高くなります。
重量構造による制限
RC造は、鉄筋コンクリートを用いるため重量構造となり、W造やS造と比較して重量が大きくなります。このため、地盤の強度が十分でない土地では、建築基準法に基づく地盤改良工事が必要になる場合が多く、さらに基礎構造にも制限がかかることがあります。特に、地盤の強度が低い地域では、RC造の建物を安定させるために建物の基礎を深く掘り込む必要があるなど、施工コストや工期に影響が出やすくなります。
また、RC造は柱や梁が大きくなる傾向にあるため、居住空間やオフィスの利用可能な面積が狭くなるという制約も生じることがあります。
一方、SRC造は鉄骨を内部に組み込むことでRC造に比べて強度が高まり、柱や梁をスリムに設計できるため、W造やS造ほどではないですが、建物全体の重量も抑えられます。
リフォームの難しさ
RC造はリフォームや改修工事が難しいというデメリットもあります。鉄筋とコンクリートが一体化した構造であるため、壁や床の一部を取り除くような工事は困難になり、間取り変更や設備リフォームに制約が生じます。配管や電気配線の変更も大がかりな工事を伴うことが多いため、リフォームにコストがかかりやすくなります。
これに対し、W造やS造はリフォームが容易で、特にW造は内壁を簡単に取り外せるため、リフォームや増改築に適しています。S造も比較的柔軟性があり、間取り変更や設備更新の際にコストを抑えることが可能です。一方、SRC造はRC造に鉄骨を組み合わせた構造で、RC造と同様にリフォームや改修が難しいです。
RC造(鉄筋コンクリート造)の法定耐用年数は47年
法定耐用年数とは、減価償却などの計算に用いることを目的として、国税庁により定められた耐用年数のことをいいます。RC造の住宅用であれば法定耐用年数は47年、事務所用であれば50年と定められています。
他の構造でも比較してみると、W造は住宅用で20年~22年、事務所用で22年~24年、S造は骨格材の強度やコストに違いがあるため、厚さに比例して耐用年数も長くなる特徴があります。例えばS造(軽量鉄骨造)は住宅用で27年、事務所用で30年、S造(重量鉄骨造)は住宅用で34年、事務所用で38年、RC造はそれらよりも10〜20年近く耐用年数が長いです。また、SRC造の耐用年数はRC造と同様になります。このような法定耐用年数は、金融機関が融資の可否や条件を判断する際にも重要な要素となるので、理解しておきましょう。ただし、耐用年数はあくまで税制上のものであり、実際の建物の寿命を表すものではありません。
先述の通り、用途によって耐用年数が異なります。RC造(鉄筋コンクリート造)の耐用年数について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
【関連記事】RC造の耐用年数は47年・寿命は平均68年|防音性や注意点を解説
RC造(鉄筋コンクリート造)の寿命(物理的耐用年数)
物理的耐用年数とは、建物が物理的に使用可能な期間を指します。これは法定耐用年数とは異なり、実際の建物の寿命を反映したものです。法定耐用年数が税務上の概念であり47年と定められているのに対し、RC造の物理的耐用年数は適切な設計、施工、そして定期的なメンテナンスが行われた場合、70〜100年以上に及ぶ可能性があります。
また、建物の立地環境も物理的耐用年数に影響を与えます。例えば、海岸部や寒冷地といった厳しい環境下では塩害や凍結により、建物の劣化が早まる可能性があります。そのため、立地による影響を理解し、将来的な維持管理コストを見積もることが大切です。
(提供:manabu不動産投資 )
- 【オススメ記事】
- 「FPの私ならここを見る」 プロが語る不動産投資とは?
- 不動産投資の種類はいくつある?代表的な投資方法を紹介
- 少額から始められる不動産投資4選
- 不動産投資は30代から始めるべき?メリットや注意点について解説
- 初めて不動産投資をする際に気をつけることとは?
- コラムに関する注意事項 -
本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。
当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づきますが、その正確性や確実性を保証するものではありません。
外部執筆者の方に本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。
本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。