市街化区域とは?概要・特徴をわかりやすく解説

不動産投資を成功させるためには、その物件があるエリアの発展性を見極めることが非常に重要です。その判断として、不動産が市街化区域にあるかどうかは、ひとつの要素となります。

本コラムでは、市街化区域の意義や、メリット・デメリットを詳しく紹介します。また、不動産投資という観点においての市街化区域の考え方や、市街化区域の調べ方も紹介します。

市街化区域とは?|都市計画法による指定区域のひとつ

市街化区域とは?概要・特徴をわかりやすく解説
(画像:PIXTA)

都市の健全な発展や自然環境の保護などを目的として、都市計画法に基づいて都道府県知事や国土交通大臣が指定した区域を都市計画区域といいます。

都市計画区域は、下記のイラストのように、市街化区域、農地や緑地を保護することが重視される市街化調整区域、市街化区域でも市街化調整区域でもない非線引き区域に分かれます。

市街化区域とは?概要・特徴をわかりやすく解説

このうち市街化区域は、都市計画法の中で「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と定義されています。つまり、すでに都市として発展している地域や、近い将来に計画的に都市化を進めていく地域を指しています

この区域では、住宅・店舗・オフィスビルなどの建築が積極的に認められているほか、道路・上下水道・公共施設などのインフラ整備も優先的に進められることとなっています。

市街化区域内では、都市計画法によって建物の高さや用途に制限を設けるため、さらに細かく用途地域が定められています。用途地域とは、住居系、商業系、工業系など土地の使用目的を13種類に分け、エリアごとに適した土地利用が指定されます。これにより、無秩序な開発を防ぎ、周辺環境と調和した街づくりを可能としています。

市街化区域と市街化調整区域の違い

市街化区域のほかに市街化調整区域という言葉がありますが、それぞれ異なる目的をもって設定されています。

先ほど解説したように、市街化区域はすでに発展している・または今後10年以内に優先的かつ計画的に市街化を推進する地域であり、新しい建物の建設も積極的に行われます。

一方、市街化調整区域では、農地や緑地を保護することが重視され、新しい建物の建築には厳しい制限が設けられています。農業用施設や既存の建物の建て替えなど、限られた場合を除いて新規の建築行為は原則として認められません。

このように、街の整備が進んでいる、もしくは今後進んでいく「市街化区域」と、街の整備を抑制する「市街化調整区域」では、それぞれ異なる重要な役割を担っているのです。

市街化調整区域の特徴や、メリット・デメリットについては、下記の記事でも詳しく紹介しています。

【関連記事】市街化調整区域は買わない方がいい?メリット・デメリットを解説

市街化区域の種類(用途地域)

市街化区域には、全部で13種類の用途地域が定められています。これらの用途地域は、それぞれ異なる特徴や建築制限が定められており、地域の目的に応じて使い分けがなされています。

用途地域の一覧(全13種類)

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 田園住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域

例えば、低層住居専用地域は良好な住環境を守るために建物の高さや用途が厳しく制限されているのに対し、商業地域ではさまざまな商業施設の建築が可能です。また、工業地域では工場の建設が認められる一方で、住宅地域では工場の建設が制限されるなど、それぞれの地域特性に合わせた規制が設けられています。

用途地域ごとの具体的な建築制限や特徴については、下記の記事で詳しく紹介しています。

【関連記事】都市計画法の用途地域とは?13種類の一覧・特徴と制限をわかりやすく解説

市街化区域のメリット

市街化区域とは?概要・特徴をわかりやすく解説
(画像:PIXTA)

市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域なので、今後も都市としての発展が計画された地域であることから、不動産投資の観点からも魅力の高い地域といえます。ここからは、市街化区域の不動産を購入するメリットを詳しく紹介します。

  • 新しく建物を建てやすい
  • 生活インフラが整っている
  • 売却や賃貸に有利
  • 将来的な値上がりが期待できる

新しく建物を建てやすい

市街化区域がもつ大きなメリットとして、新しく建物を建てやすいという点が挙げられます。

工業地域など特定の用途制限がかかっている区域を除けば、原則として誰でも住宅を建てることができます。市街化調整区域では農地の保護が優先され、新規建築には厳しい制限がかかりますが、市街化区域ではそのような制約が少なく、比較的自由に建築計画を進めることが可能です。

ただし、用途地域ごとに建物の高さや用途には一定の制限があるため、建築計画を立てる際には、その地域の建築制限を事前に確認することが重要です。

生活インフラが整っている

市街化区域は住居として適した地域です。すでに公共交通機関や道路、電気、上下水道などのインフラが整備されている、もしくはこれから整備されるため、土地を購入してから実際に建物を建てるまでの手続きもスムーズに進めやすいという特徴があります。

売却や賃貸に有利

市街化区域の不動産は、物件を売却したり賃貸物件として貸し出したりする際に比較的有利となります。

都市部に位置しており、通勤・通学に便利であることから居住用不動産として人気があるほか、事業用不動産としても需要が高いため、賃貸物件として貸し出す際に入居者を見つけやすく、賃料収入も高い傾向にあります。

また、不動産投資の対象としても人気の高いエリアにあるため売却時に買い手を見つけやすく、比較的高額で売却できる可能性があります。

ただし、その分取得価格も高めとなるため、投資判断の際には慎重なシミュレーションが必要です。

将来的な値上がりが期待できる

市街化区域は、おおむね10年以内に優先的に開発が行われることが計画されていることから、区域内の不動産には将来的な値上がりが期待できるというメリットがあります。

例えば、新しい道路の整備や公共施設の建設、商業施設の進出などにより、地価が高まることが予想されるほか、都市としての発展が進めば、人口集中に伴い住宅需要が増加することも考えられます。

もっとも、不動産価値は経済情勢や地域の発展状況によって変動するため、将来の値上がりを確実なものとして判断するのではなく、総合的な投資判断の一要素として検討するようにしましょう。

市街化区域のデメリット

市街化区域とは?概要・特徴をわかりやすく解説
(画像:PIXTA)

市街化区域の物件は投資先として魅力が高い一方で、いくつか注意しなければならない点もあります。以下に紹介する、市街化区域が抱えるデメリットやリスクをしっかりと把握したうえで、冷静に判断するようにしましょう。

  • 不動産価格は高め
  • 用途地域による制限を受ける
  • 敷地面積が小さくなる
  • 都市計画税がかかる

不動産価格は高め

市街化区域の不動産は、利便性の高さゆえに需要も高く、物件の取得価格が比較的高くなる傾向にあります。特に、交通の便がいいエリアや商業施設が整った地域では地価が高騰しやすく、物件の取得コストに見合った収益を上げられない可能性もあります。

また、新築住宅を建てる場合、多くの市街化区域は防火地域や準防火地域に指定されているため、防火基準を満たす建材の使用が必要となり建築コストが上昇する点にも注意が必要です。

市街化区域の物件を取得する際には、購入後の収益性や資産価値を慎重に見極めることが重要です。

用途地域による制限を受ける

市街化区域内では、用途地域ごとに様々な建築制限が設けられています。

例えば、第一種低層住居専用地域では建物の高さが制限され、3階建て以上の建物を建てることができません。また、建物の用途についても厳しい制限があり、住宅以外の建築物の建設が制限されることがあります。

このような制限は、良好な住環境を保護するために設けられていますが、土地の所有者にとっては自由な土地活用を妨げることがあります。建物を建築したり増築したりする際には、必ずその地域の用途制限を確認し、計画が規制に適合しているかを確認する必要があります。

制限に違反した建築を行うと、是正命令や工事の中止命令を受ける可能性もあるため、事前の確認が極めて重要です。

用途地域ごとの具体的な建築制限については、下記の記事で詳しく紹介しています。

【関連記事】都市計画法の用途地域とは?13種類の一覧・特徴と制限をわかりやすく解説

敷地面積が小さくなる

自治体ごとに最低敷地面積が定められているものの、市街化調整区域と比べ流通する土地の面積は小さい傾向にあります。

都市計画税がかかる

市街化区域内の不動産には、固定資産税に加えて都市計画税が課税されます。これは、道路や下水道などの都市計画事業の費用を賄うための目的税です。土地と建物のいずれも課税対象となり、不動産所有者にとって定期的な支出となります。

税率は自治体によって異なりますが、課税評価額の0.3%を上限として定められています。この課税評価額は、実質的には固定資産税評価額と同じものが使用されることが一般的です。

もっとも、この税金は地域のインフラ整備や住環境の向上に使用されるため、長期的には資産価値の維持向上にもつながる投資と考えることも可能です。

不動産投資における市街化区域物件の考え方

不動産投資の観点からみると、市街化区域の物件は有力な投資先の一つとして検討する価値が高いといえます。その理由は、すでに都市としての機能が整っているか、もしくは今後10年以内に計画的な整備が予定されている地域であるため、安定した需要を見込むことができるからです。

特に、都市部に近い市街化区域では、通勤・通学の利便性が高く、商業施設や公共施設へのアクセスも良好なため、居住用不動産としての需要が継続的に期待できます。また、今後のインフラ整備や再開発により、さらなる発展が見込まれる地域も多く存在するため、将来的な資産価値の向上にも期待ができます。

ただし、市街化区域の不動産は取得価格が比較的高額になる傾向があるため、投資判断には慎重な検討が必要です。そのため、地域ごとの将来性や、用途地域による建築制限、都市計画税などの維持費用を含めた総合的な分析が重要となります。

不動産投資を検討する際には、不動産投資の専門家や税理士などの専門家に相談しながら、物件選定や投資計画を進めていくことをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、リスクを抑えながら、市街化区域物件の持つ投資機会を最大限に活用することができるでしょう。

市街化区域の調べ方

市街化区域を調べる最も確実な方法として、対象地域の建築局や都市計画課に直接問い合わせる方法が挙げられます。これらの機関では、都市計画に関する最新情報を把握しており、個別の土地が市街化区域に指定されているかどうかを迅速に確認できます。具体的な住所を伝えることで、用途地域や建築制限に関する詳細な情報も提供してもらえます。また、建築計画や土地利用を進める際のアドバイスを受けることも可能です。

さらに、多くの自治体では都市計画マップを公開しています。このマップは、インターネット上で閲覧できる場合が多く、市街化区域や市街化調整区域の区分を地図上で視覚的に確認できます。一部の自治体では、土地ごとの用途地域や建築制限に関する情報も併せて表示されるため、不動産投資に活用されています。

例えば東京都新宿区では、『新宿区みんなのGIS』というサービスにより、住所または地図から都市計画情報を確認することが可能です。「(自治体名)都市計画マップ」などで検索すると、他の地域でも同様のサイトがみつかります。

ただし、公開されているマップでは最新の変更や具体的な制約が反映されていない場合もあるため、必ず二次チェックとして自治体への直接確認を行いましょう。都市計画に関する情報は、不動産購入や投資において重要な判断材料となるため、時間をかけて慎重に調べることが大切です。

(提供:manabu不動産投資

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