大会への参加理由
ー 最初にこの大会に参加しようと思ったきっかけは何ですか?
株式会社esa代表取締役・黒川 周子 氏(以下、社名・氏名略) 実は、最初にこの大会の存在を教えていただいたのは大和証券の方でした。彼らは私たちの会社が面白いと言ってくれていて、スタートアップの大会があるから挑戦してみたらいいんじゃないかと提案していただいたのです。ただ、それはあくまできっかけで、今回本当にありがたかったのは、我々の経営陣のバックグラウンドが海外に半分出ていて、グローバルを目指している企業としてスタートアップワールドカップに参加できたことです。
ーそれで大会に参加されてみてどうでしたか?反響などはいかがでしたか?
黒川 今回の大会には素晴らしい技術や情熱を持った方々が集まっていて、最初の数名のプレゼンを聞いただけで心が折れそうになりました。待合室では、皆様がIPO直前だとか、10期目だとか話していて、私は正直、自分がここで話していいのかなと思いました。しかし、京都という場所の特性や京都大学の中で開催されたこともあり、温かく真剣に見てくださる方々が多く、後押しをしていただいたように感じました。結果としては、2位という形で評価していただいて、本当にありがたいと思っています。
ー今後の展望について教えていただけますか?
黒川 グローバルな視点を持って進んでいきたいと思っていますので、これからもっと海外にも出ていこうと考えています。実際、スタートアップワールドカップを見ていただいたJETRO(日本貿易振興機構)の方や経済産業省の方から、グローバルピッチのようなものがあると教えていただいて、お声がけいただいたりしています。
ーそれは素晴らしいですね。今回の大会が、御社の今後の展開にとって良いきっかけとなっているのですね。
黒川そうですね。本当にありがたい大会だったと感じています。
自社の強み
ー御社のピッチは、独自性が十分に伝わり、2位という結果になりました。これから、御社の事業をもっと伸ばすために、どのような強みや独自性を活かしていくつもりですか?
黒川 まず、私たちが強いと思っているのは、再生樹脂を作る機械の開発です。プラスチックという元材料にはたくさんの種類がありますが、そのどれにでも対応できるような機械を作るノウハウが私たちにはあります。これが一番の強みだと思います。お客様のニーズに合わせた技術開発ができる点も強みですね。
また、人材面でも多様性があります。取締役には台湾人がおり、社員にもミャンマー出身の方がいます。日本人メンバーも多くいますが、半分以上が海外で住んでいる経験があるので、グローバルな視点を持っています。スタートアップの世界でネガティブを感じずに進んでいける推進力があるメンバーだと思っています。
ー技術力とチーム力が強みですね。それに、御社のバックボーンにも興味があります。設立してから2年ほど経ちますが、どのような経緯で設立されたのでしょうか?
黒川 設立は2年前ですが、それぞれが各自で事業をやっていましたので、経営という意味では恐怖心はあまりありませんでした。技術の部分で言いますと、取締役の方がもともとプラスチック加工機械を作っていた家業を継いでいました。私たちの会社では、複合プラスチックのマテリアルリサイクルができる機械を開発しましたが、それ以前に単一プラスチック関連機械を作る技術を持っていました。その蓄積を応用している形なので、私たちは安心して起業できました。
ぶつかった壁
ー実際にここまで2年間で、創業されてからの壁はどのようなものでしたか?
黒川 やはり、機械にかかる初期投資が大きいです。倉庫や工場などのハード面を揃えないといけないのがディープテック領域の特徴です。この面で非常に苦労しました。銀行からの融資は受けられませんでしたが、最初にVCの方から投資をしていただけたおかげでスタートできました。資金調達は本当に大変でした。
ー複合プラスチックのリサイクルに関しては、どのような取り組みがありますか?
黒川 複合プラスチックをリサイクルして再生樹脂として再利用する市場は、まだ開拓されていない領域です。いろんな企業と取り組みを進めていて、実際に業務提携も少し決まっています。ただ、ここまでたどり着くには、開発に時間をかける必要がありました。その点では、体力面での苦労もありました。
今後の展望/抱負
ー今後の展望についてお伺いしたいと思います。欧米はリサイクル推進が非常に進んでいて、国や国連による法律でリサイクルが義務付けられている時代ですが、日本はどうでしょうか?
黒川 確かに、欧米はリサイクルが進んでおり、法律や国連によってもうみんなやらなければいけないという状況です。しかし、日本はリサイクルや環境面において残念ながら遅れを取っているところがあり、市場開拓がまだ十分になされていないという課題があります。
ただ、最近では法律も変わりつつあり、リサイクルを事業として成り立たせながら、良い未来を作っていこうという意識が日本でも高まっています。私たちはこのタイミングで起業したということを良いタイミングだと捉えており、今後も成長していくことを期待しています。
ーそれでは、今後の成長を加速させるために重要なポイントは何だと思いますか?
黒川 私たちの事業は、川上のお客様から廃棄プラスチックを回収し、それを原料として再生プラスチックを作り、川下のお客様にその再生プラスチックを原料として使っていただくというものです。この際、受け入れ口と出口のバランスが非常に重要で、回収したいお客様が多くいる一方で、再生プラスチックをどのように使っていくのかという出口の部分をうまく調和させないと意味がありません。
そのため、我々はさまざまな企業と協力しながら、市場に浸透させていくことを目指しています。今後の我々の活動にご注目いただけると幸いです。
ー本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
- 氏名
- 黒川 周子(くろかわ ちかこ)
- 社名
- 株式会社esa
- 役職
- 代表取締役