日本生命保険が海外事業で巻き返しの姿勢を鮮明にしている。昨年12月、生損保を問わず日本の保険会社として最大規模となる買収を発表した。約1兆2000億円の巨費を投じる。一方で、人口減で生保市場が縮小に向かう国内にあっては介護などの非生保事業の拡大にアクセルを踏み込んでいるが、その手立てはやはりM&Aだ。
レゾリューションを1.2兆円で買収
日本生命が買収するのは米国や豪州で生保事業を展開するレゾリューションライフ(本社・バミューダ諸島)。現在約23%の株式を保有するが、残る株式を約82億ドル(約1兆2000億円)で追加取得し、完全子会社化する。
買収完了は2025年下期(7~12月)を見込む。日本生命は2019年以降、レゾリューションライフに段階的に出資しており、累計投資額は1兆4200億円に上る。
レゾリューションライフは他社が契約した既保険(生命保険、年金保険)受託と再保険を経営の両輪とし、運用資産残高は約12兆円、保険契約数は約430万件。とくに既保険受託では世界のトップクラスという。
巨額買収の狙いは何か。第一は世界最大で今後も安定的な成長が見込まれる米国保険市場での事業拡大に向け、強固な足掛かりを築くことにある。実は、日本生命として米国での生保買収は今回が初めてとなる。
もう一つは豪州事業の一層の強化。2016年に買収した現地生保MLCについて、残る20%の株式を買い取り、完全子会社化したうえで、レゾリューションライフの豪州持ち株会社との経営統合を予定する。豪州生保市場でトップ3を維持し、隣国ニュージーランドでも攻勢を強める。
米コアブリッジには5800億円を出資
さらに、レゾリューションライフの買収を発表した昨年12月には、米国の別の大手生保であるコアブリッジに5800億円を出資した。これにより21%の株式を取得し、持ち分法適用関連会社とした。
日本生命の2024年3月期の基礎利益(本業のもうけを示す)は7640億円で、このうち海外事業のウエートは4%(約340億円)にとどまる。海外事業で先行する第一生命ホールディングス(HD)はおよそ30%に達しており、大きく見劣りするのが実情だ。
レゾリューションライフの買収が完了すれば、新たに加わるコアブリッジなどと合わせて、グループの基礎利益に占める海外事業の割合は20%(約1800億円)に上昇する見通しだ。
米国事業で水を開けられる
大手生保は国内市場の成熟化を見据え、2010年代半ばから海外での大型M&Aを活発化してきた。
なかでも主戦場の米国生保をめぐっては、第一生命HDが2015年に約5800億円でプロテクティブを、翌年16年には明治安田生命保険がスタンコープで約6200億円、住友生命保険がシメトラを約4600億円で矢継ぎ早に傘下に収めた。
損保でも同時期の2015年、東京海上ホールディングスが9400億円を投じ、米HCCインシュアランスを買収した。こうした中、米国事業で日本生命が水を開けられる格好になっていた。
もちろん、日本生命が手をこまねいていたわけでなない。2016年には豪州生保のMLCを約2000億円で買収した。タイやインドネシアなどでの出資はあったが、本格的な海外生保の買収はこれが初めてだった。
国内では2015年に三井生命(現・大樹生命)を、2017年に旧平和生命保険を前身として当時、外資傘下だったマスミューチュアル生命保険(現ニッセイ・ウェルネス生命保険)を子会社化。さらに2019年にはネット生命のはなさく生命保険を開業した。