豪MLC買収で、その後のM&Aが停滞

ところが、豪州生保MLCで誤算が生じた。同社の資産査定が甘かったことや、現地の規制強化などで、買収後しばらく赤字が続き、3度にわたる合計850億円の追加支援を強いられるなど苦戦。買収5年後の2021年にようやく黒字回復を果たした。

こうしてMLCの経営が軌道に乗ったことで、停滞を余儀なくされていた本格的なM&Aも再出動のタイミングをうかがうだけとなっていた。

昨年春に策定した中期経営計画(2024年4月~27年3月)では3年間で海外を中心に2兆円超の成長投資を行う方針を打ち出した。

再開初弾、介護のニチイを傘下に

その初弾となったのが介護最大手のニチイ学館を傘下に持つニチイホールディングス(東京都千代田区)の買収。金額は約2100億円。日本生命の国内M&Aとして過去最大で、昨年6月に買収を完了した。狙いは非生保事業の拡大による収益源の多様化だ。

ニチイHDは2020年にMBO(経営陣による買収)で株式を非公開化し、米投資ファンドのベインキャピタルの傘下で経営改革を進めていた。

日本生命は2035年のグループ基礎利益について、現在の2倍(約1兆4000億円)に拡大することを目指している。この中で、海外保険をはじめ、アセットマネジメント(資産運用)、ヘルスケア、介護、保育関連などの国内保険事業以外の分野で約4000億円を賄う姿を想定している。

現中計で設定した2兆円規模の投資枠はニチイHD、レゾリューションライフの買収とコアブリッジへの出資で1年目にして早くも使い切ることになる。今後、投資枠の追加・拡充に動くのか、要ウオッチとなりそうだ。

◎日本生命保険:主な沿革

出来事
1989 創業100周年
1996 ニッセイ損害保険(現あいおいニッセイ同和損害保険)を設立
2003 中国に合弁で広電日生人寿保険(現・長人寿保険)を設立
2004 バンコク・ライフ(タイ)を関連会社化
2011 リライアンス・ライフ(インド、現リライアンス・ニッポンライフ・インシュアランス)を関連会社化
2014 セクイス・ライフ(インドネシア)を関連会社化
2015 三井生命保険(現・大樹生命)を子会社化
2016 オーストラリアのMLCライフインシュアランスを子会社化
2017 米資産運用会社TCWを関連会社化
2018 マスミューチュアル生命保険(現ニッセイ・ウェルネス生命保険)を子会社化
2019 はなさく生命保険を開業
グランド・ガーディアン・ライフ・インシュアランス(ミャンマー、現グランド・ガーディアン・ニッポンライフ・インシュアランス)を関連会社化
2022 ニッセイプラス少額短期保険を開業
2023 米生保のレゾリューションライフを関連会社化
2024 6月、介護大手のニチイホールディングスを子会社化
12月、米生保のコアブリッジを関連会社化
12月、米レゾリューションライフの買収を発表

文:M&A Online