富士ソフト、物言う株主と決別
そもそも富士ソフトがKKRのTOBで非公開化するのは、2年に及ぶ物言う株主との対立にピリオドを打つのが目的だった。ところが、ベインの参戦予告でTOBは想定外のロングランとなったのだ。
23%余りの株式を持つ筆頭株主のシンガポール投資ファンドの3Dインベストメント・パートナーズは物言う株主として知られ、富士ソフトに非公開を含めた企業価値向上策を要求。また、米投資ファンドで同じく物言う株主のファラロン・キャピタル・マネジメントも約9%の株式を保有していた。
そうした中、富士ソフトが選んだのが外部資本をスポンサーとして非公開化し、経営のフリーハンドを取り戻すことだった。3D、ファラロンの2社は第1回TOBに保有するすべて株式を応募した。
ベインに誤算? 真逆の結果に
一方、ベインにも誤算があったと言わざるを得ない。TOB合戦に発展した場合、後から名乗りを上げた方が断然有利なのは最近の例でも明らかだが、真逆の結果となったからだ。
昨年を振り返れば、物流企業のC&Fロジホールディングスの争奪戦では好条件を提示した佐川急便のSGホールディングスがTOBで先行していたAZ‐COM丸和ホールディングスを下した。福利厚生大手のベネフィット・ワンをめぐる一件もしかりで、途中参戦した第一生命ホールディングスがエムスリーをかわし買収を成功させた。
富士ソフトは昨年12月、ベインの9600円でのTOB提案について、反対意見を表明した。反対する場合、株主共同の利益の観点から当該買付価格を上回る株価の実現につながる企業価値向上策を示す必要がある。今回のケースでは双方による引き上げの応酬の末、KKRが最終的にベインを上回る買付価格を提示したことが決定打になった形だ。
◎富士ソフトTOBをめぐるKKRとベインキャピタルの動き

(画像=「M&A Online」より引用)
文:M&A Online