本記事は、原マサヒコ氏の著書『どこでも通用する人は入社1年目に何をしているのか』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

伝わらないのではなくて “伝え方” が悪い
なぜ伝わらないのか
どの会社に行ったとしても、仕事は1人で行うものではなく組織やチームで行います。そこで重要になるのは、やはりコミュニケーションです。
そのため、“コミュニケーション・ミス”はどの会社でも改善するために非常に努力をしています。
コミュニケーション・ミスについては、たとえば「指示を出したのに間違って認識されている」など、さまざまなミスの例が挙げられると思います。こういったミスは仕事のクオリティ低下や、大きな時間のロスを招いてしまうのです。ですから、皆さんにはコミュニケーションにおいて、まずは“伝え方”にこだわってほしいと思います。
よく聞くのが「伝えたはずなのに伝わっていない」という言葉です。仕事に限らず、相手にこちらの意図を伝えたからといって、それだけで100%期待した結果が返ってくるとは限りません。“伝えた”ということと“伝わった”ということには、大きな違いがあるのです。
これを理解していないと、「ちゃんと伝えたのに上司が全然わかってくれない」とか「メールで伝えたのに、内容を全然理解してくれない」などといった受け手への責任転嫁をしてしまいます。
ここで考えなければいけないのは、本当に受け手が悪いのかどうか、ということです。
これまで多くの人にコミュニケーションの方法を指導してきましたが、コミュニケーション・ミスは発信者側に責任がある場合がほとんどです。あなたの伝え方は、誰が聞いても、誰が読んでも、100%同じように理解できるか、よく確認してみましょう。
相手に伝える時に注意したい3つのポイントでは、上司や先輩にしっかりと伝わる“伝え方”はあるのでしょうか。ここでは、押さえておきたい伝え方のポイントを3つ書きます。
(1)伝えるべきことは短く
人というのは余計な情報を足してしまいがちです。会議でもやたら話の長い人がいたり、長いメールや分厚い資料を見かけたことはありませんか? こういう人は、自分の言いたいことや持っている情報をすべて発信しようとして、枝葉の情報までも伝えようとするのです。
このような情報発信の仕方は相手にも迷惑でしょう。なぜなら、過剰な情報が一度に提供されると、相手は重要なポイントを見失いやすくなるからです。情報が多すぎて、何が本当に重要なのかを判断しにくくなってしまうのです。また、人間の集中力には限界がありますので、重要ではない情報が多いと聞き手の注意力が散漫にもなってしまいます。
ですから、ほかの人に何かを伝える時はとにかく短くすること。最低限、何を伝えるべきかにフォーカスして、一番伝えたいメッセージに沿って情報の選択と集中をしましょう。
(2)結論から話す
結論から話をしていくだけで、上司への伝わり方が格段に良くなります。結論を先に示すと、話の目的や方向性がすぐに伝わるためです。これにより、相手は詳細を聞く際にもどこがポイントなのかを意識しながら話を聞くことができるのです。
世界的にも、結論から話して論理的に物事を伝えるのは共通のビジネスマナーだといえます。たとえば、「午前中の契約の件、どうなった?」と上司に聞かれて、次のように答える新人がいたとします。
「はい、まず契約書の件についてA先輩に連絡をして、そのあとお客さま担当のBさんに相談をしたんですが、そこでお客さまからご意見をいただきましたので変更をしましたら、今度は営業部から契約書への意見をいただきまして、それからCさんの……」
これでは時間がかかりすぎてしまいますよね。上司は通常、部下の話だけでなく、多くの業務や意思決定に追われていて忙しいものです。こんな伝え方をしてしまうと上司は、「もういいや」とほかの人に確認しに行くかもしれませんし、「結論を言え!」と怒り出すかもしれません。
それに対して「人に聞いておいてなんだよ」「うわ、怒られた。うぜえ」などと文句を言うのは、誰が見ても間違っています。
このような場合は、「結論から申し上げます」を口グセにしてしまうのが良いと思います。つなげるとこうなります。
「結論から申し上げますと、●●●でした。理由としては、●●●であるためです」
「結論から申し上げます……」と口にすると、「結論を言わなければならない」と頭が働きます。そして結論を口にすると、会話の定型として「理由としては……」と続けて言いたくなるのです。
(3)イメージがしやすくなる資料をつける
何かを伝える時、多くの情報量をいかに正確に伝えられるかを考えてみましょう。
最近は、YouTubeやXを始めとしたSNSなどでさまざまな情報を得ている人も多いと思いますが、文字情報よりも画像、画像よりも映像のほうが格段に情報量は多くなります。
スマホで写真を見せながら伝えてみる。ホワイトボードがあれば、絵を描きながら伝えてみる。関連する資料があれば、それを見せながら伝えてみる。言葉だけではなく、ほかのものも使ってイメージを補完できないかを考えるのです。
人は受け取った情報を頭のなかでイメージします。ここで相手が間違ったイメージのし方をしてしまうと、コミュニケーション・ミスが発生してしまうのです。ですから、ミスを回避するためにも、最初からできる限りイメージしやすい形で伝えるようにすると良いでしょう。
伝える側がこのような努力をせずに「伝えているのにわかってくれない」と愚痴をこぼしてしまうのは、他責思考であり自分の成長につながりません。「どうしたら伝わるだろうか」「もっとわかりやすく伝える方法はないか」と考えて、なんらかの工夫をこらしていくのも、皆さんの仕事であるということを理解しましょう。

1996年、神奈川トヨタ自動車株式会社に現場メカニックとして入社。5,000台もの自動車修理に携わり、技術力を競う「技能オリンピック」で最年少優勝に輝く。さらに、カイゼンのアイデアを競う「アイデアツールコンテスト」でも2年連続全国大会出場を果たすなど活躍。
活動の場をIT業界に変えると、PCサポートを担当したデルコンピュータでは「5年連続顧客満足度NO.1」に貢献。インターネットベンチャーやフリーランスなどの経験を経て2019年にマーケティング会社「プラス・ドライブ」を設立し、現在は多くのクライアント先に対して付加価値を提供している。
また、全国から講演依頼を年間で50回以上受け、「トヨタの現場ノウハウ」や「若手のキャリア構築」について講演することをライフワークとしている。著書に、『人生で大切なことはすべてプラスドライバーが教えてくれた』(経済界)、『どんな仕事でも必ず成果が出せるトヨタの自分で考える力』(ダイヤモンド社)、『ACTION! トヨタの現場の「やりきる力」』(プレジデント社)などがある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
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