この記事は2025年4月25日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「不安定な経済環境下で堅調な需要が見込まれる賃貸マンション」を一部編集し、転載したものです。


不安定な経済環境下で堅調な需要が見込まれる賃貸マンション
(画像=peia/stock.adobe.com)

二つの要因が不動産投資市場の不確実性を増幅させている。一つ目は、日本銀行の植田和男総裁の下で着々と進行する金融政策の正常化。二つ目は、足元の米国の関税政策による景気後退懸念の高まりである。

その中で賃貸マンションは、キャップレートの低下が続いており、多くの投資を集めている(図表)。こうした不透明な時期でも、賃貸マンションは、職住近接を求める動き(特に東京都心部)や、賃金上昇の浸透を背景とした賃料の上振れへの期待により投資家からの人気が継続するとみられる。日銀の利上げにより中期的には金利が上昇する場合でも、キャップレートの基本公式(注)に基づけば、その影響は一定の賃料収益の成長で相殺される。

当社が行った賃貸住宅市場関係者へのアンケート調査(2024年12月時点)に基づき、今後1年間でシングルタイプが4%、ファミリータイプが5%の賃料上昇を見込む。ファミリータイプは上昇率がやや高いが、その背景には住宅価格上昇に伴う分譲マンションからの需要シフトがある。

さらに、賃貸マンションではさまざまな需要が生じており、賃料引き上げ施策の選択肢も多い。いくつか例を挙げると、改装による賃料引き上げでは一般的な改装に加え、ターゲットを絞ったコンセプトマンション(防音マンション、ペット共生マンション等)、民泊施設等へのコンバージョンなどが挙げられる。エリア選択でも、パワーカップルやファミリー、富裕層の需要を捉えられる都心への投資集中のほか、タイムリーに賃料相場が反映される定期借家契約の導入を進めるアセットマネジャーの動きも見られる。

米国の通商施策次第では、世界的な景気後退が起こると懸念されている。それ故、今後、リスクプレミアムが上昇していく可能性がある。

こうした投資環境下で不動産投資市場においては、マンション賃料の下方硬直性が投資家に評価され得る。リーマンショック後(08~13年)には、オフィス賃料(東京都心5区)は27%低下した一方、マンション賃料(東京23区・シングルタイプ)は7%下落にとどまった。トランプ政権の関税政策で不確実性が増すほど、賃貸マンション需要の底堅さが際立つことになるだろう。

不安定な経済環境下で堅調な需要が見込まれる賃貸マンション
(画像=きんざいOnline)

三菱UFJ信託銀行 不動産コンサルティング部 ジュニアフェロー/舩窪 芳和
週刊金融財政事情 2025年4月29日号