高金利通貨の状況を動画で解説
動画配信期間:公開日から2週間
高金利通貨「メキシコペソ・南アフリカランド・トルコリラ」の状況をギュッと要約
## メキシコペソの状況
### 貿易・経済状況
- 貿易戦争の中でもメキシコは米国と密接かつ頻繁な交渉を継続している
- 関税のデメリットが認識され、関税開始時期が段階的に延期されている傾向にある
- 昨年第4四半期はマイナス成長だったが、今年は前期比2%増でなんとかリセッションを免れた
- しかし製造業PMIや企業信頼感指数は悪化傾向を示している
- 国際機関(特にIMF)はメキシコの成長見通しを大胆に下方修正し、マイナス成長を予測するところも出てきた
### インフレと金融政策
- 消費者物価は目標の4%以下を維持していたが、最近上昇傾向にある
- 5月16日に発表予定の消費者物価指数は3.9%と予想されている
- 現状のままであれば5月16日に0.5%の利下げが予想されるが、消費者物価が4%を超えると利下げ機運が弱まる可能性がある
- 通貨ペソは「強くもなく弱くもなく」中間的なポジションを維持している
### 株式市場と投資環境
- メキシコの株価は上昇傾向にあり、これは関税条件緩和への期待から来ている
- 米国企業の中にはメキシコを製造拠点として活用し続ける意向を持つところがある
- メキシコから海外への輸出はアメリカへの直接輸入よりも関税の影響を受けにくいため、この点がメキシコにとって有利に働いている
### 政治情勢と米国との関係
- トランプ大統領はメキシコの麻薬マフィア対策として米軍派遣を提案したが、メキシコ大統領は明確に拒否
- この件でトランプ大統領の怒りを買っている状況
- 6月1日には司法制度改革に関連した第1回選挙が予定されている
- 去年から問題になっていた司法制度改革が適切に実施され、三権分立が確保される選挙となるかが注目されている
- 司法制度改革の懸念が過去のペソ売りの一因だった点も留意すべき
## 南アフリカランドの状況
### 最近の動向
- 4月に急落したが、5月はトップスタート(好調なスタート)を切っている
- 4月の下落要因は「内憂外患」と表現される国内政治問題と対外関係の悪化
### 国内政治(内憂)
- 去年6月から組成された連立政権内で不協和音が生じていた
- 民主同盟が土地収用法やVAT(付加価値税)引き上げに反対し、連立離脱の懸念が出ていた
- しかし与党側が折れてVAT引き上げを取り消したことで政治的危機は一時回避された
### 対米関係(外患)
- 土地収用法(白人から土地を取り上げる政策)をトランプ大統領が人種差別だと批判
- これに対しトランプ大統領は南アフリカへの経済援助停止を示唆
- 南アフリカがイスラエルを虐殺罪で地方裁判所に提訴したことがトランプ大統領の怒りを買った
- 駐米南ア大使がアメリカ政府を批判的に発言したことで国外追放される事態に発展
- これらの問題により米南ア関係が悪化し、貿易関係にも影響が出ている
### 経済的な支援要因
- 金・銀などの南ア特産鉱物(金、銀、プラチナ、パラジウム)価格の上昇が南ア経済とランドを支援
- 南アフリカは原油産出国ではないため、原油価格の下落は経済にとって有利に働く
- 内憂面での政治リスク軽減(VAT引き上げ撤回)とこれらの要因が5月の通貨回復に貢献
### 今後の注目点
- 来週は第1四半期の雇用統計発表が予定されており、経済状況を測る重要な指標となる
- 経済指標は今のところ特に強いものはなく、製造業PMIも弱い状況が続いている
## トルコリラの危機的状況
### 政治リスクの急激な高まり
- エルドアン大統領がトルコで最も人気のある政敵を逮捕
- これにより株・債券・通貨の「トリプル安」が発生、危機を招いた
### 当局の対応策
- トルコ財務省は市場介入や利上げで対応を試みている
- 5月3日には新たな対策を導入:
1. 外貨預金を受け入れた銀行の準備金比率を引き上げ
2. 輸出業者のドルやユーロからリラへの転換比率を引き上げ
- これらは「小手先の対策」と表現され、過去にも同様の対策が実施されたが効果は限定的だった
### インフレと金融政策
- 消費者物価は高止まりし、思うように下がっていない状況
- 中央銀行はインフレが下がらない限り引き締め政策を継続する方針
- トルコ財務大臣は年末までにインフレ率が10%程度に低下すると予測
- しかし同財務大臣は「いつも楽観的で結果が出ない方」と評されており、実現性は不透明
### 外貨準備の危機
- 外貨準備は従来1,000億ドル程度だったが、3月19日からの継続的な市場介入により
- 約500億ドルに半減した可能性が指摘されている
- 外貨準備が枯渇すると市場介入ができなくなる一方、利上げは景気悪化をもたらす
- この板挟み状態を回避するため、当局は外貨預金を抑制する対策を講じている
## 高金利通貨の全体状況比較
### 最近の相対的パフォーマンス
- 先週からは南アフリカランドが最も強い動きを示している
- メキシコペソは「まずまず」の安定した動きを維持
- トルコリラは「いつものように苦しい」状況が続いている
### 各通貨の特徴的リスク要因
- メキシコ:米国との関税問題、国内成長鈍化、司法制度改革の行方
- 南アフリカ:連立政権の安定性、対米関係の悪化、鉱物資源価格依存
- トルコ:政治リスクの高まり、高インフレの持続、外貨準備の急減
### 市場環境要因
- 貿易戦争による全般的なリスク回避姿勢が高金利通貨全体に影響
- 米国の政策(関税、経済制裁など)が各国に異なる影響を与えている
- 資源価格(金属、原油など)の変動が資源国通貨に与える影響の違い
- 各国の中央銀行政策(利下げ、利上げ)と市場介入の度合いの違い
## 結論
- 高金利通貨市場は一枚岩ではなく、各国の個別要因に基づいて動いている
- 南アフリカランドは国内政治リスク緩和と資源価格上昇で回復傾向
- メキシコペソは米国との関税交渉の進展次第だが、現状は安定的に推移
- トルコリラは政治リスク、経済問題、外貨準備減少の三重苦に直面し、最も厳しい状況にある
- 投資判断には各国の個別要因と市場環境の変化を総合的に考慮する必要
以上の分析から、高金利通貨投資は単純なキャリートレード(金利差だけを狙った取引)だけでなく、各国の政治経済情勢を十分に理解した上で行うべき状況。


●免責事項
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。