本記事は、菊地 正俊氏の著書『アクティビストが日本株市場を大きく動かす 外国人投資家の思考法と儲け方』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

アクティビストが日本株市場を大きく動かす 外国人投資家の思考法と儲け方
(画像=Nii Koo Nyan/stock.adobe.com)

母国の投資家が買わない資産は魅力がない

2024年12月4日の日経MJは、「2024年ヒット商品番付」で、大谷翔平選手の「50-50」を東の横綱、新NISAを西の横綱に選びました。2024年1~2月に外国人投資家の日本株買い越しが急増した背景には、日本の個人投資家が新NISAでいよいよ日本株を買い出すとの期待がありました。多くの外国人投資家は、母国の投資家が買わない資産は魅力がないと考えています。

2014年に導入されたNISAの年間投資枠は2023年までは120万円でしたが、2024年からは認定された投信だけに投資可能な「つみたて投資枠」120万円と、内外株式にも投資可能な「成長投資枠」の240万円に分けられた合計360万円に拡大されました。
前者はほとんど海外投信に投資されている一方、後者は日本株にも投資されていますが、正式なデータがないので内訳はわかりません。
金融庁のNISA利用状況調査によると、NISA口座数は2023年末2,125万口座→2024年末2,560万口座と、435万口座増えました。
すなわち、国民の約5人に1人がNISA口座を保有していることになります。2024年のNISAによる買付額は、「つみたて投資枠」が約5兆円、「成長投資枠」が約12.4兆円の合計約17.4兆円でした。NISA制度開始以来、2023年末まで10年間の買付合計額は35兆円、年平均3.5兆円だったので、NISAによる買付額は明らかに加速しました。
2024年12月27日には、2025年のNISAによる日本株買いが増えるとの期待を背景に、日経平均が前日比713円高の4万282円と、約5カ月ぶりに終値4万円台を回復しました。

NISAでは外国株投信のみならず、国内株にも投資

金融庁の公式統計では、NISAによる投資先がわからない一方、日本証券業協会が発表する証券会社10社ベースの統計では投資先がある程度明らかになります。
まず、口座開設件数は2024年に前年同期比1.5倍343万件に増えましたが、月次ベースでは1月の73万件から12月の14万件に減少しており、NISA口座を新規に開設する人が一服したことを示します。2024年のNISA買付額は、「つみたて投資枠」が前年同期比3.1倍の3.7兆円、「成長投資枠」が同4.1倍の9.1兆円、合計12.8兆円に増えました。
すなわち、NISA買付額のうち29%が「つみたて投資枠」、71%が「成長投資枠」でした。「成長投資枠」の買付額の58%が株式、42%が投信でした。「成長投資枠」の株式買付額の92%が国内株、外国株は8%でした。投信の内外比率は開示されていませんが、SBI証券の統計から、9割が外国株投信、1割が国内株投信と仮定します。

これらを合計すると、2024年のNISA買付額約13兆円のうち、約7兆円(買付額の53%)が外国株投信、約5兆円(同38%)が国内株、8,000億円(同6%)が国内株投信、4,000億円(同3%)が外国株に投資されたことになります。証券会社は個人投資家に外国株の売買も勧めていますが、NISAには素人的な投資家が多いため、外国株の直接取引は煩雑なので、外国株投信を通じて間接的に外国株に投資するのでしょう。

東証の投資部門別売買動向によると、個人投資家は2024年に国内株を現物で▲7兆円も売り越したため、日本証券業協会のNISAで国内株を5兆円買い付けたという統計とまったく逆の動きを示していますが、①東証では個人のデイトレーダーの売買が多い、②個人がIPOで株式を購入して市場で売った場合、売りだけがカウントされる、③上場企業のオーナーの保有株売却も売りだけがカウントされるので、両者の統計に整合性がないのは致し方ないでしょう。
一方、投資信託協会のデータによると、2024年に約10兆円の外国投信の資金増加がありました。
外国投信の資金増加とNISAによる外国株投信買付額の差は、NISA以外での外国株投信への投資もあることを鑑みれば、整合的な数字といえましょう。

新NISAで投信を保有している人が増加

日本証券業協会は2024年10月に、3年に一度の「証券投資に関する全国調査」を発表しました。2024年に投信を保有している人の割合は2021年との比較で10.1%→12.6%、株式を保有している人の割合は13.3%→14.1%とともに上昇しました。投信の保有比率が大きく高まったのは、新NISAの効果といえましょう。
同協会の別の調査は、有価証券保有者のうち新NISA口座開設者は59.3%でしたが、20~30代が76.9%と若い世代ほど新NISA口座を開設しました。
新NISA開始前後での行動変化で、最も多かったのは「資産形成についてより興味を持つようになった」で、「NISA口座での投資を始めた」や「資産形成について積極的に調べるようになった」が続きました。新NISAは若年層を中心に、金融リテラシーを高めるのに寄与したといえます。

金融商品の保有目的としては、将来・老後の生活資金が68%、将来の不測の事態への備えが34%、子供や孫の教育資金が24%の順でした。
NISAの無税枠を拡大するときに、野党から金持ち優遇との批判が一時出ましたが、この調査によると、有価証券(株式・投信・公社債)の保有額は100万~300万円未満の人が23%と最も多く、72%超が500万円未満だったため、NISA制度が決して金持ち優遇でないことが裏付けられます。

アクティビストが日本株市場を大きく動かす 外国人投資家の思考法と儲け方
菊地 正俊(きくち・まさとし)
1986年東京大学農学部卒業後、大和証券入社、大和総研、2000年にメリルリンチ日本証券を経て、2012年より現職。1991年米国コーネル大学よりMBA。日本証券アナリスト協会検定会員、CFA協会認定証券アナリスト。組織学会、金融学会、日本ファイナンス学会会員。日経ヴェリタス・ストラテジストランキング2017~2020年、2025年1位。
著書に『低PBR株の逆襲』『米国株投資の儲け方と発想法』『相場を大きく動かす「株価指数」の読み方・儲け方』、『日本株を動かす外国人投資家の思考法と投資戦略』(日本実業出版社)、『アクティビストの正体』(中央経済社)、『良い株主 悪い株主』(日本経済新聞出版社)などがある。
アクティビストが日本株市場を大きく動かす 外国人投資家の思考法と儲け方
  1. 外国人投資家の現状
  2. 日本のアクティビスト活動は第3次ブーム
  3. アクティビストの隆盛は続くのか
  4. 資本効率を重視した経営とは?
  5. 2024年からの新NISAで投資が急拡大
  6. 日本は再び偉大になれるのか
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