本記事は、村井 一雄氏の著書『僕らは、なにを武器に働けばいいのだろうか?』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

僕らは、なにを武器に働けばいいのだろうか?
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作業のやり方を伝える前に、部下に教えるべきこと

例えば入社して○カ月は△△を覚えてといった、会社員としてのスキルアップの道筋などは、会社ごとで決められていることが多いでしょう。
しかし、ただ単純にタスクを渡すだけでは、単なる作業を覚えるだけになってしまいます。
仕事に慣れるという意味ではいいと思うのですが、それよりもまずは、会社員として、どのように働いていけばいいのか。そこを共有し、踏まえた上で作業してもらうことで、仕事への理解が深まります

会社として、社員に求めているものがはっきりしているのであれば、それを説明するのもいいでしょう。
一人前の「プロ」と認められている人がどういう力を持っているのかを明確にすることで、具体的な目標が見えてきますし、意識しておくことで、働き方も変わってくるはずです。
部下と共有している基準があれば、部下がミスを犯したとしても、ダメな理由もよりはっきりして指導もしやすいのではないでしょうか。

もう1つ、どれくらいの期間で、どういう状態になってほしいのかを示してあげることも大切です。
新卒は当然ですし、中途で入った人も、その会社でやっていけるかどうかということには、誰しもが不安を持っています。
先の見えない道を歩むのはとても不安です。
その不安に押し潰されて、途中で挫折してしまい、会社を辞めてしまう人も少なくありません。

できるだけ明確に、あなたがどういう道をこれから歩んでいくのか。そして、その先にはどういう「あなた」が待っているのか。仕事ができるようになって得られる楽しさも含めて伝えてあげてください
そこでつづられた未来が、仕事に行き詰まったと感じたときの支えになってくれるに違いありません。
そしてなにより、あなたが仕事を楽しそうにこなす姿を見せてあげたり、話してあげたりすることです。
実際に目に映る光景や体験談以上に、説得力のあるものはないでしょう。
自分もこうなるために頑張るんだという気持ちが醸成されることで、日々の仕事へ打ち込む活力になるでしょう。

マネジメントこそ、1人で抱え込む必要はない

おそらく、多くの会社で新人が入ると、教育係という係に誰かしらが任命されて、その新人のマネジメントをすることになるでしょう。
直属の部下ができたことで、少し自分も会社の中で偉くなったように感じて、気合が入る人もいることでしょう。
ですが、人を育てるのは、大変です。
しかも、その頃は、多くの人が自分の仕事をたくさん抱えている状況ではないでしょうか。
あまりにも部下への指導ばかりに目がいくと、自分に負担ばかりがかかってしまいます。

まず考えたいのが、自分の仕事の効率化です。
時間がかかっているところをもっと短時間にすませるコツはないか、上司や同僚にアドバイスを求めることにも時間を使ってください。

また、切羽詰まっているときなどは、ここからここは自分の仕事の時間に使うということを決めておくのも1つの手です。
人間は、同時並行でいろいろとこなせるほど、器用にはできていません。
部下に指導して、次に自分の仕事をしてといったように交互にやっていると、視野が狭くなり、非常に効率が悪くなります。
とはいえ、部下がわからないことを質問できないがために、なにもできないということは避けなければなりません。

もし忙しすぎて質問などに答えられない日は、ほかの人に頼めばいいのです。
本人に許可をとった上で、「今日は、なにかわからないことがあったら○○さんに相談してくれる?」と頼めばいいだけです。
直属の部下という言葉に惑わされないでください。
確かに、あなたにこの人を育ててほしいという意思表示のためにそのような言葉を使っているのですが、本当に属しているのは会社です。
会社全員で育てていけばいいのですから、なにからなにまで、あなたの時間すべてを捨てなくてもいいのです。

もし部下が言うことをきかずに扱いに困っているなら、状況を話した上で、ほかの人から部下を諭してもらうのもいいでしょう。
同じようなことをほかの人から言われれば「あの人だけの意見じゃないんだな」と部下も納得しやすくなることもあるかもしれません。
どうか「自分1人で面倒を見なくちゃ」という考えは捨ててください

もう1つは、部下の作業スピードを把握し、終わりそうなタイミングで次の指示内容をまとめておくことです。
部下の作業スピードを把握していないと、自分が思っているより早く終わったときに、与えられる仕事がないので、部下を手持ちぶさたにさせてしまうことになります。

逆に、部下が思っているより遅い場合、次の準備をいつしようとか、ほかにもいろいろとやってほしいのにとモヤモヤします。
急に作業が速くなることはありませんし、成長速度は人それぞれ。速くなるようなアドバイスは必要ですが、自分は新人のときもっと速かったとか、他の子はもっと速いとかで、イライラするのは厳禁です。
部下のスピードを理解し、それぞれの速度で、ノンストップで仕事できるように調整することがマネジメントのコツだといえるでしょう。

僕らは、なにを武器に働けばいいのだろうか?
村井一雄(むらい・かずお)
株式会社中之島設計 代表取締役
1976年生まれ。京都府出身。
未経験で設備設計の世界に入り、28歳で独立。
その後、2016年に会社の名称を株式会社中之島設計に変更。
「気付かれない設備」をモットーに、ホテルや学校、駅、庁舎、商業施設などの設備設計を請け負っている。
また、中途採用が当たり前で、高齢化が進む業界の中で、業界の未来のために、未経験者の新卒を1から育てることをはじめ、教育体制の充実や人事制度の策定などにも力を入れている。
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