本記事は、村井 一雄氏の著書『僕らは、なにを武器に働けばいいのだろうか?』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

僕らは、なにを武器に働けばいいのだろうか?
(画像=Ticha/stock.adobe.com)

会社を選ぶときに、大切な指標となるものとは

368万、これなんの数字かわかりますか?
実はこれ、日本にある会社の数です(令和3年6月1日現在)。
これだけの数の会社があり、会社ごとにいろいろな特徴があります。
就職にしろ、転職にしろ、どこを選べばいいのか、人生の多くの時間を費やす場所を選ぶのですから、非常に重要なことです。

会社を選ぶ際に一番大切なことはなんなのか。
その会社でこれまで勉強してきたことが役に立つのか、やりたいことが叶えられる会社なのか、あるいは給料や福利厚生がしっかりしているのかとか、いろいろと、その人にとって基準があることでしょう。

しかし、就職は理想通りにいくとは限りません
給料や福利厚生に関しては、ある程度、就職情報で想定できるかもしれません。
ですが、
「勉強してきたことで会社に貢献できる」
「自分がやりたいことができそうだ」
と思って入っても、
「希望する部署に配属されたけど、雑用に追われてばかり」「思っていた仕事の内容とは違った」「違う部署に配属されて、やりたいことができない」
という声は、いろんなところから聞こえてきます。

残念ながら、実際に就く仕事の内容は、面接などによってすべてを理解することは不可能ですし、自分のやりたい職種に、希望通りに配属されないことだってあるのです。
だからこそ、私が仕事選びで最も大事にしてほしいと願うのが、その会社が自分を成長させてくれるかどうかということです。

たとえ、自分のイメージとはちょっと異なっていたり、希望とは異なる仕事に配属されたりしても、あなたを成長させるという会社なら、成長して得られる仕事の楽しさを味わえるからです。
それによって、やっている仕事が天職だと感じることもあるでしょうし、たとえ違っても成長して得られた力は、次の仕事にきっと役立つはずです。

では、そんな会社を見極めるにはどうすればいいのか。
1つ指標となるのが、人事評価制度です。

人事評価制度には、その会社がどういう社員を求めていくのか、どんな成長を求めているのかが表れています。
つまり、新入社員や若い社員のそれぞれの能力を平等に評価し、その人が持つ特別な力を見出し、それを育み、武器として発揮できるよう、その会社が社員をどう導いていくのかが表れています

人事評価の内容は、基本的には非開示でも問題ないので、全部教えてくれるところは少ないかもしれませんが、「御社の人事評価の中で、一番重きをおいているのはどこでしょうか」と面接で聞いてみてもよいでしょう。もし、教えてくれるようならば、会社として人を成長させるための道がしっかりしている会社の証だと私は考えています。
実際、私の会社でも、評価表の導入を2025年4月からはじめるのですが、これをつくる過程で、どういう社員になってほしいのか、一人前の「プロ」として業界でやっていくためにはなにが必要なのかが、よりはっきりと見えたように感じました。

そして、私は評価制度を全部、社内の人間に共有しようと考えています。
このような社員になってほしいという道しるべなのに、隠しても意味がありません。
もちろん、公開することにより、「そんなことで評価されるのか」とがっかりされたり「自分とは合わない」と思われたり、自分はこの評価基準は満たされていると思うのに給料に反映されていないと思われたりするなど、デメリットはあるでしょう。
しかし私はそれでも、こういう社員になってほしいと明言するメリットのほうが大きいと考えました。
おそらくデメリットがある中で公開している会社は、社員の成長に重きをおいている会社ではないかと推測するのです。
そして、人事評価制度を読んで、自分に合うと思えるならば、あなたの成長スピードが速い会社だと判断できるのです。

安定を考えるなら、ニッチなインフラ業界を狙え

会社を選ぶときに、将来的に伸びる会社、安定した会社というのも、1つの基準となるでしょう。
先が見えない世の中ではありますが、1つ言えるのは、ニッチなインフラ業界は狙い目だということです。

グローバル経済となった現在、一般的な市場を相手にしている会社は生き残りが難しく、多角的な市場に進出していかなくてはならなくなっています。
近年では、印刷会社の凸版印刷が社名をTOPPANに変更して、社のグローバル化をアピールしました。

もはや印刷市場だけでは将来が見込めない、大きな利益は上げられないということで、いわばなんでもやってやるというスタンスになったのでしょう。
TOPPANに限らず、あらゆる会社が異業種の市場を研究しはじめています。これから躍進するであろう業界も視野に入れて動いているでしょうし、これまでアンタッチャブルとされてきたニッチな業界が狙い目という見解もあります。

ニッチな業界は、需要が限られているため競争は少ないですが、専門知識が必要になる仕事です。
イメージ的には、小さな世界を連想させられますが、実は最先端技術である半導体の材料や医療機器の材料を扱っている業界、特殊工具を扱っている会社もニッチの範疇に入ります。

ニッチな業界の仕事を大会社が扱うには、それに特化した人材を育成するプログラムの作成や人材確保にそれ相応のコストがかかります。
費用対効果の面を鑑みれば、ニッチな業界に踏み入ることはそう簡単にはいかないでしょう。
実際、私どもが扱う設備設計もニッチな業界ですが、人材を育てるよりも、専門の協力事務所に外注したほうがコストの面だけ考えると、安くすんでしまうという現状があります。

さらにいえば、仕事が常にあるインフラ系の仕事であれば、なおいいでしょう。
インフラ系とは、例えば次のようなものです。

■電気、ガス、水道などの生活基盤となる設備
■道路、鉄道、港、空港などの交通網
■電話やインターネットなどの通信網
■病院や学校といった公共施設
■会社が所有し、事業や業務に欠かせない設備

当社もニッチなインフラ業界の1つです。
だからこそ、しっかりと「プロ」として「周りから認められるような力が備われば、将来は明るいよ」と社員には自信を持って言っています。
設備設計の市場はかなり大きいものといえますし、建物の耐用年数が50年と言われているのに対し、設備機器の耐用年数は15年といわれている。そんな仕事だけに半永久的に継続できる仕事だといえます。

いずれにしろ、設備設計以外でも、ニッチなインフラの世界は、安心して着実にキャリアを積み上げられる世界だといえそうです。

僕らは、なにを武器に働けばいいのだろうか?
村井一雄(むらい・かずお)
株式会社中之島設計 代表取締役
1976年生まれ。京都府出身。
未経験で設備設計の世界に入り、28歳で独立。
その後、2016年に会社の名称を株式会社中之島設計に変更。
「気付かれない設備」をモットーに、ホテルや学校、駅、庁舎、商業施設などの設備設計を請け負っている。
また、中途採用が当たり前で、高齢化が進む業界の中で、業界の未来のために、未経験者の新卒を1から育てることをはじめ、教育体制の充実や人事制度の策定などにも力を入れている。
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