この記事は2025年6月6日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「香港で高まるペット需要、日本の商機は「安全性への信頼」」を一部編集し、転載したものです。


香港で高まるペット需要、日本の商機は「安全性への信頼」
(画像=Paylessimages/stock.adobe.com)

(香港政府統計局「Thematic Household Survey」ほか)

香港では、食品や日用品、キャラクターグッズなど、多岐にわたる日本製品が販売されている。円安や香港の物価高という環境変化もあり、日本製品を日本で購入する香港人が増加する一方、大型で重量のある商品や日用消費財などは香港現地でも買われる傾向にある。

その一つがペット関連製品だ。香港では、少子高齢化や未婚率の増加を背景に、犬や猫を中心にペットを飼育する家庭が増加している。香港政府統計局の調査結果である、最新の2019年「Thematic Household Survey」によると、香港で飼われているペットのうち犬が22万1,100頭、猫が18万4,100頭(計40万5,200頭)となっている。06年の同調査結果(計29万7,100頭)と比較すると、13年間で10万頭以上増加している。

こうした背景もあり、香港はペットフレンドリーな社会に変化しつつある。ペット連れを主なターゲットとするショッピングモールやペット専用公園の建設が増え、公共交通機関にペットを同乗させる実証実験も進行中だ。

翻って、日本企業はこのビジネスチャンスをつかめているのか。財務省の貿易統計によると、犬猫用飼料の日本から香港への輸出は15年の298トン、約4億4,000万円から、24年に1,102トン、約19億7,000万円と、過去10年間で804トン・約15億3,000万円増加している(図表)。

しかし、動物用装備具(ペット用)は、コロナ明けの21年に爆発的に増加したものの、ここ数年はコロナ禍前の水準を下回る。ペット玩具やその他用品については特定のHSコード(注)がないため、参考値としてプラスチック製品の数値となるが、こちらも減少傾向が見られた。すなわち、香港のペット市場拡大の商機があるのは主に「ペットフード」と予想される。

今年2月に開催された香港最大規模のペット関連展示会でも、多くのブースで日本語表記のペットフードを見かけた。必ずしも日本企業が出展しているわけではなく、香港企業が日本に生産拠点を作り、日本製造品を香港に輸出している例もあった。安全性をPRするためだという。日本製品の安全性に対する強い信頼は、健在といえそうだ。

注意すべきは香港の消費者動向だ。ペット関連製品に限ったことではないが、香港はフリーポートとして世界各国からさまざまな商品が入ってくる競争の厳しいマーケットである。しかも、香港の消費者は一般的に「熱しやすく冷めやすい」と言われている。日本企業は、製品に対する信頼を活用して確実にターゲット層を捉え、常に新しい工夫を提供し続けることが求められよう。

香港で高まるペット需要、日本の商機は「安全性への信頼」
(画像=きんざいOnline)

日本貿易振興機構(ジェトロ)香港事務所/平井 志穂
週刊金融財政事情 2025年6月10日号