ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「日本はかくも遠回りが好きなのか」

ドル円=142-147、ユーロ円=167-172、ユーロドル=1.15-1.20


通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨5位(4位)、株価16位(16位)、外貨投信が5月急増。政府が円高株安を目指すと資産が縮小する」


(日本株は1年間回り道で4万円に戻る、円買い介入で回り道)
円は1-4月は最強であったが、5月からじり安が続き、5月のドル円月足は5か月ぶり陽線。6月ドル円もここまで陽線。円の年初来の順位はメキシコペソ、ポンドにも抜かれて現在5位。
日経平均株価は漸く4万円に回復したが、約1年前の介入直前では41831円であったので、まだそこまで戻っていない。世界の主要株価は1年前と比べると独DAXが26%高、香港ハンセンが34%高で日本だけが回り道をしている。インフレ抑制のための円買い介入は効果なく、消費者物価は2.8%から3.5%へ上昇している。

(需給① 5月は外貨投信急増で円安)
今年は表のように2-4月と外貨投信残高が減少し、円高の要因となっていた。ただ5月は6.24兆円増加し円売りを支援した。

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(需給②  貿易統計の需給)
今年は2022年-24年の大幅円安を導いた貿易赤字からは縮小している。これも円高要因だ。ただまだ貿易赤字なので円高に勢いがない。貿易赤字を決めるのは
日本の場合は原油価格が大きく影響する。

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(需給 結論)
貿易赤字が縮小し、外貨投信残高が減少しているので2-4月は円高推移してきたが、5月の6.2兆円の外貨投信増はそれを覆したと言えよう。

(円高・株安政策で日本は繫栄しない。官製の資産縮小)
2025年1-3月期の個人が保有する金融資産の残高は2195兆円となった。過去最高だった昨年末(2236兆円)からは減少した。

株式等が268兆円で昨年末比3.7%減少した。投資信託は131兆円。NISAの普及による堅調な取引で前年同月末比では8.8%増えたが、市況の悪化で昨年末より4.1%落ち込んだ。保険は、円高の影響で外貨建て保険の評価額が減少し、昨年末比1.1%減の411兆円。現金・預金は1120兆円で昨年末より1.3%減少した。同時期は日本のGDPもマイナス成長(年率換算0.7%減少)となっている。税収も減少しているだろう。そうなると景気刺激策を出す余裕もなくなる。安易に円高株安を目指すとこうなる。

(中銀総裁集合)
ECBフォーラムで、パウエルFRB議長、ラガルドECB総裁、日銀植田総裁らが7月1日のパネル討論会に参加する。英中銀ベイリー総裁や韓国中銀李総裁も参加して、金融政策について公に意見を交わす。

*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)14位(15位)、ドルは弱いとしか言えない、変則な政策で経済が非効率化」
(ドルは弱いとしか言えない、変則な政策で経済が非効率化)
ドルは12通貨中、週間で最弱、月間で10位、年間で11位と弱いという表現しかない。米株価3指数は漸くプラス圏となった。ただ20%超の欧州など首位グループからは大きく引き離されている。
米10年国債利回りは4.28%で下降気味。アトランタ連銀GDPナウは2.9%、前回の3.4%から下方修正。

(米5月個人消費支出は予想外の減少)
5月の個人消費支出(PCE)価格指数は、前年比2.3%上昇し、前月の2.2%から小幅加速した。 コア指数は、前年比2.7%、前月比0.2%それぞれ上昇した。
一方、 個人消費支出は前月比0.1%減で、予想の0.1%増に反しマイナスに転じた。これは、トランプ政権による関税発動を見越して自動車などの耐久財を前倒しで購入していた反動とみられる。

(利下げは9月か)
パウエルFRB議長は、関税の物価への影響を見極めるには時間が必要だと議会で証言している。企業はまだ関税発効前に積み上げた在庫を販売しているため物価上昇は緩やかなものにとどまっているが、6月の消費者物価を皮切りにインフレが加速し始めると予想している。 一方、需要の弱まりにより、企業が消費者に関税を転嫁することが難しくなる可能性があると考える向きもある。
これを受けて市場では、年内0.75%利下げ観測が高まった。利下げは9月に開始される可能性が最も高いとみられる。

(5月モノの貿易収支)
5月の財(モノ)の貿易収支は赤字が11.1%増の966億ドルとなった。輸出の減少により拡大したものの、輸入の流入減を背景に2Q・GDPに貿易が大きく寄与する公算が大きい。
モノの輸出は97億ドル減の1792億ドルとなった。モノの輸入は2458億ドルとほぼ横ばいとなった。

(6月雇用統計)
今週は6月雇用統計の発表。失業率、雇用者数、平均時給といずれも若干悪化する見通し。

(貿易交渉、9月まで続くか。カナダとの貿易交渉は打ち切り)
米国はカナダとの貿易交渉を打ち切った。ベッセント財務長官は、関税を巡る各国・地域とのさまざまな貿易交渉が9月までに完了する可能性があるとの見方を示した。主要貿易相手国18カ国との協議や、レアアースの出荷促進を目的とした中国との新たな協定修正案が背景にある。誠意を持って交渉している貿易相手国・地域に対しては相互関税上乗せ分の猶予期限を延長する用意があると述べた。

(大きくて美しい法案は前進)
米上院は28日夜、トランプ大統領が掲げる包括的な税制・歳出法案の審議開始に向けた採決を実施した。共和党から2人が反対に回ったが、51対49の賛成多数で手続き上の最初のハードルをクリアした。
トランプ氏の「大きくて美しい法案」が数日内にも可決される可能性が高まった。 この大型法案には2017年の「トランプ減税」の延長やその他の減税、軍事費・国境警備費の増額などが盛り込まれている。
民主党は法案の減税措置が富裕層に不釣り合いな利益をもたらし、低所得者が必要とする社会保障制度を犠牲にするとして強く反対した。

*ユーロ「通貨2位(首位)、株価4位(4位)DAX)、ユーロとスイスの首位争い」
(ユーロとスイスの首位争い)
6月16日週はユーロがスイスを抜き年間首位に立ったが先週は抜き返された。ただ月間では首位を維持している。独DAX株価指数は年初来20.7%高で好調。10年国債利回りは位回りは2.6%へ5月末の2.51%へ上昇。前回触れたIMF煙霧理事のユーロ推奨、ブラックストーンの欧州投資増額報道も影響しているのだろう。

(米金利低下、独金利上昇)
米金利差が縮小している。6月の10年国債利回りで言えば、米が4.40%から4.28%へ低下、独が2.51%から2.6%へ上昇している。米は不確実性と景気指標の悪化、トランプ大統領の利下げ要求などで低下、独は
防衛増額に伴う国債発行の増額や大規模な財政支出パッケージ発表が影響しているのだろう。

(ECB緩和終了の可能性)
カジミール・スロバキア中銀総裁は、ECB金融緩和政策は終了した可能性があり、貿易戦争を巡る状況が明確になるまで金利を変更すべきではないと考えを示した。
「まずは慎重な姿勢で臨み、データが出れば評価し、中期的な視点でどう捉えるかを検討していく」と説明。また「個人的には、貿易戦争のシナリオについてより明確な見通しが得られるまで金利には手を付けない」と述べ、ECBの金利が中立または少なくともその近辺の水準に達したと見ているとの立場を示した。

(エコノミスト予想、1ユーロ1.24ドル台へ)
ユーロ圏の25年のGDP予想は前年比1.0%増で、伸び率は5月調査の0.9%からやや上振れした。26年は1.1%増、27年は1.5%増となった。
ユーロ圏の5月の消費者物価は前年同月比1.9%上昇し、伸び率はこの6カ月で初めて2%を割り込んだ。調査では、年内と26年、27年のそれぞれの平均がこの程度になると見込まれている。
 ユーロ高の水準については、1ユーロ=1.24ドルとなった。
ECBが9月の理事会であと1回の追加利下げを決めるとの予想が53%に達した。(ロイター調査)

(米EU関税問題)
米国とEUは、上乗せ関税の一時停止措置が終了する7月9日の期限までに何らかの形で貿易合意にこぎ着けられると考えている。同日には、米国がEU製品のほぼすべてに50%の関税を課す予定で、EU側も一連の対抗措置を発動する構えだ。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、経済的に打撃となる関税応酬のエスカレートを避けるため、期限前に合意に至ることができるかもしれないと自信を示した。フォンデアライエン氏は、トランプ政権が今週新たな提案を示したと述べた。会議では首脳らの間で態度に変化が見られ、対立の激化を回避するためにある程度の不均衡を含む貿易合意でも受け入れる用意があると多くの首脳が語った。ラトニック米商務長官もフォンデアライエン氏に同調。EU側がここ数週間に交渉のペースを加速させ、合意に向けた土台を築いていると述べた。

*ポンド「通貨4位(5位)、株価9位(8位)、ベイリー総裁が利下げとポンド高を語る」
ポンドは月間で前週の10位から先週は4位へ上昇、年間でも円を抜いて4位に浮上した。FT株価指数は先週は0.28%高で、年間では7.66%高。10年国債利回りは4.51%。
トランプ米大統領がFRBの新総裁の指名を前倒しする可能性があるとの報道で市場が動揺し、ポンドは対ドルで一時、約4年ぶりの高値を付けた。

(ベイリー総裁が利下げとポンド高を語る)
ベイリー英中銀総裁は、最近のインフレ率上昇で物価上昇の中期的な見通しに不確実性が高まった一方で、雇用市場には減速の兆候が見られると指摘した。総裁は中銀の金利に関するガイダンスを繰り返し、事前に設定された道筋はないが、徐々に下がる可能性が高いと語った。 市場では中銀が年末までに0.25%の利下げを2回実施し3.75%となると見込んでいる。8月に金利を引き下げる可能性を64%程度とみている。
  また、最近のポンド高について、金利見通しの相違よりも米国経済に対する投資家の期待の変化を反映したものとの見方を示した。 総裁は、投資家が米国資産のオーバーウエートポジションを再考していると述べた。

(一方、利下げ慎重派も)
グリーン英中銀金融政策委員は、最近のインフレ率上昇が「こぶ」のような一時的な現象でなく、「高原」のように持続する可能性があるとして、利下げに慎重を期すべきだと述べた。

(6月PMIは予想以上に改善)
6月の景況感は予想以上に改善した。新規受注が今年初めて拡大した。ただ企業は人員削減を加速させ、中東紛争への懸念が広がった。 総合PMIは50.7。5月の50.3から上昇し、予想の50.5を上回った。サービスPMIは50.9から51.3に上昇し3カ月ぶりの高水準。製造業PMIは46.4から47.7に改善し1月以来の高水準となった。

*豪ドル「通貨8位(9位)、株価12位(11位)、7月は利下げか。CPI低下、PMI上昇と好ましい状態」
(6月はまずまずの豪金融市場)
豪ドルは今月は6位で健闘(対円1.93%高)している。年初来では8位(同2.92%安)。豪全普通株指数は12位の3.84%高。10年国債利回りは4.18%で米の4.28%より低い。

(消費者物価2.1%へ伸び低下)
5月の消費者物価は前年比2.1%上昇。伸び率は4月の2.4%から鈍化し、予想の2.3%も下回り、利下げ観測が高まった。
コアトリム平均値は2.4%上昇し、4月の2.8%から伸び率が縮小。2021年後半以来の低水準となり、RBA目標(2-3%)の中間点を下回った。
これを受けて、7月の豪利下げ確率は81%から92%に上昇。年内あと3回の利下げが完全に織り込まれている。 TD、 CBA、ドイツ銀行などが、予想する次回利下げ時期を8月から7月に変更した。

(PMIしっかり)
6月PMIはそれぞれしっかり。製造業51(前月51)、サービス業51.3(50.6)、総合51.2(50.5)。
総合PMIでは、民間部門の伸びは9カ月連続となり、過去10カ月で2番目に高い伸び。輸出受注は大幅に減少したものの、新規事業の流入増加が景気拡大を支えた。企業心理は年半ばに改善し、雇用水準も引き続き上昇した。物価面では、投入コストと産出価格のインフレ率がともに6月に低下。特に、産出価格のインフレ率は4年半ぶりの低水準に低下し、2Q末にかけて物価圧力が緩和していることを示唆している。

(今週は指標多い)
今週は6月TD-MIインフレーション、5月住宅建設許可、小売売上、貿易収支、6月求人広告などの発表がある。

*NZドル「通貨6位(6位)、株価18位(17位)、7月9日の政策金利に注目」
(NZドルは6位で安定だが株価は安い)
2025年のNZドルは安定している。12通貨中で6位。米国の不確実性が主因で他力本願でドルより強い。対円では0.39%安と追いついてきた。ただNZ経済自体が強くはないことは株価指数(NZ50)が年初来4.02%安であることが示している。10年国債利回りは4.53%で先進国では一番高い。

(7月9日に政策金利決定)
NZ中銀は7月に政策金利を据え置き、8月には利下げを実施して3%に引き下げると予想されている。一方で、GDP予想の上振れは中銀に余裕を与えている。他方、地政学的な緊張によりボラタイルな原油価格動向が影響する。

 1QのGDPは前期比0.8%増となり、予想の0.7%をわずかに上回り、中銀の予想である0.4%を上回った。サービス業と製造業が成長を牽引し、建設業は1年間の縮小の後、安定した。経済は前期比2四半期連続で拡大したが、生産は依然として潜在成長率を下回っている。
 昨年のテクニカルリセッション後、2四半期連続の成長となり、経済が循環的な底を打ったことを示す兆候を強固なものにしていると考えられている。景気拡大は歓迎すべきものだが、経済は依然として脆弱。一人当たりGDPは依然として縮小傾向にあり、関税、消費意欲の減退、そして世界的なボラティリティといった逆風が短期的な見通しに暗い影を落としている。

(今週は企業信頼感指数)
今週はANZ(6月)とNZ経済研究所(2Q)の企業信頼感指数の発表がある。他に5月建設許可。