2025年の「大阪・関西万博」による経済効果は、約3兆円に上ると推計されている。この規模の経済効果は、日本経済に大きな刺激を与える。

万博開催の効果はそれだけにとどまらず、日本への注目が高まることで為替市場にも影響をもたらし、「円高」に振れる展開も想定される。海外からの関心が集まれば、日本円の需要が高まるからだ。また、円高の局面は日本人にとって「外貨をおトクに買えるタイミング」ともいえる。

本記事では「なぜ万博を契機に円高の流れが起きる可能性があるのか」「そのとき日本人は外貨とどう向き合うべきか」について解説していく。

万博による経済効果はどれほどか ?

万博が円高を呼ぶ ? 経済効果3兆円の先にある“外貨を買う好機”とは
(画像=hassi1013 / stock.adobe.com)

2024年3月に経済産業省が公表した資料では、大阪・関西万博における経済波及効果は約2.9兆円と試算されている。内訳は、建設投資が約8,570億円、万博の運営・イベントによるものが約6,808億円、そして来場者消費が約1兆3,777億円となっている。

建設投資は、日本国内の建設・インフラ業界の活性化につながり、万博の運営を通じてかなりの雇用が創出されるだろう。来場者は、万博会場周辺での宿泊や渡航に関する消費も行い、これらを通じて日本経済を刺激する。

円高を後押しする可能性とは ?

万博には、海外からも多くの外国人が来場する。海外からの来場者は、来場者総数の12%、約350万人に上る予定だ。万博をきっかけに海外からの注目が集まり、日本を訪れる人や日本の製品・サービスにお金を支払う人が増えれば、円の需要が高まり、為替市場には円高に振れる圧力がかかる。

2つの通貨の両替レートは、さまざまな要因のトータルの結果として、リアルタイムの数字に現れてくる。そのため、万博による円高圧力が高まったとしても、為替レートが結果として円高になるかどうかはわからない。しかし、少なくとも円高要因が増えるのであれば、円高局面にとるべき行動を知っておくことは有益だといえる。

円高=外貨を安く買える ?

円高であれば、外貨を安く買うことができる。イメージしやすいように、区切りのよいレートとして1米ドル=100円で考えてみよう。

1米ドル=100円が1米ドル=80円になった場合、それは「円高」である。なかには「円の数字が100円から80円に小さくなったのだから、円安になったのでは ? 」と思う人もいるかもしれない。しかし、実際はその逆である。それまでは100円を払わなければ1米ドルを手にできなかったのに、80円で買えるようになるということは、円の価値が上がったことを意味する。

例えば、この1米ドル=100円と1米ドル=80円のそれぞれのケースにおいて、100万円を使って米ドルを買う場合を考えてみよう。購入できる米ドルは以下のようになり、1米ドル=80円のときのほうが、2,500米ドル分多く買えることがわかる。

【原資が100万円の場合】

為替レート買える米ドル
1米ドル100円10,000米ドル
1米ドル80円12,500米ドル
※為替手数料など考慮せず

外貨預金を始める前に知っておきたいこと

万博を通じて円高に振れる圧力がかかると、外貨を買うチャンスが到来する可能性が高まる。ただし、日本円を外貨に換えて保有するだけでは、「外貨を安く買えた」というメリットしか享受できない。大切なのは、外貨預金を通じて利息を得ることである。外貨預金は、円預金よりも高い金利が期待できる資産運用法の一つで、保有を続けることで、円預金より有利な利息収入が見込める。

また、外貨預金で得られる利息は、為替レートの変動によって円換算での受取額が変わるという特徴がある。円安が進行すれば、利息を円に換算した際の受取額は増えることになる。さらに、円高だと外貨を買いやすくなるだけでなく、預けたあとに為替レートが円安へ戻れば、為替差益も得られる。

例えば、1米ドル=100円のときに100万円で1万米ドルを買い、1米ドル=110円へと円安に戻ったときにその1万米ドルを円にすれば、日本円で110万円を手にすることが可能だ。この場合、差額となる10万円が為替差益となる (※為替手数料などは考慮せず) 。

ただし、外貨を保有する場合は、為替がさらに円高に振れれば、保有していた米ドルは円換算で評価額が下がり、含み損が発生するリスクがあることを知っておきたい。また、一般的に通貨を両替する際には、為替手数料 (金融機関によって異なる) が発生する。頻繁に両替を繰り返すと、せっかくの利息収入や為替差益が手数料によって相殺されてしまうため、外貨預金は長期保有が基本であることを理解しておこう。

外貨を持ち始めるには悪くないタイミング

2025年の大阪・関西万博をきっかけに円高が進むようであれば、外貨を持ち始めるには悪くないタイミングといえる。一方で、米国の貿易政策や為替に対する姿勢、日銀の金融政策の動向などを背景に、為替市場には依然として不確実性が残っている。今のタイミングで外貨を購入し、その後さらに円高が進めば、為替差損が発生する可能性がある点には注意が必要だ。

こうしたリスクを抑える方法の一つとして、外貨預金の積立によって購入時期を分散させるという考え方がある。為替の変動に一度に左右されることなく、平均的な取得レートを目指すことで、為替リスクの緩和につながる。

また外貨預金は、将来の海外旅行などで外貨を使う予定がある場合の準備手段としても有効であり、資産運用においてリスクを抑える方法としても活用できる。資産運用においては、異なる性質の資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体の値動きをならし、リスクを抑えることができる。外貨建て資産もその一つとして、有効な選択肢になり得る。

万博の開催を一つの契機とし、外貨預金を資産運用にどう取り入れるかを検討してみてはいかがだろうか。

(提供:大和ネクスト銀行


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