
総括
FX「関税で貿易資本需給はどうなる。7月のドル円は5年連続陰線」
ドル円=142--147、ユーロ円=168-173、ユーロドル=1.15-1.20
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨5位(5位)、株価17位(16位)、日経平均4万円維持できない日本の弱さ。関税発表が追い打ちか」
(日経平均4万円維持できず。円は12通貨中5位)
4月までの円は最強グループであったが、現在は5位。5月の外貨投信の急増の影響か。今週は6月分の発表。日経平均は4万円を維持できず、年初来0.21%安。世界でも希少なマイナスグループ。
10年国債利回りは1.435%。米国の対日関税発表でどんな需給になるか。判明する迄時間はかかる。7月のドル円は過去5年連続陰線だ。夏の円高はどうなるか。関税賦課で日本の対米輸出が減少するかどうか。
(相互関税の上乗せ分の一時停止期限は7月9日)
赤沢経済再生相はラトニック米商務長官と電話で会談した。相互関税の上乗せ分の一時停止期限を7月9日に控え、赤沢再生相の再訪米を含め日本側の働きかけが注目されている(ただベッセント財務長官は昨日8月1日が期限だとも発言している)。
(低成長)
日本政府は、米国の関税による世界的な需要への打撃が予想されるため、2026年3月期の経済成長率見通しの下方修正を検討すると、政府筋がロイターに明らかにした。
昨年末の1.2%の拡大見通しは1%未満に引き下げられる可能性があると述べた。関係筋によると、政府は米国の関税動向を踏まえ、7月末をめどに見通しを最終決定する予定。
日本銀行は最新の四半期予測で、米国の関税による打撃が予想されることを受けて、2025年度の経済成長率予想を1.1%から0.5%に引き下げている。
(円高株安ではGPIFの資産は増えず)
公的年金(GPIF)積立金運用は昨年度1兆7334億円の黒字。収益率はプラス0.71%と国債利回りより低い。昨年7月の介入と利害の悪影響は大きかった。インフレも抑制できていない。GPIFの運用は、円高株安となれば利回りは低下するポートフォリオ。
2025年1-3月期の運用損益は8兆8152億円の赤字であった。
(基調インフレは2%以下)
植田日銀総裁は、日本の基調的なインフレ率は依然として目標である2%を「やや下回っている」と述べた。日銀の中立金利の推計レンジは「非常に大きい」としながらも、現在の政策金利は「中立水準を下回っている」と述べた。
*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)12位(14位)、債務上限引き上げでトランプ政権は安堵だが、市場の反応は」
(ドルはやはり弱い、株価先物は4日に下落)
ドルはやはり弱い。年初来で12通貨中、11位。株価は7月3日は好調な雇用データを受けS&Pとナスダックは過去最高値で取引を終えた。しかし翌4日は下落している(後述)。10年国債利回りは4.34%で6月末の4.23%から上昇。
(米株指数先物が下落)
米株価指数先物が7月4日の取引で下落。上乗せ関税の一時停止期限となる9日を控え、トランプ大統領が貿易相手国・地域から譲歩を引きだそうと圧力を強めており、投資家心理を圧迫した。
S&P指数先物は0.6%下落。トランプ氏は貿易相手国・地域に対する具体的な関税率を一方的に記した書簡について、4日から送付を開始すると発言。税率は最大70%となる可能性があるとし、8月1日から関税を徴収する考えを示した。トランプ氏が言及した70%の関税率が正式に導入されれば、「解放の日」と呼んだ4月2日の発表時に示した水準を上回ることになる。
(不確実とはなにか)
関税賦課で各国の貿易需給や資本需給がどうなるのかまだ不明である。関税も輸入側の負担になるのか、輸出側の値引きになるのかも不明だ。前者なら米消費の悪化、後者なら輸出国経済の悪化となるがまだつかめない。
(パウエル議長は待ちの姿勢、正攻法)
パウエルFRB議長は利下げを巡り「われわれは幾分時間を取っているだけだ。米経済が堅調である限り、待ち、さらに詳しく知り関税の影響がどうなるかを見極めることが賢明な対応と考える」と述べた。同時に、足元の政策見通しでは、FRB当局者の大多数が依然として年内後半の利下げを予想しており、年内残り4回のFOMCのいずれも利下げの選択肢から外れていないとの見方を示した。
CMEの「Fed Watch」によると、FRBが7月に金利を据え置く確率は79.8%、0.25%利下げ確率は20.2%。ここ数週間で経済指標が鈍化していたため、年内に利下げを実施するとの期待が高まっていたのもまた、株式市場と債券市場の楽観的なムードの一因となっていたが、3日の雇用統計が早期の利下げ期待に冷や水を浴びせた。
(トランプ税制法、当面の債務危機回避)
米下院は減税・歳出法案の一環として、米政府の債務上限を現行の36.1兆ドルから5兆ドル引き上げた。現行の債務上限は夏の後半に達すると予想されていたが、今回の動きはデフォルトを引き起こす懸念を和らげるだろう。トランプ法案は今後10年間で国の債務を3.4兆ドル拡大させるという。そうなると、ここ数カ月間で金融市場の価格変動を引き起こした主な要因となっている米国債の供給増加と需要減少を巡る懸念が強まるだろう。政府は景気刺激策による税収増で市場を落ち着かせるという主張だ。
*ユーロ「通貨2位(2位)、株価3位(4位)DAX)強いユーロ、対米貿易交渉ヤマ場」
(強いユーロ、ユーロ円が6週連続陽線)
スイスフランと年間首位争いを続けている。年間で2位。ユーロ円は6週連続週足が陽線、ユ-ロドルは10日連続陽線を逃し先週は小反落。独DAX株価指数は年初来19.48%高。独10年国債利回りは2.57%で先週のピークの2.63%からやや低下。今週は米ユーロ3貿易交渉の行方に注目。
(米ユーロ貿易交渉)
フォンデアライエン欧州委員長は、期限前に米国とEUが包括的な貿易協定を結ぶのは「不可能」だと述べた。
EUは、米上乗せ関税の一時停止措置の期限となる9日を控えているが、いかなる合意も最終的にはトランプ大統領の判断に委ねられており、複数のシナリオが想定されている。具体的には、①新たな関税を導入せず現行の停戦状態を維持する、②合意に至らず交渉は継続し、猶予されていた上乗せ関税が発動される、③EU側が条件を満たしていないと米国が判断して一方的に追加関税を発表するといったケースだ。
(1.20ドルまでのユーロ高見過ごせる、追加利下げには否定的)
デギンドスECB副総裁は 対ドルで1.20ドルまでのユーロ高は無視できるが、それ以上の水準は複雑になるとの見方を示した。「1.17ドル、1.20ドルでさえ、見過ごすことができない水準ではない」と指摘。「それ以上になると、かなり複雑になる」と述べた。 また追加利下げは「経済を助けることにはならない」とし、貿易やその他の政策に関する確実性が必要だと語った。
(ECB、7月は政策金利据え置きか)
ユーロ圏消費者物価の6月速報値が前年比2.0%上昇と、ECB目標と一致した。ECBは昨年半ば以降、8回の利下げを行ってきたが、このところインフレ率が目標に戻ったため利下げを一時停止する意向を示している。トレーダーは7月の利下げ確率をわずか5%と見込んでいる。
(ユーロが基軸通貨になるために)
ラガルドECB総裁は、ユーロが基軸通貨としての米ドルと同等の地位を得るためには、EUの経済システムがより効率的かつ生産的になる必要があるとの見解を示した。
*ポンド「通貨4位(4位)、株価9位(9位)、リーブス財務相騒動落ち着く。ベイリー総裁が再び利下げ示唆」
(リーブス財務相騒動があったが、落ち着きポンドは年初来4位を維持)
リーブス財務相騒動があったが、落ち着きポンドは年初来4位を維持、対円で027%高。FT株価も先週は小幅上昇、年初来9位の7.95%高。10年国債利回りは4.62%まで上昇、週末は4.56%へ低下した。
今週は5月GDPや鉱工業生産に注目したい。
(ベイリー英中銀総裁が金利低下を示唆)
ベイリー英中銀総裁は、英労働市場は軟化しており、それがインフレの目標回帰にどのように影響するかが重要な問題とする認識を示した。
金利は徐々に低下する可能性が高いとの見方を繰り返した。 また、世界的な不確実性の増大に言及。英国企業が投資決定を先送りしており、経済活動・成長に打撃を与えているという。
(リーブス財務相騒動)
リーブス英財務相は7月1日の閣議で、今秋の予算に盛り込まれる増税について、昨年実施した400億ポンド規模の増税措置よりも、政治・政策的にさらに困難なものになる可能性が高いと警告した。リーブス氏は福祉予算削減の撤回で生じる財源不足を補うために増税は必要だと説明。このため今回の増税は昨年より規模は小さいものの、実施手段が限られていると述べた。増税の可能性について、これまでで最も踏み込んだ発言となった。
先週、リーブス氏が財務相として引き続き職責を果たせるかどうか、また財政規律を維持する姿勢が揺らいでいないかが市場の売り圧力の焦点となった。同氏が議会で涙を見せたことがきっかけとなり、福祉予算削減の撤回を巡り辞任するのではとの憶測が広がった。
しかし市場はその後回復に転じた。スターマー首相が、リーブス氏は何年も現職にとどまるだろうと公に明言し、リーブス氏自身も財政規律を順守する姿勢を強調したことが安心材料となった。
(今すぐ利下げすべき=テイラー英中銀委員)
テイラー金融政策委員は、金利を慌てて引き下げるリスクを負うより、今すぐ引き下げた方が良いとの考えを示した。5月に英中銀が発表したインフレ予測がほぼ予想通りであれば、来年末までに政策金利が「3%前後」に低下すると予想。「私にとって、現時点でのより良いリスク管理のアプローチは、待ち過ぎて後で急いで利下げを行うよりも、今利下げした後で長く見守ることだ」とした。
*豪ドル「通貨8位(8位)、株価12位(12位)、利下げ予想で株価が最高値圏へ上昇」
(利下げ予想で株価が最高値圏へ上昇)
豪ドルは年初来8位、通貨の若干の弱さと、利下げ予想が株価を最高値圏へ押し上げている。全普通株指数は年初来で5%高。
(今週は利下げか)
RBAは7月8日、政策金利を0.25%引き下げて3.6%とする見通し。インフレの鈍化と景気の減速によるものだ。コロナ禍後の物価高騰局面は終了し、RBAは、経済成長を確実にして労働市場の強さを保つ。
経済成長率は今年が1.6%、来年が2.3%となる見通し。4月時点の調査で示された今年2.0%、来年2.4%から水準が切り下がった。
インフレ率の見通しは今年が平均2.6%、来年が平均2.7%で、目標とする2-3%の範囲内に収まると予想されている。
(弱い小売売上も利下げ予想を支える)
5月の小売売上高は予想を下回る伸びにとどまった。これも追加利下げ予想を強めた。前月比は0.2%増、予想の0.4%増を下回り、4カ月連続で低調となった。4月は横ばいだった。
前年比では3.3%増加。4月の3.8%増から減速し、前年比として昨年11月以来の低い伸びとなった。
消費者の根強い節約志向と政府支出の停滞で1Qの経済成長はほぼ横ばいとなった。
多くの家計は先の利下げで浮いた資金を貯蓄に回しているようだ。
(家計支出指数は改善)
5月の家計支出指数は前月比0.9%上昇した。 過去3カ月は低迷が続いていたが、衣料品や乗用車への支出が増えた。金利低下と実質所得増加の効果がようやく表れてきた可能性がある。
4月は前月比横ばい、3月は0.1%低下だった。 前年同月比では4.2%上昇。
*NZドル「通貨6位(6位)、株価18位(18位)、景況感改善で政策金利は据え置きか」
(NZドルは強からず弱からず)
NZドルは年初来6位とまずまずの位置にいるが、株価は冴えず年初来2.62%安と冴えない。10年国債利回りは4.55%。
(今週の政策金利は据え置きか)
NZ銀行は今週の政策金利(7月9日発表)の引き下げをもはや予想していないと述べた。NZIERの企業意識調査は、中銀が7月9日の会合で政策金利を3.25%から引き下げると人々を納得させるほど弱いものではなかったと述べた。ロイター調査でも政策金利を3.25%に据え置くとの予想が回答者27人のうち19人を占めた。残る8人は0.25%の利下げとみている。大手銀行5行は全て政策金利の据え置きを見込んだ。
1Qの消費者物価上昇率は前年比2.5%まで鈍化し、目標レンジ(1-3%)内に収まった。
国内総生産(GDP)は25年に前年比で1.0%増、26年に2.4%増になると予想。4月の調査ではそれぞれ1.2%増、2.5%増と予測していた。
(NZIERの2Q企業景況感は改善)
NZ経済研究所(NZIER)の2Q企業景況感はインフレ圧力の緩和を示す兆候が見られる中、前期から改善した。
業況全般が「改善する」と回答した企業から「悪化する」と回答した企業を引いた割合は22で、前期の19から改善した。
NZIERは、「需要低迷を経験している企業と需要回復を期待している企業の間になお乖離が見られる。昨年8月以降の大幅な利下げは信頼感を押し上げたものの、低金利の効果が実体経済の活性化につながるまでには引き続き時間がかかっている」と指摘した。
(ANZの6月企業信頼感も改善)
ANZの6月企業信頼感は大きく上昇した。関税を巡る世界的な混乱が緩和したことが背景。
今後1年で景気が改善すると回答した企業は差し引き46.3で、前月の36.6から上昇。今後1年の自社事業の成長を予想した企業は差し引き40.9で、前月の34.8から増えた。