この記事は2025年7月21日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:消費税廃止の長期金利上昇圧力はわずか0.4%で国民を救うコストとしては安い」を一部編集し、転載したものです。

- 消費税廃止によって、ネットの資金需要の拡大と緩和的金融政策ダミーの消滅の合計で、長期金利には0.4%程度の上昇圧力がかかり、2%程度まで上昇する可能性がある。しかし、2%の物価安定目標が達成されることがより確かになるはずだから、物価目標対比で、実質長期金利が0%(名目長期金利-物価目標)に上昇するにすぎない。良い上昇で、長期金利の正常化だと判断される。
- 日銀が2026年度末までの3回の利上げをせず、積極財政を推進する政府の経済政策の方針と整合的な金融政策運営を行えば、この長期金利の上昇は完全に打ち消すこともできる。日銀の1.25%までの利上げを織り込んでも、OECDは2026年の日本のネットの利払費の負担は0.5%(GDP比)にしかすぎず、先進各国と比較して極端に小さいと推計している。0.4%程度の長期金利の上昇圧力は、家計を救い、30年来のデフレ構造不況を完全に脱却するためには安いコストだ。
- 政府の骨太の方針と、自民党の参議院選挙の政権公約で、名目GDPを2040年までに1,000兆円程度に押し上げることを示している。名目GDP成長率が3%程度の前提となる。2000年度以降の税収弾性値は2.8倍であり、2040年度の国の税収は148兆円程度となる。2033年度には2025年度の税収見込み78兆円を上回ることになる。財務省の前提の極端に低い税収弾性値1.2倍でも、2040年度には2025年度の税収見込みを上回ることになる。消費税の廃止によって、外需依存から内需拡大型の経済に転換し、2040年の名目GDPが1,000兆円まで増加することはより確からしくなる。消費税の廃止は、長期間で税収中立となる。将来の消費税率の引き上げ余地は、財政再建優先派が大好きな将来の財政余地ともなる。
衆参両院で自公政権が過半数の議席を失ったことで、石破政権が秋の臨時国会までに退陣することが既定路線になったようだ。衆議院選挙、都議会選挙、衆議院選挙と主要選挙で三連敗した石破総裁を、国民が直接的に選べない首相が選挙による審判の責任をとる憲政の常道に反すると、自民党の内部から降ろそうとする動きが大きくなることは避けられなくなっている。降ろさなければ、民意を疎かにした自民党の支持率の回復は見込めず、更なる退潮につながるだろう。石破政権が退陣しなければ、野党が連合して、衆議院で内閣不信任決議案を可決することになるだろう。夏に短期間の臨時国会が開催されれば、野党は不信任決議案の提出の是非で石破政権打倒の本気度が試されることになる。保守系の野党(国民民主党、日本維新の会、参政党など)は、リベラル・財政再建派である石破首相の政権との連立を否定している。自公政権を安定化させるため、保守系の野党との連立の拡大を模索するのであれば、自民党は総裁を保守・積極財政派に代えなければならない。連立の拡大を模索していく中で、新たな政権は、現行の財政再建優先路線から積極財政路線に転換していくとみられる。
国民民主党は、所得税の非課税枠の178万円までの引き上げと消費税率の一律5%までの引き下げを主張している。日本維新の会は、食料品の消費税率の2年間のゼロ%への引き下げを主張している。参政党は、消費税の段階的な廃止を主張している。自民党の中でも、積極財政議連(会員75名程度)が食料品の消費税率の恒久的なゼロ%の引き下げを主張している。まずは、臨時国会で、家計を支援する大規模な経済対策が実施されるだろう。そして、来年1月からの通常国会で審議される2026年度の本予算には、所得税の非課税枠の引き上げと、消費税率の部分的な引き下げが盛り込まれるだろう。
極端なケースとして、消費税が廃止されたとする。国と地方を合わせて、30兆円程度の税収がなくなる。財政収支のGDP比は5%程度の悪化となる。長期金利(10年金利)のマクロ・フェアバリューでは、企業貯蓄率と財政収支を合わせたネットの国内資金需要(対GDP比%、マイナスが強い)が-1%拡大すると、長期金利には0.04%の上昇圧力となる。消費税を廃止しても、直接的な長期金利の上昇圧力は0.2%程度となる。現在、日銀が金融緩和の修正をゆっくり行うことを織り込み、緩和的金融政策ダミーとして、長期金利を0.2%程度下押している。消費税の廃止によって、日本経済がデフレ構造不況を完全に脱却する期待が高まれば、日銀の金融政策の変化の期待で、この部分の下押し圧力は消滅するとみられる。
消費税廃止によって、ネットの資金需要の拡大と緩和的金融政策ダミーの消滅の合計で、長期金利には0.4%程度の上昇圧力がかかり、2%程度まで上昇する可能性がある。しかし、2%の物価安定目標が達成されることがより確かになるはずだから、物価目標対比で、実質長期金利が0%(名目長期金利-物価目標)に上昇するにすぎない。良い上昇で、長期金利の正常化だと判断される。日銀が2026年度末までの3回の利上げをせず、積極財政を推進する政府の経済政策の方針と整合的な金融政策運営を行えば、この長期金利の上昇は完全に打ち消すこともできる。日銀の1.25%までの利上げを織り込んでも、OECDは2026年の日本のネットの利払費の負担は0.5%(GDP比)にしかすぎず、先進各国と比較して極端に小さいと推計している。0.4%程度の長期金利の上昇圧力は、家計を救い、30年来のデフレ構造不況を完全に脱却するためには安いコストだ。
政府の骨太の方針と、自民党の参議院選挙の政権公約で、名目GDPを2040年までに1,000兆円程度に押し上げることを示している。名目GDP成長率が3%程度の前提となる。2000年度以降の税収弾性値は2.8倍であり、2040年度の国の税収は148兆円程度となる。2033年度には2025年度の税収見込み78兆円を上回ることになる。財務省の前提の極端に低い税収弾性値1.2倍でも、2040年度には2025年度の税収見込みを上回ることになる。消費税の廃止によって、外需依存から内需拡大型の経済に転換し、2040年の名目GDPが1,000兆円まで増加することはより確からしくなる。消費税の廃止は、長期間で税収中立となる。将来の消費税率の引き上げ余地は、財政再建優先派が大好きな将来の財政余地ともなる。
日本の年金制度は、日本経済が永遠にマイナス成長(-0.1%)となることを前提にし、年金基金が縮小していくとしている。物価安定目標と名目GDP成長率3%に相当する実質GDP1%程度の成長を前提にすれば、年金基金は発散して大きくなっていくことが分かっている。過度に悲観的な前提による消費税率の引き上げによって、経済が低迷し、社会保障制度が脆弱になる悲観バブルの原因となってきた。消費税を廃止し、1%の実質成長率がより確かとなれば、楽観シナリオが実現できる可能性が高まる。
日本の長期金利(国債10年金利)のマクロ・フェアバリューは、企業貯蓄率と財政収支を合わせたネットの国内資金需要(対GDP比%、マイナスが強い)、日銀の政策金利(コールレート)、日銀の長期国債買入れ額(対GDP比%)、米国10年国債利回り、緩和的金融政策のコミットメントの強さを表すダミー変数で推計できる。企業と政府の支出をする力であるネットの国内資金需要(マイナスが需要拡大、対GDP比%)が国内のマクロ経済要因、日銀の政策金利であるコールレートと長期国債買入れ額(対GDP比%)が金融政策要因、そして米国債10年金利がグローバルな金利動向の代理変数となる。さらに、政策金利を引下げるコミットメントを強めたマイナス金利政策実施後から、インフレ率を下回る政策金利を維持することで実質の政策金利がマイナスとなっている足元までの期間を緩和的金融政策として捉え、ダミー変数とする(2016年1-3月期以降を1、マイナス金利を解除した2024年1-3月期以降は0.75、追加利上げを行った2025年1-3月期以降は0.50、それ以外は0とする)。なお、一過性のショックなどで長期金利がマクロ・ファンダメンタルズから一時的に大幅に乖離した局面(外れ値)を、アップダミーとダウンダミーというダミー変数(モデルの標準誤差が±1を超えるときに1、それ以外は0)を入れることで取り除き、マクロ・ファンダメンタルズにより適合したフェアーバリューを算出する。
国債10年金利(%)=0.24 +0.68 コールレート (%)+0.28 米国債10年金利(%)-0.041 ネットの資金需要 (%GDP)-0.024日銀長期国債買入額(年率換算、対GDP比)-0.38緩和的金融政策ダミー +0.49 アップダミー -0.45 ダウンダミー; R2 =0.99(アップ・ダウンダミー修正前R2=0.98)
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