本記事は、多保 学氏の著書『1億円かけて学んだ成功する人がやっていること』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

2つを掛け合わせて考える
どんなビジネスでも、何か1つの技術を極めることは、成功するために不可欠です。しかし、1つの技術を極めただけで成功者になるのは難しいです。なぜなら、その技術を極めた人は他にも大勢いるからです。1つの技術だけでは競合の多いレッドオーシャンから抜け出すことはできません。
では、レッドオーシャンから競合の少ないブルーオーシャンへと抜け出すにはどうすればよいでしょうか。周囲の成功者を見ると、自分の得意な技術に他の技術を掛け合わせることでオンリーワンの存在になり、レッドオーシャンをブルーオーシャンに変えている人が多いのです。
例えば、私のいる歯科業界は典型的なレッドオーシャンで、全国にはコンビニエンスストアの数を約1万1,000も上回る約6万7,000軒もの歯科医院が存在しています(2024年)。
多くの歯科医師が苦労する理由は、一般歯科診療という1つの技術しか追求してこなかったからです。そのため私は、一般歯科診療だけでなく、歯周病専門医として知識・技術を突き詰め、日本歯周病学会の認定研修施設として、医療従事者を育てる教育機関にすることで、さいたま市内に何百カ所とある歯科医院の中で1〜2カ所しかない独自の存在になっています。
さらに新たに、歯科開業医を対象とした技術と経営のオンラインサロンを始めました。歯科技術だけをテーマにしたサロンはすでにありますが、そこに経営の要素を加えたものはほとんどありません。2つの要素を掛け合わせることで、オンリーワンを実現しています。
友人で元サッカー日本代表の鈴木啓太さんも、自分の専門技術に他の技術を掛け合わせたオンリーワンな存在の一人です。現役時代から引退後のキャリアを考えてきた鈴木さんは、現役引退と同時に、アスリートとしての知識と経験をもとに、腸内環境に着目したヘルスケア・ビジネスを立ち上げました。
腸内細菌の研究をするためには、人間のうんちを分析する必要があります。
日々のパフォーマンスを最大限に発揮するアスリートと、普通の生活をしている人とでは腸内細菌の数や分布が違うのではないかという仮説から、アスリートたちの腸内細菌を一般の人に取り入れることにより、免疫力などが上がるかもしれないと考え、うんち採取を始めたそうです。
もし鈴木さんが名声のないただの起業家であったなら、いきなり有名アスリートたちのうんちを集めるのは極めて困難であったと思いますし、自分自身がアスリートだったからこそのアイデアで立ち上げた事業だと思います。
今では様々なアスリートの腸内細菌を収集して研究を重ね、その成果を基に人々の健康に寄与する事業を展開しています。1つの技術をただ極めるだけでなく、他の技術を掛け合わせることでオンリーワンを目指す。それが成功するための近道なのです。
自分の得意分野に集中する
成功する人がビジネスをする上で重要視するのが「ニッチ」です。ニッチとは「隙間」のことで、まだビジネスとして確立していない分野を意味します。お金を稼いでいる人たちの多くは、自らの強みとなるニッチな分野をつくり出し、同時に不得意なことは他人に任せる仕組みをつくっています。
コンサル業界でいえば、歯科医院の経営に詳しいコンサルタントはたくさん存在しますが、歯科医師でありながらコンサルタントを行う私はニッチな存在です。通常のコンサルタントは、実際には歯科医院を経営しているわけではないので、アドバイスの重みが違います。
一方で、患者さんとのトラブルや従業員の労務問題は社会保険労務士、税金などは税理士・会計士、法的な問題は弁護士など、分野ごとにスペシャリストに任せています。不得意なことはとことん他の人に任せることによって、自分自身が得意なことに専念することができます。
歯科医療でニッチな分野といえば、小児歯科専門医院です。小児歯科のみを専門としている歯科医院は非常に少ないのが現状です。
その理由として、子供の患者さんは「なかなか言うことを聞かない」「泣く」「騒がしい」「保険点数が低い」といったことが挙げられます。
私はここがニッチだと思い、子供たちのための小児歯科専門医院を開設しました。
私たちの不得意な部分は、どうしても言うことを聞いてくれず診察ができないお子さんや、複雑な矯正治療が必要なお子さんなどへの対応です。この場合、ここを得意とする大学病院などに紹介するようにしています。まさに不得意な分野は徹底的に他人に任せ、得意なことに集中する仕組みです。
友人に、ニッチな分野で大成功した経営者がいます。
彼は、建設現場で使う足場などの仮設機材をレンタル会社に貸し出す「卸レンタル」を行う会社の経営を、創業者から引き継ぎました。それまで、その会社は先代の社長が幅広い機材を取り扱っていました。
建設現場で使う足場などの仮設機材は大きく分けて室外足場系機材と室内足場系機材に分けられるそうです。友人は機材の稼働率と利益率のバランスを熟考し、稼働率が低いため他社ではあまり取り扱わない室内足場系機材に特化することで、利益の出せる体質をつくりました。
そして拠点を全国展開することで、室内足場系機材では業界最大規模の卸レンタル会社に成長させました。取り扱う商材をニッチな分野に絞り、それ以外の分野は他社に任せることで成功したケースといえます。
自分の強みになりそうな、あるいは夢中になって取り組めそうなニッチな分野を探してみましょう。

医療技術だけでなく、成功者の思考法を積み重ね行動した結果、医院は年商12億を達成。現在は複数の株式会社を経営し、人々の健康を守る使命のもと、予防歯科の重要性を広める活動や、コンサルティング業を通して経営に悩む歯科医師の支援に尽力している。著書は『0歳から100歳までのこれからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)、他に専門書の共著書は20冊以上。
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