本記事は、菊池 正則氏の著書『残業ゼロのすごい仕組み』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

生成AIは残業ゼロの強力な武器になる
次のようなシーンを想像してください。新規のお客様のアポイントが取れて、急遽、明日プレゼンテーションの時間をもらえることになりました。これまで取引のない業界のお客様なので、成約に漕ぎつけたらその業界を開拓する足がかりになります。絶対に落としたくないプレゼンです。
鍵になるのはプレゼン資料です。会社案内や商品紹介のパンフレットはあります。しかし、この種のパンフレットは万人受けするようにわかりやすさ優先で作成しているため、そのまま渡してもお客様に刺さるとは思えません。プレゼンを成功させるためには、そのお客様にカスタマイズしたプレゼン資料が必要です。
ここで立ちはだかるのが残業ゼロの壁です。いいプレゼン資料をつくるには、まずお客様の会社の特徴や現状、業界の動向などをリサーチしなければなりません。さらに集めた情報をもとに資料をつくりこむことも求められます。
それらの作業にかかる時間は、ざっと見積もってリサーチに半日〜1日、資料のつくりこみに半日で、計1〜1日半。明日の訪問に間に合わせようとするなら、逆立ちしても残業確定です。
さて、このような場面でみなさんならどのような決断を下すでしょうか。
我が社は残業ゼロに取り組んでいるから、中途半端な資料でお茶を濁して、出たとこ勝負に賭けるのか。それとも成約の確率を少しでも高めるために、残業ゼロの取り組みを棚上げするか。経営者として悩ましいところです。
実はみらいパートナーズでは悩む必要がありません。
なぜなら、プレゼン資料は3分で作成できるから。アポが取れたのが午後でも、その日のうちに資料が完成して次の日はお客様のもとに直行できます。
普通なら半日かかるようなプレゼン資料の作成が、なぜわずか数分でできるのか。それは生成AIを使っているからです。
具体的にツール名をあげると、我が社がプレゼン資料作成に「Felo AI Search」や「Gamma」というツールを使用しています。この生成AIに自社のパンフレットのPDFや、HPのURL、さらにターゲットになるお客様や業界などの情報をアップロードすれば、あっという間にプレゼン資料ができあがります。
資料作成の準備段階でも生成AIをフル活用しています。従来、お客様や業界全体、お客様のライバル会社などの情報は、いちいち検索して収集しなくてはいけませんでした。しかし、今は検索ではなく、生成AIに質問すればいい。
「A社の情報をまとめてください」
「A社、あるいはその業界は、どんな課題を抱えていますか」
このように質問していけば、ほしい情報がさまざまなページを閲覧することなく手に入ります。
さらに、このように質問することも可能です。

「A社に向けた〇×サービスのプレゼン資料をつくりました。何か足りない情報があれば教えてください」
人間ひとりが知っていること、考えられることには限界があります。一方、生成AIはネット上のさまざまな情報にアクセスして学んでいます。それゆえ自分ひとりでは気づかなかった視点でアドバイスをしてくれることが多々あります。
某省庁にプレゼンすることになったときの話です。いつものように「Felo AI Search」でプレゼン資料をつくっていたら、
「官公庁には、このフローで説明するといいでしょう」
「官公庁向けなので堅実な表現にしました」
と工夫してくれました。いつもお客様によって資料をカスタマイズしていますが、官公庁に響きやすい言い回しまで考えてくれるとは思っていなかった。クオリティーは新人よりずっと上、ベテラン社員並みです。
こうした事前リサーチ&資料の磨き込みの作業を含めても、プレゼン資料を完成させるのに2時間もかかりません。それまで1日〜1日半かかっていたことを思うと雲泥の差です。
効率化されたのはプレゼン資料の作成だけではありません。メールの返信、議事録の作成、動画の作成、SNSの運用、経理・給与計算業務など、みらいパートナーズはいまや多くの作業を生成AIにやらせています。
それらの業務を片付けるために、従来は時間単位、日単位で時間を費やしていました。一方、生成AIを使うと秒単位、分単位で終わります。実際の短縮時間はこの後それぞれの活用法ごとに紹介していきますが、会社全体では少なく見積もっても月230時間は短縮されています。まさに残業ゼロの切り札です。
生成AIほど簡単なITツールはない!
生成AIと聞いて、最先端の技術は難しくて中小企業には使いこなせないと思い込む経営者もいるでしょう。
その認識は今すぐ改めるべきです。生成AIは、むしろ誰でも簡単に使えることが特徴の1つ。ITツールを使うハードルは下がったのです。
従来は何かの作業をソフトウェアで効率化するなら、プログラマーを雇ってプログラムを書くか、専用のITツールを導入して操作方法を覚えなくてはなりませんでした。
それに対して生成AIは、プロンプトと呼ばれる指示を自然言語(人間が日常的に使っている言語)ですればいい。プログラマーのようにプログラミング言語を覚える必要もなければ、エクセルを使いこなすために関数を覚える必要もありません。多少のコツはあるものの、日常会話ができれば誰でも生成AIを使えます。
コスト面でもハードルは高くありません。将来はわかりませんが、いまのところほとんどの生成AIには無料版が用意されていて、基本的な機能を使えます。より高度な機能がほしかったり大量に使いたければ有料版にアップグレードすることになりますが、費用は数千〜数万円のものが多く、システムを構築するよりずっと安くつきます。我が社はすべて有料版を使用しています。
中小企業の中には、社員のITリテラシー(ITを使いこなす力)が低いこと、そして導入コストや月々のコストが高いことを理由にデジタル化に積極的に取り組んでこなかったところも多いと思います。
しかし、生成AIの登場で、これまでITツール導入を阻んできた壁はグっと低くなりました。ITによる効率化に躊躇していた企業は、今こそ試すチャンスです。

株式会社ロジックスサービス代表取締役
経済産業省推奨資格ITコーディネータ
大手メーカーでシステムエンジニア(SE)としてキャリアをスタートした後、運送会社の二代目社長として経営を引き継ぐ。その後、独立して起業。DX化やIT経営に積極的に取り組み、社員教育に力を注いだ結果、残業ゼロの企業文化を確立。新卒採用においてはマイナビ仙台9年連続人気No.1の実績を誇る。東北では業界初のDX認定。300社超えのITコンサルティング、DX(デジタル・トランスフォーメーション)サポートサービス、そしてBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供し、経営者の課題解決をサポート。特に、経済産業省が推奨するITコーディネータとして、実践的なアドバイスを行っている。
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