本記事は、菊池 正則氏の著書『残業ゼロのすごい仕組み』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

大幅ベースアップで残業代ゼロを損失補填
残業ゼロを目指すにあたって不安なことが1つありました。残業代目当ての社員が困らないかという点です。
昨今の社員はお金より働きやすさを優先する傾向があります。しかし、全員がそうだとは限らないし、働き方をより重視するというだけであり、賃金は安くてもいいと考えているわけではありません。残業ゼロで手取りが減ることを嫌って、辞めていく社員がいるのではないかと心配だったのです。
結果をいうと、残業代がなくなったことを理由に退職した社員が1人だけいました。
予想していたより少なかったですが、そもそも人材戦略で残業ゼロを打ち出したことを考えると、社員の退職はやはり複雑な思いでした。
賃金を重視する社員にも残業ゼロを受け入れてもらうにはどうすればいいのか。答えは1つ。残業代がなくなる穴埋めとして別の形で賃金を増やすしかありません。
そこで決断したのがベースアップ月2万円です。
みらいパートナーズは以前からコツコツとベースアップをやってきました。ただ、その額は数千円レベルであり、残業ゼロの穴埋めになるものではありませんでした。
新たな退職者を出さないためには、インパクトのあるベースアップが必要です。
24年の春闘(連合調査)では、物価上昇の影響もあって大手企業は平均15,874円、中小企業は平均11,358円のベースアップを行いました。少なくてもそれを上回る水準でなければ社員の心には響きません。そう考えて、24年は中小企業平均の2倍近い19,000円、翌25年は月2万円のベースアップを実現しました。
これ一発で手取り減をすべてカバーできるわけではありません。しかし近い水準でベースアップを続けていけば、数年で手取りは以前より多くなるはずです。残業がなくなって月々のお給料が増えるなら文句はないでしょう。

生産性を高めれば残業ゼロでも昇給できる
経営者として頭が痛かったのはベースアップの原資です。残業をゼロにすれば仕事の処理量が落ちて売上は下がります。社員の基本給を引き上げるのはいいのですが、売上が下がるのにベースアップすれば利益が減って赤字になりかねない。
ただ、これは杞憂でした。先にも数字を示しましたが、残業ゼロにしても売上は減るどころか増えたからです。
振り返ると、残業が許されていたコロナ前は、社員も残業することを前提にして余裕のあるスケジュールを組んでいました。その気になれば8時間で終わる仕事を、9〜10時間と見積もって取り組むのです。
手を抜きたい、サボりたいという気持ちがあったわけではないでしょう。おそらく、自分が本気になれば8時間で終わらせることができると気づいていなかっただけだと思います。いずれにしても、結果として遊んでいたことは事実であり、残業禁止にしても同じ量の仕事をこなせました。
また、残業ゼロ宣言を機に生産性を高めるさまざまな施策を打ったことも大きかった。社員が働く環境をしっかりと整えれば、短い時間でも大きなアウトプットを出せるのです。
残業をゼロにしたら売上が落ちて成長が止まるというのは私の思い込みでした。実際はその逆であり、だからこそ月2万円の大胆なベースアップに踏み切れたのです。

株式会社ロジックスサービス代表取締役
経済産業省推奨資格ITコーディネータ
大手メーカーでシステムエンジニア(SE)としてキャリアをスタートした後、運送会社の二代目社長として経営を引き継ぐ。その後、独立して起業。DX化やIT経営に積極的に取り組み、社員教育に力を注いだ結果、残業ゼロの企業文化を確立。新卒採用においてはマイナビ仙台9年連続人気No.1の実績を誇る。東北では業界初のDX認定。300社超えのITコンサルティング、DX(デジタル・トランスフォーメーション)サポートサービス、そしてBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供し、経営者の課題解決をサポート。特に、経済産業省が推奨するITコーディネータとして、実践的なアドバイスを行っている。
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