本記事は、赤羽 雄二氏の著書『7日でマスター 瞬時(すぐ)に動く技術』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

Give,give,give,and give
「Give,give,give,and give(ギブ、ギブ、ギブ、アンドギブ)」という言葉を聞いたことはないと思います。でも、何となく意味はわかりますよね。
これは、私が最近、事あるごとにお伝えしている言葉です。Give and Take(ギブアンドテイク)ではなく、「Give,give,give,and giveというくらいGiveしよう」「Takeなど考えながらGiveするな、そのほうが結果はよっぽどよくなる」という意味で言っています。
Give and Takeという言葉は、私にはちょっと残念な考え方に思えます。「ちょっと何かを与えたら、すぐリターンを考えるのか、そんなにすぐリターンを求めてどうするんだ」という感じです。そのような魂胆で人との関係がうまくいくとはとても思えません。
小さいことを考えず、思いっきりGive,give,give,and giveをしましょう。
そうすれば、後で勝手にいいことが起きます。
この考え方が弱肉強食の欧米でどこまで通用するかですが、14年間のマッキンゼーでの経験では、十分通じると思います。ニューヨーク、ロンドン、パリ、シドニーなどでもカンファレンスがあり、多くの欧米人のマッキンゼーの同僚ともやりとりしていたので自信を持って言えます。最近までのインドやベトナムでのそれぞれ3年間の経営支援の経験でも、もちろん同様です。
Give,give,give,and giveのメリット
Give,give,give,and giveには多くのメリットがあります。
① 味方が増える
支援してくれる人、味方になってくれる人がどんどん増えるので、仕事がスムーズに進みます。思った以上に進みます。そんなにやってくれて申し訳ない、というほど進みます。相手は恩を感じ、お返ししたいと思っているからですね。
② 理解してもらえる
利害関係や理解不足などで反対しても、誰かが勝手に調整してくれたり説得してくれたりします。普段、恩恵を感じている人が、こちらの趣旨をよく理解してくれて、誤解を解いてくれるからだと思います。当然、敵が少なくなります。こうなると、もう「人徳」とでも言ったほうがいいかもしれません。
③ 邪魔がなくなる
誰かが足を引っ張ってくるとか、陰で悪口を言ったりするとかが減っていくので、仕事以外のところで気分が悪くなることが減ります。これはかなり大きいです。仕事をする上で、生きていく上で、気分が悪くなることは少ないほうが楽です。
④ チームワーウが強まる
チームメンバーがより本気で取り組みますし、自己中心的な言動をしなくなりますので、チームワークが強化されます。やりたいことがどんどん実現していきます。
こういう話をすると、必ず「どこまでGiveすればいいのでしょうか。負担にならないのでしょうか」と聞かれますが、私の答えは「はい、どこまでもGiveし続けてください。そうすれば、勝手にうまくいきます」というものです。
全然問題ありません。
「ここまで」とか線を引くと、余計に打算が入って不自然になります。
普段言いたいことを言えない人は要注意
ただ、普段から我慢ばかりしている人、言いたいことを言えない人は、人に利用されるリスクがあります。悪い意図がない人からも、都合よく思われることもあるでしょう。
その場合は要注意です。
我慢を重ねて、出血サービスでGiveを続けようという話では全くありません。
我慢ばかりしている人、言いたいことを言えない人は愛着障害が大きな原因になっています。自分に痛みのない範囲でGive,give,give,and giveをしてください。
あくまで、「自分にとって痛みがない範囲で」が鍵です。自己犠牲をしようという話ではありません。
応援してくれる人とだけ一緒にいる
応援してくれる人とだけ一緒にいることも、とても大切です。応援してくれるかどうかはいくつかの段階があります。
① 全面的に応援してくれる人
一番いいのは、どういう状況であろうと全面的に応援してくれる人です。こちらを信頼してくれて、突拍子のないことを言い出しても、無茶を始めても、話を聞いてくれるし、応援してくれます。十分には理解できなくても、足を引っ張るようなことはいっさいしません。
② 応援の姿勢を見せる人
次にいいのは、状況によって、ある程度応援してくれる人です。いつもいつもではなくても、状況によって応援してくれます。全面的に諸手を挙げてではないにせよ、気持ちの支えになります。全部応援してくれなくても、ありがたい存在です。
③ 否定してこない人
その次は、応援をしてくれるわけではないが、特に否定的ではない人です。こういった存在もありがたいです。こちらも精神的に頼っているわけではなく、路傍の人、という感じですが、少なくてもブレーキにはなりません。かなり革新的なことを言ったりやったりしているので、普通の人には理解しづらいことがあるかもしれないのに、あれこれ文句を言ってこないので、ありがたいです。
④ 否定してくる人
まずいのは、否定的な発言をしたり、足を引っ張ったりしてくる人です。深く考えた上でそういうことをするわけではなく、むしろ内容にかかわらず、気に食わないから、気にいらないからネガティブな態度を全開にしてきます。困った存在です。
⑤ 攻撃してくる人
最悪なのは、「そんなの絶対無理だ。やるだけ無駄だ。早くやめちまえ」と罵倒し、邪魔をしてくる人です。利害関係が大してなくても、一方的に頭ごなしに否定してきます。こういう人は全力で避けたほうがいいです。進むはずのものも進まなくなってしまいますから。
上司がもし否定的で攻撃してくる人なら、ろくなことはありません。努力しようにも努力しづらい、辛い状況になります。そういう場合は、社内異動や転職を考えたほうがいいかもしれません。そういう上司とは、仕事以外の話はしないほうがいいでしょう。
両親が否定的な人にもかかわらずまだ実家に住んでいるなら、一刻も早く出たほうがいいでしょう。夫・妻、彼氏・彼女が否定的な人なら、一緒にい続けるべきか真剣に考えたほうがいいです。自信をますます失い、だんだん動けなくなって、いいことはありません。
「応援してくれる人とだけ一緒にいる」というと、「何を甘えたことを」という人が必ずいそうです。
でも、本当にそうでしょうか。なぜ否定的で、人格攻撃もしてきて、自信、自己肯定感をこわしてくる人から距離を置いたらいけないのでしょうか。
自分の身は自分で守らないといけません。
自分の将来も、自分にかかっています。
距離を置くことが現実的に難しいことはよくあります。でも、だからと言って、「我慢すればいい、我慢すれば自然に解決する」ということにはなりません。

経営戦略の立案と実行支援、新組織の設計と導入支援、マーケティング、新事業立ち上げなど多数のプロジェクトをリード。マッキンゼーソウルオフィスをゼロから立ち上げ、120名強に成長させる原動力となるとともに、韓国LGグループの世界的躍進を支えた。
マッキンゼーで14年勤務した後、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命として、ブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。ベンチャー経営支援、中堅・大企業の経営改革、経営幹部育成、新事業創出に取り組んでいる。コロナ前はインド、ベトナムにも3年間毎月訪問し、現地企業・ベンチャーの経営支援に取り組んだ。
東京大学、電気通信大学、早稲田大学、東京電機大学、北陸先端科学技術大学院大学講師としても活躍。下関私立大学客員教授。
著書は、44万部突破の『ゼロ秒思考』を始めとして、国内27冊、海外30冊、計138万部。
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