この記事は2025年10月10日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:高市政権を支える責任ある積極財政推進議連と自国連立政権への動きが加速」を一部編集し、転載したものです。

アンダースロー
(画像=years/stock.adobe.com)
  • 自民党総裁選で、高市氏を強く支え、勝利の原動力となったのは「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の議員たちだ。積極財政は旧安倍派が中心であるというのは間違った見方であり、議連のメンバーは派閥横断的である。高市氏の「責任ある積極財政」の主張は、この議連の名前と同じである。

  • マクロ経済政策の勉強を続けた結果、多くの若手議員が積極財政派となり、議連は拡大してきた。積極財政派は理論武装をしっかりしており、積極財政についてまわる金利、インフレ、政府債務などの問題についても、解決策が用意されている。議連の議員の経済政策の主張は、高市氏の政策集に織り込まれている。

  • 積極財政派の成長が、官僚が味方をしている財政健全化派や新自由主義派に対して勝利し、高市総裁の誕生につながった。官僚の論理ではなく、国民の方を向く政治主導の経済政策運営に道を開く動きだ。積極財政を支持する国民の声を反映する党員の圧倒的な票の獲得に貢献し、高市氏の勝利につながる動きとなった。来年の骨太の方針において、官民連携の成長投資の更なる拡大と、供給能力の拡大にそった需要の拡大を可能にするため、成長投資まで税収でまかなう必要があるなどの欠陥がある既存のプライマリーバランスの黒字化目標に代わる、新たな財政規律のあり方の議論が大きな戦いとなる。

  • 政治資金問題への対応の違いで、公明党が連立政権から離脱した。野党が統一候補を担げる状態ではないため(公明党は党首を候補とする)、臨時国会では高市氏が首相に指名される可能性は引き続き高い。衆議院は解散によって政権が過半数の議席を取り戻せる機会がいつでもあるため、解散のない参議院で過半数の議席を確保することが、政権の安定には重要となる。国民民主党と連立を組めば、参議院の過半数の議席を確保することができるため、自国政権の樹立に向けた動きが加速するだ ろう。

  • 国民民主党は、積極財政と高圧経済の方針を、高市氏と共有している。自民党の議連の議員は、政権を安定させるため、国民民主党の減税策を丸のみすることに賛同している。秋の臨時国会の経済対策の補正予算と年初の通常国会の2026年度の政府予算に、国民民主党の多くの政策を盛り込んでいくとみられる。公明党と対立してきた日本維新の会や、参政党との連携も模索していくことになるだろう。公明党も予算成立には閣外協力をする可能性もある。自国政権では衆議院の過半数の議席がないため、国民生活の向上への試みを明らかにした後、6月の通常国会末に高市首相が衆議院を解散し、政権を安定化させる可能性がある。すべての野党との連携が不調となった場合、臨時国会で衆議院が解散されるのがリスクシナリオだ。


自民党総裁選で、高市氏を強く支え、勝利の原動力となったのは「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の議員たちだ。若手を中心に74名(2024年衆議院選挙前)のメンバーが議連に参加している。高市氏の20名の総裁選推薦人の内、議連の議員は12名も占めている。積極財政は旧安倍派が中心であるというのは間違った見方であり、議連のメンバーは派閥横断的である。高市氏の「責任ある積極財政」の主張は、この議連の名前と同じである。議連の議員の経済政策の主張は、高市氏の政策集に織り込まれている。

議連の議員が、マクロ経済政策の勉強を続けてきたのは、安倍元総理の強い問題意識からだ。政治家の仕事は、地元の陳情を受けるなど、ミクロに偏りやすい。国民を豊かにするのが政治家の仕事であるから、若手の政治家はマクロ経済政策をしっかり勉強すべきであるという考えだ。マクロ経済政策をしっかり勉強することが、政治家の国家観を作ることにもなる。マクロ経済政策の勉強を続けた結果、多くの若手議員が積極財政派となり、議連は拡大してきた。

積極財政派の高市氏の勝利に、議連の議員が貢献したことは、安倍元総理が後世のために蒔いた種が結実した結果である。積極財政派は理論武装をしっかりしており、積極財政についてまわる金利、インフレ、政府債務などの問題についても、解決策が用意されている。議連の議員の経済政策の主張は、高市氏の政策集に織り込まれている。官民連携の投資・需要の拡大策のグローバルな政策手法の潮流の変化や、資金循環統計ベースの純債務残高GDP比を財政の目安にすること、政府・日銀の連携を求め日銀法第四条の重要性などを含む。

積極財政派の成長が、官僚が味方をしている財政健全化派や新自由主義派に対して勝利し、高市総裁の誕生につながった。官僚の論理ではなく、国民の方を向く政治主導の経済政策運営に道を開く動きだ。積極財政を支持する国民の声を反映する党員の圧倒的な票の獲得に貢献し、高市氏の勝利につながる動きとなった。唯一残る派閥である麻生派の動きだけに注目するのは、あまりに皮相的な政治分析だ。来年の骨太の方針において、官民連携の成長投資の更なる拡大と、供給能力の拡大にそった需要の拡大を可能にするため、成長投資まで税収でまかなう必要があるなどの欠陥がある既存のプライマリーバランスの黒字化目標に代わる、新たな財政規律のあり方の議論が大きな戦いとなる。

政治資金問題への対応の違いで、公明党が連立政権から離脱した。野党が統一候補を担げる状態ではないため(公明党は党首を候補とする)、臨時国会では高市氏が首相に指名される可能性は引き続き高い。衆議院は解散によって政権が過半数の議席を取り戻せる機会がいつでもあるため、解散のない参議院で過半数の議席を確保することが、政権の安定には重要となる。国民民主党と連立を組めば、参議院の過半数の議席を確保することができるため、自国政権の樹立に向けた動きが加速するだろう。

国民民主党は、積極財政と高圧経済の方針を、高市氏と共有している。自民党の議連の議員は、政権を安定させるため、国民民主党の減税策を丸のみすることに賛同している。秋の臨時国会の経済対策の補正予算と年初の通常国会の2026年度の政府予算に、国民民主党の多くの政策を盛り込んでいくとみられる。公明党と対立してきた日本維新の会や、参政党との連携も模索していくことになるだろう。公明党も予算成立には閣外協力をする可能性もある。自国政権では衆議院の過半数の議席がないため、国民生活の向上への試みを明らかにした後、6月の通常国会末に高市首相が衆議院を解散し、政権を安定化させる可能性がある。すべての野党との連携が不調となった場合、臨時国会で衆院が解散されるのがリスクシナリオだ。

図:衆議院と参議院の会派別議席数

図:衆議院と参議院の会派別議席数

会田 卓司
クレディ・アグリコル証券 東京支店 チーフエコノミスト
松本 賢
クレディ・アグリコル証券 マクロストラテジスト

本レポートは、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。また、本レポート中の記載内容、数値、図表等は、本レポート作成時点のものであり、事前の連絡なしに変更される場合があります。なお、本レポートに記載されたいかなる内容も、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。