本記事は、川尻 征司氏の著書『GLOBAL CITIZEN グローバル・シチズン 世界標準の自分らしく夢を叶える7ルール』(扶桑社)の中から一部を抜粋・編集しています。
お金だけにフォーカスしている人の将来は危うい
「老後2,000万円問題」や「FIRE」という言葉に代表されるように、最近は「資産と収入を増やすことに尽力すべきだ」という風潮があります。
FIREとは、経済的自立(Financial Independence)と早期退職(RetireEarly)という2つの言葉の頭文字から作られた造語です。
確かに、安定した老後を過ごすためにはまとまった金融資産が必要ですし、早期に仕事を引退するためには、若いうちから収入を増やす必要があります。
しかし、私は資産と収入を伸ばすことだけにフォーカスしている人の将来は危ういと考えています。
家庭や社会で最も大切なものを失うリスクが高くなるからです。
具体的には、「人間関係を失うこと」「健康を失うこと」です。
スティーブ・ジョブズはすい臓ガンになった末期のとき、「自分の代わりに死んでくれる人はいない」という言葉を残していますが、「健康を害することはすべてを手放すこと」と同じです。
人間関係や健康をおろそかにする人たちは、例え巨万の富を築いたとしても、寂しい晩年を迎えるしかありません。
令和時代は「ゆらぎの時代」とも呼ばれていますが、予測のつかない今だからこそ、自分自身の身体をいたわり、信頼できる人とのつながりを大切にするべきではないでしょうか?
現代社会において、お金に固執すればするほど資産と収入は消えていきます。
その理由は次の3つです。
1.AIがビジネスの自動化を推進する
これからの時代には多くの職種が自動化され、AIにとって代わられるでしょう。
今の働き方や収入に執着する人ほど、変化の時代の影響を受けやすいでしょう。
2.経済が変化し、ビジネスにはリスクがつきまとう
世界経済は常に変化しています。新興国の台頭や企業の合併・買収などにより、一定の収入や資産を維持することは難しくなります。そのため、ひたすら資産や収入だけを追求する人生戦略は失敗するリスクが高いと言えます。
3.自分の才能に投資する時代になる
人材の競争力が激化します。今までの会社はチームワークや規律正しいマネジメントが求められていましたが、これからの会社は創造力や柔軟性、コミュニケーション能力など、従来の管理職とは異なる能力が求められるようになります。
「やわらか頭」のスキルを身に付け、自己成長に努めることが重要であり、お金に固執する人は時代に取り残されます。
つまり、テクノロジーが進歩し、社会の変化が激しくなるため、「表面的な資産や収入はあまり頼りにできない時代が来る」というのが私の予想です。
これからの時代には、人間関係や健康の重要性がますます増していくでしょう。
- 人間関係や健康など、お金で買えないものが価値を持つ。
- 「ゆらぎの時代」には、お金を失うリスクも高まる。
「最高残高」で死ぬか、「最低残高」で死ぬか
「DIE WITH ZERO」という言葉が流行っています。
死ぬときまでにすべてのお金を使い切ってしまおうという考え方を表したものです。
日銀金融広報中央委員会が調査した「家計の金融行動に関する世論調査」(2021年)によると、平均値で、日本人は60代で3,000万円もの資産を残しています。
つまり、日本人は死ぬときに多額の財産を残して亡くなるのです。
一方、欧米ではどうかというと、特にラテン系では、「ケ・セラ・セラ」(なるようになるさ)の考え方で、死ぬときに全財産を使い切って亡くなります。
多額の財産で亡くなる人生、財産を残さず亡くなる人生、どちらが幸せでしょうか?
仕事や勉強に対して、勤勉で真面目な日本人は、貯金や投資を好みます。
なぜかというと、本を読んでいると貯金や投資をすすめるものが多く、それに影響されるからです。
かくいう私も若い頃は、稼いだお金はなるべく使わず、将来に備えようと考えていました。
その後、私は長い時間をかけて人間観察をして、1つの事実に気づきました。
それは、「どんどんお金を使う人は楽しく暮らしていて、人生に悩みを抱えていない」という事実です。
貯金派は、「将来困らないように」と考え、節約生活をするのですが、我慢しているのがストレスになり、逆に日々の生活に困ったりしています。
私は、自分が幸せになり、周りの人たちが喜ぶのならば、お金は惜しみなく使ったほうがいいと思っています。
日本は素晴らしい国で、多額の借金を背負っても「自己破産」という救済制度があり、また、配偶者との離婚や死別で生活が困窮しても、「生活保護」という措置があります。
医療費も「高額療養費制度」があり、1ヶ月の医療費の自己負担限度額を超えた場合、国が肩代わりしてくれます。
高齢者になっても安心して暮らせる国が日本なのです。
風呂付きの家に住んで、毎日、ごはんとみそ汁と焼き魚と納豆を食べて、スマホとテレビがあれば、何不自由なく幸せに暮らすことができます。
私が住んでいたフィリピンと比べたら、ありえないくらい「幸せインフラ」が整っている国なのです。
もう1つ、世界の富裕層を見ていて気づいたことがあります。
それは、60代から70代になると、庶民でもお金持ちでも似たような生活になるということです。
朝起きて犬を散歩させたり、近所をジョギングしたり、スーパーで好きな食材を買ってきてバーベキューをやったり、DVDを借りて映画を鑑賞したり、好きな音楽をダウンロードして聴いたりと、生活はほとんど変わりません。
違いは、広い家に住んでいるかどうか、子どもに教育費をかけるかどうかだけで、あまり大差のない暮らしぶりなのです。
お金を使わないと「経験値」も貯まりません。
過去の自分を振り返ると、何も行動せずにお金を守ることだけに専念していたのは、愚かな生き方だったと反省しています。
アフリカに「泥が乾く前に作業しなさい」ということわざがあります。
人生は有限です。今のうちからお金を経験値に変えていくほうが、有意義な人生につながるのではないでしょうか?
- 自分や周りの人の幸せのためならお金はどんどん使う。
- お金を使うことで経験値が貯まる。
1982年、兵庫県芦屋市生まれ。
2022年3月に設立した公益財団法人KAWAJIRI FOUNDATIONでは、学業優秀でありながら経済的な理由により学費の支弁が困難な大学生に川尻育英奨学金を給付し、支援している。
また、世界をつなぐアートプロジェクト「DANDELION PROJECT」のサポートや「tHE GALLERY HARAJUKU」の設立など、アート&カルチャーの新潮流を作るアーティストの支援を行う新世代ギャラリストとしても活動している。
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