本記事は、川尻 征司氏の著書『GLOBAL CITIZEN グローバル・シチズン 世界標準の自分らしく夢を叶える7ルール』(扶桑社)の中から一部を抜粋・編集しています。
あなたの財産をがっちり守る「ファイナンス・リテラシー」
ケネディ大統領の父で投資家のパトリック・ケネディは、ある朝、靴磨きの少年にいつも通り靴を磨いてもらっていました。
そのとき、少年が「おじさんも株を買いなよ」と言ったそうです。
それを聞いて、パトリックは青ざめました。
靴磨きをしている子どもまでが株の話をしたので、彼は「ヤバい」と思ったのです。みんなが株が上がると思い、どんどん買い注文を入れたので株価はピークになりました。パトリックは、それを大暴落の前兆だと予測しました。
「そろそろ相場の末期だ」
彼は大量に持っていた株を全部売り払い、その後やってくる大暴落の難を逃れ、巨額の利益を手にしました。
いつの時代にも必ず「お金の節目」はあります。
機を見るに敏な人は、時代の風の流れを読む能力、風に乗る能力、乱気流に巻き込まれそうなときには安全着陸する能力を持っています。
日本人は世界の中でも、特に「お金のリテラシー」が低い国です。
リテラシーとは「情報の取捨選択能力」のことですが、ファイナンス・リテラシーとは、「お金を増やしたり守ったりする力」のことです。
日本人はアジア圏におけるファイナンス・リテラシーに関する調査で、タイ・中国・インドより低く、14ヶ国中で最下位の14位です(MasterCard Worldwide調べ)。
ちなみに、1位が台湾、2位がニュージーランド、3位が香港となっています。
なぜ、日本人が世界の中でファイナンス・リテラシーが低いかというと、学校教育でお金との付き合い方を教えないからです。
世界に目を向けると、30年前から多くの大学で「アントレプレナー学科」が創設され、投資家や経営者を養成しています。しかし、日本の大学には未だほとんどと言っていいほど、「アントレプレナー学科」はないのです。
まだまだ、日本では学校教育でお金の授業を行っていないのですが、台湾では高校の家庭科の授業に財テク教育が導入されています。「これは、さすがにまずい」ということになり、日本でも高校の家庭科の中でお金の授業が始まっています。
私は、このファイナンス・リテラシーを持つことがとても大切だと思っています。ファイナンス・リテラシーが低い人は、お金を守ることもできず、目減りしたり、誰かに奪われたり、ムダなものに投資してしまいます。
逆に高い人は、お金を守ること、増やすこと、きちんと管理して世の中のために還元することができます。お金の知識があるだけでなく、実際にお金を使いながら知恵を身に付けることです。
例えば、お金の使い道を「投資」「消費」「浪費」に分けることも大事です。
これをしっかりと身に付けていないと、お金の使い方が自分軸ではなく他人軸になってしまい、さらに主体的な投資技術が養われていないため、怪しい投資詐欺などに騙されてしまいます。
お金のリテラシーが低い人は人の噂話に惑わされ、リスクを考えずに儲け話に飛び付いてしまいます。
「美味しい話」というのは、「あなたにとって美味しい話」ではなく、「その話を持ってきた人にとって美味しい話」であることを忘れないでください。
- 資産形成・資産防衛の両方ができる人になろう。
- お金の使い方は「投資」「消費」「浪費」に分けて考える。
日本人の「お金の意識」が低いのは英語力のせい?
今、多くの日本人は「生活が苦しい」と感じています。
「国民生活基礎調査(厚生労働省、2022年)」によれば、「生活が苦しい」と答えた人の割合は51.3%と、半数を超えています。
この原因は、おそらく急速な物価上昇のためでしょう。
身近な商品で言えば、国内有名メーカーのマヨネーズ(450g)は2020年7月に232円だったものが、2023年7月には359円に、小麦粉(1kg)は2020年7月に256円だったものが、2023年7月には323円と、それぞれ3割から5割も値上がりしています(いずれも全国平均小売価格)。
多くの日本人は、「これだけ商品の値上がりが続けば、生活が苦しくなるのも無理はない……」と思うかもしれません。
しかし、日本の外の世界を知っていると、まったくそうは思えません。
「物価が上昇した分、収入や資産も増えるから問題ない」と考えるからです。
欧米などの先進国では、それが普通の考え方です。
しかし、現実には多くの日本人の収入や資産は物価高に合わせて増えず、そのために生活がどんどん苦しくなっています。
私は、今の日本人の生活が苦しいのは、「ファイナンス・リテラシー」(資産管理・資産運用能力)が低すぎるのが原因だと考えています。
ファイナンス・リテラシーが低い理由は2つあります。
1.お金に関する教育が学校でも家庭でも行われていない
前にも述べたように、日本の学校教育では、お金に関する知識や経済について教わる機会がありません。そもそも、先生自身が投資をしたことがないので、お金についてまったく語れないのが現状です。
2.お金についてオープンに話すことを悪とする文化
日本の日常生活では、お金についてオープンに話すことが敬遠されています。
「お金の話をしてはいけない」「お金は汚いもの」「お金持ちは悪いことをして稼いでいる」という間違った先入観が蔓延しています。
一方で、その裏側にある根本的な問題には誰1人言及していません。
それは、多くの日本人は「英語」を話せないということです。
もし、日本人に十分な英語力があれば、物価高に合わせて収入が増える外資系企業に転職したり、海外で働いたりすることが可能でしょう。
また、十分なファイナンス・リテラシーがあれば、物価高に連動して増える資産に投資し、物価高を乗り切ることもできるはずです。
ではなぜ、日本人の英語力は低いのでしょうか? それには理由があります。
1.文法に偏りすぎの教育制度
日本の教育制度では、文法中心の英語教育が主流であり、実際のコミュニケーション能力があまり重視されていない。
2.英語を実際に話す機会が少ない
日本では母国語である日本語でほとんどのことを済ませられるため、日常生活で英語を使う機会が少ない。
3.完璧な英語でなければ恥ずかしいという羞恥心
英語を話すことに対する恐怖心や、完璧主義からくる英語力のコンプレックスが、英語力向上に対する意欲を下げている。
あなたが次の「国民生活基礎調査」で「生活が苦しい」と答えたくないならば、今すぐ英語力を身に付けるよう努力しましょう。
英語力はあなたの財産を増やしたり守ったりする武器となります。
- ファイナンス・リテラシーが低い人ほど生活が苦しい。
- 英語力は資産形成のチャンスを増やしてくれる。
1982年、兵庫県芦屋市生まれ。
2022年3月に設立した公益財団法人KAWAJIRI FOUNDATIONでは、学業優秀でありながら経済的な理由により学費の支弁が困難な大学生に川尻育英奨学金を給付し、支援している。
また、世界をつなぐアートプロジェクト「DANDELION PROJECT」のサポートや「tHE GALLERY HARAJUKU」の設立など、アート&カルチャーの新潮流を作るアーティストの支援を行う新世代ギャラリストとしても活動している。
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