本記事は、上野 泰也氏の著書『本当の自由を手に入れるお金の減らし方』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。
信用― お金は「信用」の表れにすぎない
【娘】「お金の本質は4つある」って言ってたよね。その最初が「信用」ってこと?
【父】そう。お金っていうのは、モノそのものに価値があるわけじゃない。紙や金属の塊じゃなく、みんなが「これがお金だ」と信じているからこそ使えるんだ。スマホの残高表示も同じ。あれを本当にお金だと思うのは、社会全体が信用しているからだ。
【娘】じゃあ、その信用がなくなったらどうなるの?
【父】お金はただの紙切れや数字に戻る。だからこそ「信用」が崩れると経済は一気に不安定になる。歴史を見ても、通貨の信用が失われて混乱が広がった例はたくさんあるんだ。
【娘】信用ってどうやって生まれるの?
【父】国家の制度や担保の提供、それから人と人との約束からだね。君が友達にお金を借りて「返すよ」と信じてもらうのも信用。銀行が企業に融資するのも同じ。つまり、日常の小さな約束から社会全体まで、信用が糸のように張り巡らされて経済が動いているんだ。
【娘】へえ。見えないけどすごく大きな力だね。
【父】そうだ。そして銀行はその信用を基に「信用創造」を行う。貸出、預金、また貸出…… その繰り返しで世の中に出回るお金が増えていく。これも「信用」がなければ成り立たない仕組みなんだ。
【娘】じゃあ金利とかも関係あるの?
【父】その通り。金利は信用の値札のようなものだ。信用が厚ければ低い金利でお金を借りられるし、信用が低ければ高い金利を払わないといけない。つまり「信用= コスト」として数字に表れているんだ。
【娘】なるほど。信用って、お金の最初のスタート地点みたいなものなんだね。
【父】その通り。信用があるからこそ、お金は経済に勢いを与え、次の役割、「血液」「ものさし」「貯蔵庫」へとつながっていく。これが「信用」のダイジェストだよ。
血液― お金は必要なものを流す「血液」にすぎない
【娘】お金の本質の2つ目は「血液」って言ってたよね。どうして血液なの?
【父】それはね、お金はぐるぐると流れていくものだからだ。金融がきちんと機能していれば、家計、企業、政府という三者の間でお金が回っていく。たとえば、ある家庭が洗濯機を買えば、その代金は家電販売店に入り、従業員の給料になり、そこから税金が納められ、公共サービスに使われる。さらに販売店は仕入れ先のメーカーにお金を払い、メーカーの従業員の給料や部品の購入費になる。こうしてお金が巡っていく。これを経済循環というんだ。
【娘】なるほど。体の中で血が回っているみたい。
【父】その通りだ。だから「お金は経済の血液」とよく言われる。血液が酸素や栄養を体の隅々まで運ぶように、お金も余っているところから足りないところへ流れていく。そうすることで経済全体に活力を与えるんだ。
【娘】もし血液が止まったら人は生きていけないよね。じゃあお金の流れが止まったら? どうなっちゃうの?
【父】経済も同じで、すぐに不調になる。もし金融システムが機能しなければ、世の中のお金の流れは滞り、経済活動は瞬く間に停滞してしまう。家庭は手元の現金だけでやりくりするしかなくなり、住宅や車のローンは組めない。企業は新しい投資や雇用を控え、政府は国債を発行して資金を集めることができなくなる。結果として、社会全体が血流を失った体のように動けなくなるんだ。
【娘】そんなに大きな影響があるんだ。普段は意識してないけど、私たちの生活全部がつながってるんだね。
【父】そう。たとえば、家計は資金の余剰を持っていることが多い。つまり貯金をする立場だ。一方で、企業や政府は資金不足に陥ることが多く、資金を調達する立場になる。だから家計で余った資金が企業の設備投資や政府の公共事業に回る。この流れがスムーズだと経済は元気になる。逆に滞れば、必要なところに血液が届かなくなる。
【娘】お金の流れ方にもバランスがあるんだね。
【父】うん。資金がどこで余り、どこで不足しているか、そのバランスをつかむことが金融の役割なんだ。そしてその流れを「マネーフロー」、あるいは「資金循環」と呼ぶ。この循環が活発になれば経済全体が元気になり、滞れば社会は弱ってしまう。
【娘】つまり、お金は使ってこそ意味があるんだね。止まったらダメなんだ。
【父】その通り。血液が全身に行き渡ってこそ体が生きるように、お金も社会全体を巡って初めて意味を持つ。だから「血液」という比喩は、とてもわかりやすくて本質的なんだよ。
1963年青森県八戸市生まれ、育ちは東京都国立市。85年上智大学文学部史学科卒業。法学部法律学科に学士入学後、国家公務員I種試験に行政職トップで合格し、86年会計検査院入庁。
88年富士銀行(現みずほ銀行)入行。為替ディーラーを経て為替、資金、債券の各セクションでマーケットエコノミストを歴任。2000年みずほ証券設立後、25年6月までチーフマーケットエコノミスト。
質・量・スピードを兼ね備えた機関投資家向けのレポート配信、的確な経済・市場予測で高い評価を得て、「日経公社債情報」エコノミストランキングで2002年から6年連続で第1位、その後身の「日経ヴェリタス」エコノミストランキングで2011年、16~21年に第1位(トップは通算13回)。2025年7月にマーケットコンシェルジュを設立、代表に就任。
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