本記事は、上野 泰也氏の著書『本当の自由を手に入れるお金の減らし方』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。
お金の「目的」を考える
【父】いろんな方法を紹介したけど、お金を貯めること自体に意味はない。方法を知ることは大事だが、目的を見失ってはいけないし、自分で目的をつくる必要がある。
【娘】結局、お金って何のために使うのがいいの? お父さん自身ならどう?
【父】いい質問だ。お金を使って得られる幸せには、大きく二つの側面があるんだ。一つは自分の内に感じる幸せ、もう一つは人との関わりから生まれる幸せだ。
【娘】内と外、ってこと?
【父】そう。内的な幸せとは、自分の満足や成長に結びつくことだ。たとえば本を買って知識を得る、習い事をして技術を磨く、旅行に行って新しい経験を積む。健康のために運動にお金を使うのもそうだ。お金を自分に投資することで「成長した」「できるようになった」という喜びが心の中に残る。
【娘】わかる。私もお小遣いで本を買ったとき、少し大人になったみたいでワクワクしたな。
【父】それだな。そういう心の充実感が内的な幸せだ。一方で外的な幸せは、人との関わりの中で得られるものだ。友達にプレゼントを贈って喜んでもらう、家族と外食をして「おいしいね」と言い合う、寄付をして社会の役に立ったと感じる。自分の外側から返ってくる感謝や笑顔が、また幸せを生み出すんだ。
【娘】確かに、友達にお菓子をあげて「ありがとう」って言われたときはすごく嬉しかった。あれも外的な幸せなんだね。
【父】その通り。お金はどう使うかで意味が決まる。この季節の父さんにとっては、クリスマスのケーキを買うことがそうだ。自分が甘いものを食べて満足する内的な幸せと、家族みんなで分け合って笑い合う外的な幸せ。その両方を同時に味わえる。だからこそ「何のために使うか」が大切なんだ。
【娘】なるほど。お金をただ貯めるより、使って人と時間を共有したほうが幸せってことだね。
【父】そうなんだ。数字が増えるだけでは心は満たされない。けれど、自分の中と外、両方の幸せにつながる使い方をすれば、お金は本当の力を発揮する。バランスの問題だよ。
「自分への投資」も目的になる
【娘】さっきは「お金をどう使うか」で内と外の幸せがあるって聞いたけど、じゃあ長い目で見たら、どんな使い方がいいの?
【父】それはね、やっぱり自分に投資することだ。
【娘】自分に投資? 株とか国債に投資するんじゃなくて?
【父】そう、株や社債に投資する前に、自分に投資するんだ。父さんは公務員から銀行・証券の世界に移ったときに痛感したよ。金融市場は英語が共通語でね、資料も英語だったりする。だから会社に頼らず、自分のお金で英会話学校に通い、参考書を買って、毎日必死で勉強したんだ。英検1級や国連英検A級、ケンブリッジ英検、通訳ガイド資格まで、さまざまな資格を取ったんだ。TOEICやTOEFLでも高得点を取れるようになった。
【娘】ええ! そんなにたくさん? でも働きながらの勉強は大変だったでしょ?
【父】もちろん時間もお金もかかったよ。でも、それは「将来の自分」を高める投資だった。後から大きなリターンになって返ってくる。企業が設備投資をして新しい機械を導入するのと同じだよ。人間も自分のスペックを上げれば、自信につながるし、将来の収入や転職の武器にもなる。今の時代、副業も転職も当たり前になってきた。だからこそ、多様な働き方に対応できるように、自分への投資は時代の要請でもあるんだ。
【娘】なるほど。将来のために自分を強くするんだね。
【父】若い頃は旅行にも投資した。アルバイトを掛け持ちして資金を貯めて、ヨーロッパを1か月とか2か月といった長期間、フリーで旅したんだ。バックパック一つで、いろんな街を歩いて、自由に経験を積んだ。あれも立派な自分への投資だったと思う。
【娘】うわあ楽しそう。経験も力になってくれるんだね。
【父】その通り。だから「長期的な視点で自分に投資する」ことを勧めたいんだ。自分の健康に投資するのもいい。勉強にせよ、仕事にせよ、子育てにせよ、体が資本だからね。父さんは今でも健康管理のためにプールで泳いでいる。体脂肪率はこの歳でも常に10%ちょっとを保っていて、ベストで8.3%を叩き出したこともあるよ。
【娘】ええっ、8.3%!? 信じられない!
【父】ははは。もし「体脂肪率の低いエコノミストランキング」なんてものがあれば、ちょっと上位に入るかもしれないね。それは冗談だけど、そんな努力も自分への投資なんだ。病気を防ぎ、長く働ける体を保つことは、将来の大きな資産になる。
【娘】なるほど。健康に使うお金や時間も、ちゃんとリターンがあるんだね。
1963年青森県八戸市生まれ、育ちは東京都国立市。85年上智大学文学部史学科卒業。法学部法律学科に学士入学後、国家公務員I種試験に行政職トップで合格し、86年会計検査院入庁。
88年富士銀行(現みずほ銀行)入行。為替ディーラーを経て為替、資金、債券の各セクションでマーケットエコノミストを歴任。2000年みずほ証券設立後、25年6月までチーフマーケットエコノミスト。
質・量・スピードを兼ね備えた機関投資家向けのレポート配信、的確な経済・市場予測で高い評価を得て、「日経公社債情報」エコノミストランキングで2002年から6年連続で第1位、その後身の「日経ヴェリタス」エコノミストランキングで2011年、16~21年に第1位(トップは通算13回)。2025年7月にマーケットコンシェルジュを設立、代表に就任。
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