本記事は、ひきた よしあき氏の著書『「何を話していいかわからない」がなくなる 雑談のコツ』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

「何を話していいかわからない」がなくなる 雑談のコツ
(画像=shironagasukujira/stock.adobe.com)

雑談の準備は旅支度。「みやげ話」を持っていこう

おすすめは、今の自分を形づくったエピソードのメモをあらかじめ作っておくこと。日常の中にある出来事を、少し立ち止まって自分の感情つきで記録しておくのです。そうすることで、「あのときの気づき」や「小さな発見」が、あとで話せる素材としてよみがえります。

私が博報堂に入社したばかりのころ、研修で「みやげ話を持ってこい」という課題が出されました。

当時、大阪制作局に配属されていた私は、

「甲子園球場に行ってこい。どんなヤジが飛んでいたか、みんなが何に笑っていたのかを教えて」
「朝から吉本のうめだ花月に行って、最後まで漫才を見てこい。そして、何がどう面白かったかを報告して」
といった指令を受けて、毎日「取材」のように外へ出かけていました。

当初の私は、「なんてラクな研修なんだ!」と思っていました。
ところが、会社に戻って報告すると、先輩たちは誰ひとり笑わない。むしろつまらなそうな顔をして、こう言うのです。
「それが、お前の今日一日の中で一番面白かったこと?」
次の日も、その次の日も、同じことの繰り返し。何を話してもウケず、次第に自信をなくしていきました。漫才を見ても、面白いどころか腹が立ってくる始末。

そんなとき、ふと目に留まったのが、椅子の上に正座して阪神百貨店で買ったおこわを食べながら漫才を見ているおばあちゃんでした。そのおばあちゃんは、小声でぶつぶつとこうつぶやいていました。
「ボケがあかんな」「これで終わりかいな」「このコンビ、東京行ってからあかんようになったな」
しかも次の日も、同じ席で同じようにおこわを食べながら、また悪態をついている。

その姿を見たとき、私の中で「このおばあちゃんの生態を、みんなに伝えたい!」という気持ちがむくむくと湧き上がってきました。売れている芸人に対しての鋭いツッコミや悪態が面白くてたまらなかった。それを先輩たちに報告したところ、はじめて反応が返ってきたのです。

「それや。それだけはどうしても伝えたい! と思ったやろ。それが『みやげ話』っていうもんや」
その言葉を聞いたとき、私ははじめて気づきました。
ただ漫才の内容といった出来事だけを説明するのではなく、「自分が感じたこと」「どうしてそれを話したいと思ったのか」を伝えることこそが、本当の話す力なんだと。

それ以来、私は毎日の中に「みやげ話の種」を探すようになりました
なんとなく過ごしている日常にも、よく見れば面白いこと、人に伝えたくなることがたくさんあります。つまり、センサーを張っておくこと。そうすることで、感度がどんどん高まっていきます

実際に、私が教壇に立っている大阪芸術大学でも、学生たちに「毎週みやげ話を持ってくること」を課題にしています。
最初は上手く話せなかった学生も、3〜4カ月経つころには驚くほど話が上達しています。雑談にぴったりな、自分らしいエピソードがどんどん増えていくのです。

雑談は、突然話すネタが降ってくるものではありません。日々の中で、感じたこと・笑ったこと・驚いたことを少しずつためておく。それが、いざというときに話を続ける「燃料」になります。みやげ話を持っていくつもりで、日常を少し丁寧に見つめてみてください。
あなたの中に、きっと話したくなる出来事が増えていくはずです。

「何を話していいかわからない」がなくなる 雑談のコツ
ひきた よしあき
コミュニケーションコンサルタント。
スピーチライター。
1984年生まれ。早稲田大学法学部卒業。
博報堂クリエイティブディレクター/スピーチライターとして活躍。その後、独立し、「言葉のプロ」として教育・講義・オンライン講座で幅広く活躍。
大阪芸術大学客員教授、早稲田大学招聘講師として教壇に立ち、「はじめて『わかった!』と心の底から思えた講義」「一生ものの考える力が身につく」と学生から支持を集める。さらに、社会人向けオンライン学習コミュニティ「Schoo」では毎回約2万人が事前予約するほどの人気を誇る。
著書に『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)、『大勢の中のあなたへ』(朝日学生新聞社)、『トイレでハッピーになる366の言葉』(主婦の友社)など、累計28万部を突破している。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
「何を話していいかわからない」がなくなる 雑談のコツ
  1. 何を話すかじゃない、どう反応するかで雑談は続く
  2. ネタがない人へ、日常をみやげ話に変えるメモ習慣
  3. コンビニで変わる、知らない人にあいさつするだけで自信がつく
  4. 雑談が苦手なら笑顔から、相手の警戒心がほどける
  5. 話題ゼロでも大丈夫、観察+感情で雑談が回り出す
  6. 雑談は質問で回る、会話のトスを上げ続ける6つの切り口
  7. 雑談を切り上げたいのに切れない! 相手の機嫌を損ねない終わらせ方
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)