本記事は、大野 萌子氏の著書『いつも感じがいい人はこんなふうに話している』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

いつも感じがいい人はこんなふうに話している
(画像=Best_Wishes_Art/stock.adobe.com)

「NO」を言う場合に一番大事な主語の選び方

相手に「NO」を伝える際に大事な、本質的な話をしたいと思います。それは「主語」を誰にするのか、ということでメッセージ内容がガラリと変わるということです。

過去にこんな相談者がいました。
30代前半の男性で、会社でもプライベートでも揉めごとや口論が苦手な方です。
彼は、仕事を進めるなかで意見がぶつかった場合は自分が折れ、誰とも揉めないようにみんなにいい顔をしていたら、色々な方面から頼みごとをされて毎日残業になってしまったり、面倒な相談をされるようになり、「疲弊してしまった」と悩んでいらっしゃいました。
「このままでは自分がキャパオーバーになってしまいそうでつらい」、ともおっしゃっていました。

お話を伺っていると、彼は「NO」と言うことにとても抵抗があり、それを言ったら相手との関係が悪くなってしまうのではないか、と思ってしまうとのこと。
その不安から、すべてを「YES」と受け入れている、ということがわかりました。

NOを言えないことが癖になっている場合、その癖を直すのはなかなか難しいものです。NOを言わなければ、少なくともその場は角が立たないからです。
しかし、長い目で見るとマイナスのほうが目立ちます。

例えば、次のようなことは、よく見られるシチュエーションです。

A 「Bさん、次の子ども会の会計の担当をやってほしいんだけど」
B 「え、AさんとCさんが担当でしたよね?」
A 「そうなんだけど、私、実家でトラブルがあって、しばらく頻繁に行かなきゃいけなくなったから、代わってほしいのよ」
B(私も毎日、パートで忙しいんだけど……)わかりました。やります」
A 「助かるわ。そうしたらついでに、必要な物の買い出しもお願いしたいんだけど。そのほうが便利で速いでしょ」
B 「え、それは……」

Aさんの強引なお願いを、Bさんがしぶしぶ「YES」と答えたら、さらに追加のお願いをされてしまっています。
Bさんが「NO」と言わない人だとわかり、Aさんは強く押せば頼めると付け込んでいるのですね。

これはママ友同士の例ですが、似たようなことは仕事の場でも、友人同士やご近所程度のつきあいの中でも起こると思います。
いつもいつも「NO」を言わず、何でも引き受けていたら、「この人は何を頼んでも言ってもイヤだと言わない人だ」と、なめてかかってくる人もいるのです。

繰り返しになりますが、「NO」を言うことは、相手を拒否したり、拒絶することとは違います。あくまで、相手の発言に対して同意しない、と言っただけで、相手の人格を否定したわけではないのです。

本当は違う意見や思いを持っているのに「NO」を言わずに我慢し続けた結果、相手のことを嫌いになってしまったり、自分が鬱々としてしまったりしたら、意味がありませんよね。
「NO」を伝えて大丈夫。言ってよいのです。

ただし否定とNOの本質的な違いを理解していないと、言葉の選び方によっては感じが悪い人になってしまう可能性があります。
次の問題で、その違いを考えてみてください。

問題
次のうちどちらが否定で、どちらがNOだと思いますか?

A 「この味は私の好みじゃないかな」
B 「これって塩気が薄いよね。え、これが美味しいの?」

すぐにおわかりかもしれませんが、Aが「NO」で、Bが「否定」です。
ふたつの違いは何でしょう?

Aさんは「私は」と言っています。Bさんの言っているのは、「あなたはこんな味が好きなの?」という内容ですね。実際に「あなたが」と口にしていなくても、誰が主語になるかを考えてみるとわかります。
「I」メッセージか「YOU」メッセージか、が重要なのです。

「私はこれが苦手」と言っているのは自分の意見を伝えているだけなので、「NO」を伝えているということです。
「あなたはこれが、美味しいと思うの?」という言い方は、「あなた」の好みにダメ出しをしているのですから、「否定」になります。
「あなた(の意見)はダメ」ではなく、「私はこう思う」と伝えるのが「NO」を伝えることです。

特に、「え、(あなたは)そんなのが好きなの?」というような否定の仕方は、わざわざ言わなくてもいい余計なひと言ですね。
このひと言を言わないことができるかどうか、が、“感じがいい人”と思われるか、“感じが悪い人”認定されるかの差なのです。

前述の男性にもこのようなことをお伝えしました。

そして彼はIメッセージとYOUメッセージの違いを理解したうえで、少しずつではありますが、本当に無理なことやイヤなことには「NO」と言うことを実践していったのです。やがて無理な頼まれごとや相談ごとが徐々に減っていき、必要以上に抱え込むことがなくなっていきました。

また、ご自分の現状や苦手なことを相手に伝えることによって、自分自身の気持ちがラクになったそうです。
3カ月くらい経つ頃には、「NO」と言うことで、かえって相手と率直にやり取りができるということにも気づき、人づきあいがスムーズになったのです。

いつも感じがいい人はこんなふうに話している
大野 萌子(おおの・もえこ)
公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士、一般社団法人「日本メンタルアップ支援機構」代表理事。カウンセラーとしての長年の経験を活かし、人間関係をよくするコミュニケーション、ストレスマネージメント、ハラスメント対策を専門とする。カウンセリングは2万人超、講演・研修は内閣官房人事局をはじめ、大手企業、大学などで6万人を対象に行ってきた実績を元に、テレビ、ラジオ、新聞などのメディアでも活躍。『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)は51万部のベストセラーとなった。他に『できる上司のZ世代をモンスターにしない言葉』(ビジネス社)、『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。メディア出演は『世界一受けたい授業』(日本テレビ)、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)など多数。

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