銅価格大幅下落 米経済政策の転換でコモディティ市場に大きな影響 

昨年来の原油価格の暴落の影に隠れていたものの、大きく値をさげ市場で注目されつつあるのが銅価格だ。1月14日にはLME(ロンドン金属取引所)で1トンあたり5400ドルという2009年10月以来の大幅下落となった。これを受け、世界景気が変調をきたしているのではないかとの危惧の念が広まりつつある。

実はこの銅の価格は昨年4月に、1ポンド3ドルを下回ったときにも一度大幅下落となり業界関係者に大きな衝撃を与え、2011年にS&Pが米国債を格下げしたときや2008年のリーマンショックの衝撃の再来とさえ言われた。今回はそれをさらに下回る1ポンド=2.4765ドルという先物価格がニューヨーク市場で既に示現している。この銅は近年の先進国社会で生産されるあらゆる主要製品に多用されている。今回の下落レベルはそれをさらに下回る、約6年ぶりの低水準で推移していることから市場異変を指摘するエコノミストも増えつつある。


銅の価格は経済市況の鏡

発電から建築、配線、配管、空調、電子機器の基盤全般、ベアリングなど実にさまざまな機器が銅を利用して生産されている。したがって、銅の需要推移はグローバル経済を示す重要な指標となっている。こうしたことから中国経済の減速や世界経済の成長見通しが引き下げられたりするたびにその価格にマイナスの影響を与えるようになっている。


実需ベースというよりは投機的に価格を形成してきた銅

ただ、長年銅は需給をベースにして価格が形成されてきたわけではなく、かなりの投機的商品として利用されてきた側面があることもわかってきている。たとえば中国では一部の投資家が米ドルなど低金利通貨で借り入れて銅を輸入しては中国内で売却し、それを人民元による高金利運用に当て、金利差を利益として得て、金を返済するといったかなりリスキーな連金術的取引を繰り返してきたこともわかっている。こうした実需に基づかない取引が長年の銅価格の高騰につながってきたと見る向きも多い。

したがって実態としての銅は市場では供給過剰を起こし、今後それを解消するほどの需要が見込めないことが価格下落につながっているともいえる。特に中国国内は景気減速もあるものの、既に投機により中国国内にもたらされた在庫過剰の状態が価格を引き下げるドライバーとなってしまっているのだ。