ブラジルは2016年にはオリンピックの開催も予定されており、巷では依然として成長著しい国であるイメージが強い。

しかし、このブラジルが含まれるBRICsという名称を命名した世界的に有名な投資銀行であるゴールドマンサックスの元エコノミスト、ジム・オニール氏は、「ブラジルとロシアは低迷する経済を再生できなければ、2010年代の終わりまでにBRICs諸国から脱落する可能性がある。今後3年も同じ状況ならブラジルとロシアをそのグループに分類するのは2019年で最後になる可能性もある」とブルームバーグのインタビューに答えており、どうもブラジルがこれまでの成長軌道にないことを強く示唆している状況にある。


そもそもの成長エンジンは2つ

ブラジルは約850万平方キロの国土に2億人を超える人口でそれぞれ世界第5位の南米の大国である。GDPは2013年で2兆3000億USドル弱でありイギリスにつぐ世界第7位となっている。

その成長エンジンは資源輸出と自国の国内消費の2つが存在する。農業国に見えるブラジルは天然資源にも恵まれており、鉄鉱石、アルミ、銅、石油をはじめとして70種類以上の鉱物資源が産出する有数の資源国でもあるのだ。

またブラジルは南米で一番の工業国であり、自動車と航空機が輸出品目の4割以上を占める規模となっている。国内メーカーはトヨタ、日産、ホンダなどが生産拠点を構えており、欧米自動車メーカーも挙ってこの地に出資を進め生産拠点を設けている。

資源・工業品輸出の輸出と共に大きな成長のファクターとなっているのが自国の2億人を超える国民の消費だ。21世紀は人口の大きな国によりGDPの拡大が加速する時代となっているが、まさにブラジルは中国、インドとともにその一翼を担う存在なのだ。

2003年までには最低賃金も継続的に引き上げられ所得の再分配など、所得格差の解消がみられ、中間層が増加することとなり、消費はこれまで活発に拡大し、自動車販売では既に2010年にドイツを抜いて世界第4位に浮上し2014年までこの位置をキープする消費国へと成長を果たしている。


問題も山積するブラジル経済

一見バラ色の成長をはかろうとしているかに見えるブラジル経済だが、一方でいくつもの経済的な問題を抱えている。

まずインフレが高進し海外からの投資が伸び悩んでいることがあげられる。2010年には実質GDP7.5%の成長を果した同国だが2013年は2.5%台に落込み、既に勢いにかげりが出始めている。

また、中国など他の新興国経済の減速から資源需要が減少し、価格も下落しており、コモディティ市場の不振が一気に貿易収支の悪化を来たす結果となっている。


投資意欲を大きく削ぐブラジルコストの存在

ブラジルはとにかく複雑な税制や書類提出の極めて多い官僚制度など外資の投資意欲を著しく下げる制度が多数残存しており、こうした構造改革は急務となっている。こうしたことも手伝って雇用の創出や教育への投資も進んでおらず、結果として所得格差を是正するための抜本的対策もまったく進行していない状況にある。物流基盤の整備も全く進んでおらず、陸上の輸送網の整備や港湾施設の改善などが大きな問題となっている。