予想を超えるスイスフランの急騰で
2015年、米国の景気回復を追い風に成長を目指す世界経済に、スイス国立銀行が自国通貨スイスフラン高を阻止するために設定していた1ユーロ=1.20スイスフランの上限を撤廃すると発表し、衝撃が走った。外国為替市場ではスイスフランが暴騰し、外国為替証拠金(FX)取引で投資家に巨額の損失が発生。
全米先物協会(NFA)は、投資家が少ない元手にレバレッジを効かせて損失が増幅したことを受け、レバレッジを見直す姿勢を示している。
予想を超えるスイスフランの急騰、レバレッジで損失拡大
NFAと米商品先物取引委員会(CFTC)は、FX投資家に対し、業者に預け入れた証拠金の50倍までのレバレッジを認めている。日々の外国為替相場で、てこの原理で幅を効かせ利益を最大限追求するのにレバレッジは欠かせないテクニックの1つである。
しかし、「スイスフランショック」の際は、スイス中央銀行の政策転換が完全に意表を突いた形で、スイスフランは対ユーロで一時41%も上昇するなど外国為替市場が大混乱に陥った。
仮に50倍のレバレッジをかけていた場合、相場が2%変動すれば証拠金はなくなってしまう。スイスフランは過去最大の値上がりを記録し、投資家たちの予想をはるかに超えた変動に、なす術もなく損失が膨らんだ。
米国の大手FXCMのケースでは、顧客が約2億2,500万ドル(約263億円)の損失を抱え、それをFXCMが肩代わりしている状況だ。また、英国のFX業者アルパリなどスイスフランショックを受け破綻する会社も現れている。
スイスショックは対岸の火事で済むか?
FX投資は日本でも人気が高く、「ミセス・ワタナベ」として日本の投資家が海外でも注目を集めている。今回のスイスフランの急騰により、国内のFX業者にも影響は及び、マネックスグループ <8698> は、顧客の損失に対して1億6,000万円が未回収金となったことを明らかにした。しかし、欧米のFX業者と比べて損失額は膨らまず、ひとまずは対岸の火事で済みそうだ。
日本国内でもかつては、400倍など超高レバレッジで取引をし、巨額の利益を上げる投資家もいた。一方で、損失が負担できないほど膨らむケースもあったことからレバレッジに規制が設けられた。2010年8月から50倍、2011年8月からは25倍がレバレッジの上限となり、すでにレバレッジは欧米と比較すると低く制限されている。
麻生太郎財務・金融担当相は今回のスイスフラン高騰による一連の動きについて、「日本国内での影響はきわめて限定的」と述べた。米国でレバレッジ規制の動きがこれから本格化する中、日本の金融当局は当面、事態の推移を静観するようだ。
(ZUU online)
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