「今という時は、長期的に利益を生み出す性質の債券資産に投資するには、リスクが大き過ぎる」。2013年のノーベル経済学賞の受賞者、エール大学のロバート・シラー教授が2月12日に、経済専門局CNBCに出演して語った言葉である。
英語初版の日本語訳も出版されているベストセラーの著書『根拠なき熱狂』の英語改訂第3版を2月に上梓したばかりのシラー教授は、「歴史的に見た債券市場」と題した新しい章を追加。その中で同教授は、「債券価格が、非合理的なレベルまで高くなりすぎた可能性がある」と警鐘を鳴らしている。
近年の債券利回りが歴史的に驚異的な低レベルにあることを解説したシラー教授は、同章の中で、「非常に低い利回りの米債券市場は、バブルのようなものに突入したように見える。いずれ、そのような相場は崩壊する」と指摘した。
その上で同教授は、「今回の局面は、多くの人が抱くバブルのイメージとは違い、熱狂を欠いている。なぜなら投資家に、『なぜこんなに利回りが低いのだ』という思いがあるからだ」との見解を表明した。
その理由としてシラー教授は、「世界中の中央銀行が債券を買い上げる量的緩和を行っていることが大きい」としながらも、「それだけではない」と言う。「投資のリターンが悪いのは、アニマル・スピリットが失われつつある証拠だ」と同教授は分析する。
そして、債券バブルの原因は、投資家の怖れの心理が深く影響しているというのだ。「それは投資機会(の変化)であり、我々の抱く怖れであり、我々の(「低金利ニューノーマル」)文化であり、その根が深い現象だ。問題は、このような状態が続くかだが、世界中で利回りがゼロに近づく環境の中、続くわけがない。ゼロ以下には行きようがないからだ」とシラー教授は述べる。そして、「ニューノーマル文化は持続するのかも知れないが、崩壊する可能性もある」と警告。「重大な転換点が訪れるかも知れない。だが、今すぐではないだろう」とも付け加えた。