住宅で見られる大口の法人契約
2~3月は、引越しシーズン。賃貸住宅はもっとも入居者が決まりやすい時期である。賃貸住宅のリーシングに最適な時期は、2~3月と9月。理由は、春の新入社員の受け入れや秋の異動により、大口の法人契約が発生するからだ。
しかしネットの発達により、個人が賃貸住宅を探すのは一昔前に比べてはるかに容易になっている。そうした状況の中で、わざわざ会社側が手間をかけて社員のために借上社宅を用意するのは不思議な気もする。そこで、今回は借上住宅の法人契約について、会社側のメリットを探ってみることにしよう。
住宅手当と借上社宅
会社側が働く社員の満足度向上を上げる人事施策のひとつとして、住宅費用の補助がある。住宅補助の種類は、大きく分けて住宅手当と社宅の2つ。さらに社宅には社有社宅と借上社宅があるが、借上社宅を前提に説明する。
住宅手当と借上社宅には、どのような違いがあるのだろうか。たとえばここに家賃10万円の住宅があるとする。住宅手当が5万円だと、社員の負担は5万円で済む。一方、この住宅を借上社宅として会社が5万円を負担した場合、社員の負担は同じく5万円。一見同じ負担に思えるが、実は借上社宅の方が企業にとっての負担は軽いのだ。
住宅手当は会計上、給与として処理される。一方、借上社宅の会社負担額は福利厚生費である。給与であれば、その分社会保険料の負担も大きくなる。そのため住宅手当の場合、会社の実質的な負担は5万円+α(会社負担分の社会保険料)となる。これに対し、借上社宅の場合は5万円のみで済む。
また社員にとっても、住宅手当は給与と見なされてしまうため、所得税と社会保険料の負担がその分大きくなる。つまり住宅手当の5万円をもらっても、実際にはその中から所得税と本人負担分保険料が差し引かれてしまう。
このように企業の借上社宅は会社側にも社員にもメリットがあるため、ニーズとして底堅い。採用時の企業イメージを良くするため、企業としては住宅補助の福利厚生が整っていることを謳いたい、それには借上社宅がもってこい、といったところだろう。