本当に金利は上昇しているのか
住宅ローン金利が上昇に転じたこのタイミングで、改めて長短金利の動向を確認しておく必要があるだろう。15年1月をボトムに長期金利は上昇しているものの、中長期的にトレンドが転換したとは判断しにくい。また、短期金利においても同様のことが言えるだろう。
過去のチャートを見て金利の底と天井を指摘することは容易だが、現在の水準が底なのか天井なのかを、判断することは困難だ。そして将来を予測することも同様だろう。しかし、米国の金融政策が利上げを視野に入れている以上、日本の長期金利もその影響を受けないとは言い切れない。
短期金利については、日銀の金融政策決定会合の内容や審議委員の発言から察することができる。最近では、木内登英審議委員が「量的・質的金融緩和」の拡大に反対した経緯について「効果がコストや副作用に見合わない」と、現在の金融政策に反対し続けていることもあり、注意が必要だ。
こうした事情を総合的に考慮すれば、短期金利は当面現行水準が継続するものの、長期金利については上昇を視野に入れる必要があると言える
金利上昇が景気と不動産に与える影響は?
では、長期金利が上昇することで、マーケットにどのようなことが起こるだろうか。株式市場はネガティブな反応を示すだろう。しかし、意外な時限爆弾はREITかもしれない。機関投資家はREITと長期金利のスプレッドを見ており、長期金利が上昇し両者のスプレッドが縮小すれば、REITが売却される可能性もあるだろう。
既に日銀、機関投資家が大量のREITを保有していることに加え、多くの個人投資家が投資信託を通じてREITを保有している。「毎月安定的に分配金が貰える」という理由で、REITを保有している個人投資家が大半だ。しかし、金利上昇のリスクが過小評価されてはいないだろうか。
バブル崩壊の引き金を弾いたのは、1990年に政府が行った不動産業への融資の総量規制だった。アベノミクス終焉の引き金を弾くのが、奇しくもREITという不動産への投資となる可能性もあるのかもしれない。(ZUU online 編集部)
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