これに対して、中国のGDP統計には「速報値」というものが存在しない。中国は期が終わって僅か2週間ほどで「確定値」を発表している。中国は日米欧のように国連で定めたSNA(United Nations System of National Accounts)という集計方法を採用せず、独自の集計方法を採用している。しかし、その集計方法はブラックボックスの中である。

日本のGDP統計に関しても、1次速報と2次速報以降の改定値の間に時として大きな乖離が生じることが批判されることもあるし、米国のGDPに関しても市場に最も影響を及ぼす速報値を高めに算出しているという批判が欧州の一部から出たりと、先進国の間でもGDP統計の正確性、信憑性には100%の信頼が寄せられているわけではない。

しかし、失業率ですら農村部の統計が含まれていないなど、統計の整備が進んでいない中国が、僅か2週間程度で先進国より早く「GDP確定値」を公表出来るということは、常識的には考えられないことである。中国の発表するGDPは、現実の経済状況を表した統計というよりも、政府の期待値を示したものだと理解した方が賢明である。今回「6年ぶりの低成長」という結果が示されたが、経済状況が実際にはもっと落ち込んでいることも否定できない。中国主導で進められているアジアインフラ投資銀行(AIIB)も、中国経済が厳しい状況に追い込まれて来ていることを表した動きだという見方もできる。

我々は、多くの人達が盲目的に信じて来た「中国経済が21世紀の世界経済を牽引する」というシナリオの終幕を、そう遠くないうちに目の当たりにするのかもしれない。

近藤駿介 (評論家、コラムニスト、アナザーステージ代表)
約20年以上に渡り、野村アセットを始め資産運用会社、銀行で株式、債券、デリバティブ、ベンチャー投資、不動産関連投資等様々な運用を経験。その他、日本初の上場投資信託(ETF)である「日経300上場投信」の設定・運用責任者を務めたほか、投資信託業界初のビジネスモデル特許出願を果たす。現在は、 「近藤駿介流 金融護身術、資産運用道場」 「近藤駿介 In My Opinion」 「元ファンドマネージャー近藤駿介の実践資産運用サロン」 などを通じて、読者へと金融リテラシーの向上のための情報発信をおこなう。

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