2014年2月28日にビットコイン交換所最大手であったマウントゴックス(Mt.Gox)が破綻してから1年以上が経過し、再びビットコインが注目を集め始めている。

米国のネット通販大手オーバーストック・ドットコム(Overstock.com)がビットコインの支払いの受け付けを開始し、楽天も米国の通販サイトでビットコインでの買い物を可能にするサービスを始めた。

このような動きを受けて、ビットコインがドルやユーロ、円と並ぶ通貨になるという期待論も復活してきている。

「金利」が存在しないことが最大の長所を失わせる

しかし、金融的観点からすると、ネット上でビットコインの決済システムがどんなに整備されても、ドルやユーロ、円といった基軸通貨に対する不安がどんなに高まっても、ビットコインが基軸通貨に、とって代わる可能性はほとんどないといえる。

それは、仮想通貨の強みが金融的限界を生む弱みでもあるからだ。ビットコインの強みは、リアル通貨のような中央銀行の関与がないことである。ドルやユーロ、円を始めとした各国の中央銀行が発行する通貨は、中央銀行の金融政策によってその価値が人為的に操作される。また、発行国の財政状況によっても通貨の価値は変動してしまう。

これに対して仮想通貨ビットコインは中央銀行も発行国も存在しないため、金融政策や発行国の財政状況などから直接的影響を受けることはない。さらに最大発行量(2,100万ビットコイン:1ビットコイン=220ドル、1ドル=120円換算で5,544億円相当)が事前に決められており、「量的金融緩和政策(QE・Quantitative easing)」や「異次元の金融緩和」といったいわゆる量的緩和政策によって通貨価値が人為的に引き下げられることもない。

このように中央銀行の影響が及ばないという仮想通貨ならではの強みを持つビットコインであるが、同時にここに金融的限界を生む原因もある。それは中央銀行が存在しないことで「金利」が存在しないことである。

中央銀行が存在せず「金利」が存在しないということは、その通貨を将来決められた価格で取引をすること、つまり通貨予約が難しいということである。

リアルの通貨であれば、それぞれの通貨には「金利」があり、各国の「金利差」に応じて将来の交換レートが決められる。しかし、この「金利」が存在しないビットコインの場合はドルや円といった交換対象通貨との「金利差」も存在しないことになる。

ビットコインの金利を0%で一定と見做して、交換対象通貨との「金利差」を計算することも可能だが、これは将来のビットコインの交換レートが他国の中央銀行の金融政策によって決められることを意味することになる。これは中央銀行の関与がないというビットコインの長所が失われることを意味するものでもある。