アベノミクスによる円安と株高のおかげで上場企業は比較的余剰資金が増えており、定期昇給を復活させた大手も多く、今年は一段と自社株買いも進む見込みで、長くデフレに苦しんできた国内経済にもようやく明るい兆しが散見されるようになってきている。しかし、サラリーマン、とりわけオフィスワーカーにとってはきわめて厳しい時代が密かに到来しようとしているのだ。それがコモディティ化の問題だ。


人材の労働力にも及ぶコモディティ化の流れ

コモディティとは英語で「日用品」のことを指すが、コモディティ化というと、市場に出回っている商品が互いに差別化されず、消費者にとってはどれもあまり変わらない状態となってしまうこと指す。こうした状況は白物家電などの商品で顕著に現れてきていたが、すでに人材の領域にもこうしたコモディティ化が及んでいるのである。

京都大学客員准教授でマッキンゼー出身の瀧本 哲史氏はその著書の中でも頻繁に人材のコモディティ化について警鐘を鳴らしている。


人材のコモディティ化はホワイトカラーにも及ぶ時代

滝本氏の指摘によれば、コモディティ化した人材や労働力は商品と同様、徹底的に安く買い叩かれることになり、誰がやっても同じような仕事をしている人や代わりがいくらでもいる人材の賃金はできる限り安く抑えられる時代が到来するとされている。こうしたコモディティ化は当然のことながらホワイトカラーに及んできていると同氏は訴えている。

滝本氏は、グローバル化した企業においてホワイトカラーの仕事の規格化が進んでいることも同時に指摘している。誰がやってもある程度同じ成果がでるようになっている仕事は事業を拡大しても、必要となるのは大量のコモディティ人材となり、これは暗に賃金の下落を示唆する動きとなるのだ。


英語公用語化は他国の人材に職を奪われるきっかけ?

楽天 <4755> などは既に社内公用語を英語にしているが、こと英語となると日本人よりもかなり安い賃金で雇用できる人材がアジア圏やインドなどに存在しており、国内でこうしたコモディティ化された職に就いている人材にとってはリプレイスメントの脅威を受け続ける時代が訪れそうだ。